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とれんど捕物帳 まさに“THE市場” なぜドルは上がらない

配信日時
2018年9月22日(土)08:45:00
掲載日時
2018年9月22日(土)08:55:00

 今週は突然リスク選好の雰囲気が高まりドル円は112円台後半まで上げ幅を拡大した。トレンドも完全に上昇へ転換しており、目先は7月につけた年初来高値113.15円をうかがう展開を見せている。米中貿易問題は相変わらず解決の糸口が見えず、トランプ大統領は2000億ドル規模の中国からの輸入品に対する10%の制裁関税を発表した。来週の24日から発動する。トランプ大統領は加えて、問題が解決しなければ来年には税率を倍以上に引き上げるとしたほか、追加で2670億ドル相当の関税賦課の可能性にも言及した。

 市場からは予想通りとの見解も聞かれたが、来年の税率引き上げにも言及した辺りは予想以上だったのではとも思われる。面子を重んじる中国も600億ドル相当の報復関税を早速発表しており対抗心をあらわにしている。

 米中貿易問題は次のステップに完全にエスカレートしたが、市場は意外なほど冷静な反応を見せている。どこから出てきたのかはわからないが、突然、経済への影響は限定的だと言い出している。IMFをはじめ諸々の人たちはそうは言っていないようだが、この辺はまさに“THE市場”としか言いようがない。一部には来年になって関税が全て25%に引き上げられたとしても、米個人消費支出のうち家計が直接購入する中国からの輸入品の割合はさほど高くはなく、インフレへの影響は限定的との指摘も聞かれる。もし、現時点で賦課が決まっている計2500億ドルの中国からの輸入品への関税が来年に全て25%に引き上げられたとしても、インフレへの影響は前年比で0.3%以下だとの試算もあるようだ。

 市場が過度にネガティブな反応を示さなかったことは有難いことではあるが、この辺は成り行きを見守るしかないのであろう。来週はFOMCがあり、経済見通しやパウエルFRB議長の会見も予定されている。FRBは貿易問題の影響をどう見ているのか確認したいところではある。

 もう一つ解釈が悩ましい動きがある。ドル高になっていないという点だ。確かに、これまでリスク回避のドル買いだったことからその巻き返しとも言えるが、もしファンダメンタルズに市場の意識が戻っているのであれば、米国と他国の金融政策の格差から、ドル高という解釈になるのであろう。米10年債利回りは大台の3%台を回復しているが、「FRBのタカ派姿勢を織り込む動き」との解釈も債券市場では聞かれた。

 しかし、為替市場はドル高にはなっていない。常に米財政赤字や様々な外部要因があり、金利と為替レートの相関関係が従来よりも薄れているともいえなくはないが、やはりグローバル化とポジションの状態が大きく影響しているという説が有力なのかもしれない。

 一つは、リスク選好の雰囲気になれば、米経済と新興国を始めとした他国経済とのカップリングが再び強まり、ドルから資金が移動することが期待され、それを市場は先取りしているというもの。そしてもう一つは、グローバル化の環境下で、ドルロングが過度に積み上がっていれば、どうしてもその解消圧力が働くというもの。実際、ドルロングはFRBの利上げ姿勢やトランプ大統領の減税などの経済政策の効果で高水準に積み上がっている。米シティバンクが算出しているシティFXペイン指数というのがある。ヘッジファンドなどの持ち高を推計したものだが、ドルのポジションは算出以来の高水準に再び上昇している。リスク選好の雰囲気になれば、ある種アルファの出ている他国へ資金を移動したくなるのであろう。円についても似たようなことが言えるのかもしれない。もっともこちらは金利ではなく信頼感だが。特に日本人の。

 さて来週だが、FOMCが予定されている。結果発表は日本時間で27日未明。今回はFOMCメンバーの経済見通しや金利見通し(ドット・プロット)、そして、パウエルFRB議長の会見が予定されている。0.25%の利上げが確実視されており、そのこと自体は既に織り込みだ。12月の利上げの可能性も示唆してくるであろう。注目は上記の貿易問題の影響も含めて来年以降どう見ているのかという点。

 現在の市場の流れからタカ派な見通しを示すとの予想も出ているが、個人的には中立か、もしくは、慎重姿勢を強調してくるものと思われる。将来の景気後退局面に備えて中立金利までの利上げは主張してくるものと思われるが、他国との金融政策の格差を過度に広げたいとは思わないであろう。

 現在の流れからすれば、素直にドル売りの展開が予想されるが、株高の反応が見られれば、ドル円は上値を伸ばすかもしれない。ただし、あくまで円売り・ドル売りであることから、上値抵抗はそれなりにあるものと思われる。来週は日本企業の中間期末でもある。

 レンジとしては112.00~114.00円を想定。スタンスは「中立」から「やや強気」に変更する。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑↑(↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 下から中立へトレンド変化
短期 ↑↑↑(↓↓)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑↑↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美

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