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第357回 正しい話(1/3)

 さて、本連載は残り四回で最終回を迎える。最終回も近いということで、改めて日本経済の成長のボトルネック(制約条件)となっているデマゴギーと、それを否定する「正しい話」について書いておきたい。
 筆者は言論活動初期から「いわゆる国の借金問題のウソ」について、切り口を変えつつ、繰り返し「正しい話」を主張し、拡散に努めてきた。当時は、
「"国の借金"ではなく、Government Debt(政府の負債)という呼称が正しい(日銀は「政府の負債」としている)」
「日本政府の負債(主に国債)は100%日本円建て」
「日本国民は"政府の負債"の債務者ではなく、債権者」
「日本銀行が国債を買い取ると、政府の負債が実質的に消滅する」
 といった、財政に関連する「正しい話」について、誰一人語ろうとしなかった。いや、語ろうとした人はいたのかも知れないが、筆者は知らない。
 何しろ、当時はバランスシート(貸借対照表)の概念を、国民経済の説明の際に活用する人もほとんどいなかったのだ。国の借金ならぬ"政府の負債"という貸方の科目について語る以上、バランスシートの概念は必須だと思うのだが。
 というわけで、筆者は以下に代表される様々な図を活用しつつ、「正しい話」を根気よく、発信し続けてきたわけである。

【図1 日本国家のバランスシート(15年12月末速報値、単位:兆円)】
2016050901.png
出典:日本銀行「資金循環統計」

【図2 日本国債所有者別内訳(15年12月末速報値、単位:兆円)】
2016050902.png
出典:日本銀行「資金循環統計」

【図3 日銀保有国債等と日銀以外が保有する国債等(単位:億円)】
2016050903.png
出典:日本銀行「資金循環統計」

 すでに正しい話を理解している読者からすると、
「なぜ、あんなウソに騙されていのだろうか」
 と、考え込んでしまうかも知れないが、理由は日本人が「情報の読み方」の訓練を受けていないためだ。例えば、「言葉の定義」「相対化」「ブレイクダウン(細分化)」等、情報分析の基本すら知らないため、
「国の借金の定義は何なのだろうか?」
と、考えることすらないわけだ。完全に思考停止に陥り、「国の借金で破綻する」「国の借金で経済成長できない」などと、意味不明な煽りに影響され、間違った政策を支持し続けてきたのが、1995年以降の日本国民だ。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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