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第359回 「アベノミクスを成功させる会」の提言 (1/3)

 本連載は、次回で最終回を迎える。
 17年4月の消費税増税に反対していたはずの「アベノミクスを成功させる会」が、いきなり増税容認に転換し、筆者は愕然とさせられた。

『2016年5月21日 テレビ朝日「アベノミクス成功させる会 消費増税容認に転換」
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000075284.html
自民党の「アベノミクスを成功させる会」が消費税の10%への増税を予定通り実行すべきだという提言をまとめました。
提言では、来年4月から消費税を10%に引き上げたうえで「当面、10%で打ち止め」と宣言するとともに、10兆円規模の補正予算で景気対策をするよう求めています。さらに、3年間で最大37兆円規模の財政出動をすることで増税の影響を緩和するとしています。この会は、2014年には消費税引き上げを延期するよう安倍総理大臣に提言していました。増税容認へ突然、方針転換したことで、総理官邸の意向が働いているのではないかと党内で臆測を呼んでいます。』

 「アベノミクスを成功させる会」の提言は以下の通りである。

①消費税率引上げ(8%→10%)は、予定通り2017年4月から実施し、当面10%で打ち止めと宣言。
②今年度(2016年度)の補正で、デフレギャップ解消を目指した10兆円の景気対策と5~10兆円(被害状況に応じ)の熊本地震対策基金の創設。
③2017年度には10兆円、2018年度は7兆円を通常予算に追加して計上。その内訳は、消費税率引上げ分は全て還元するという意味での給付金等約4兆円強、残りは日本経済の将来の持続的成長、体質改善につながるような公共投資等。
④給付金等の基本的考え方は、年金生活者・低所得者・子育て世帯を中心に所得再分配政策としての給付。住宅と自動車の購入者に対しては2%分の還付。
⑤財源は、マイナス金利を活用する意味で原則国債発行による。

 無論、「成功させる会」の提言に見るべきものがない、という話ではない。例えば、②③の通り、デフレギャップを埋めるための財政出動、しかも三年間の継続的な財政出動を提言した点は、評価に値する。
 あるいは、⑤において、財源を「国債発行」とした点も、賛成する。三年間の継続的な大規模財政出動を、「財源は国債」で実施するとなると、諸悪の根源であるプライマリーバランス黒字化目標は有名無実化できる。
 もちろん、本来であればプライマリーバランス目標について、
「破棄するべき」
 と、堂々と提言するべきだが、「政治」の世界において、正論はなかなか通りにくい。ならば、国債発行による財政出動で、なし崩し的にPB目標を亡き者にしてしまうという発想は分からないでもない。
 改めて振り返ると、かつての日本銀行は、
「長期国債の買い取り額が、日銀券(現金)発行額を超えてはならない」
 という、意味不明な「日銀券ルール」を標榜していた。結果的に、日本銀行の金融政策が制限されていたわけだが、黒田日銀発足後の量的緩和拡大で、いつの間にか消え失せてしまった。
 国債発行と財政出動の組み合わせを拡大すれば、PB目標は有名無実化される。日銀券ルール同様に、数年で「なかった」ごとき扱いになるだろう。

(2/3)へ続く

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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