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不可解な米農務省(USDA)需給予測はどう修正されるのか

 7月に入り米コーンベルトはいよいよ受粉~結実というコーン生育にとって最も重要な時期を迎えている。この時期に高温熱波、長雨などの天候不良に見舞われると受粉が上手く行われず結実不良となり、最終的には生産量の下方修正が見込まれる。それ故、天候に対してセンシティブな動きが最も見られる時期となる。

 コーンの受粉期はシルキング直後に迎える。米農務省(USDA)の発表によると米コーンベルトでは7月8日時点でシルキングを迎えた割合が37%に達した。前年、平年の18%を大幅に上回るペースであるほか、2010年以来、約8年ぶりの速い進捗率となる。

 生育の速さがコーンの生育にとって重要となる理由は、生育ペースが早ければ7月から8月にかけてという一年間で最も気温が上昇し高温熱波に見舞われるリスクが高まる時期に受ける影響を軽減することができる、という点にある。

 生育ペースだけが生産量に影響するわけではなく、適度な水分、適度な気温も重要となる。ただ、夏場の熱波の影響を受ける期間が短ければ、作柄悪化の可能性が低くなるとを意味し、その点から生育ペースが重要視される。

 そのため作付初期段階から作柄と同時に生育ペースが注目され、作柄を考慮する必要がある。生育ペースが早ければ豊作の可能性が高く、生育ペースが遅ければ不作リスクが高まる。

 今年は作付段階でのスタートダッシュには失敗したものの、5月に入ってから大きく作付ペースが上昇したことで前年や平年並の進捗率に追い付き、現時点では前年、そして平年を大幅に上回るほどのペースに達している。

 これだけではない。今年は作柄のうち良以上が占める割合が70%を上回る状況が作付開始以降、続いている。6月下旬以降、米コーンベルトの気温は平年を上回り、一部では摂氏38℃前後まで上昇しており、この暑さも原因となって作柄のうち良以上が占める割合もじりじりと引き下げられている。

 ただ、それでも7月8日時点の良以上の割合は75%となっており、豊作年のパターンを維持している。特に前年は6月下旬から7月半ばにかけて高温熱波に見舞われた結果、同時期の作柄が65%程度まで低下していたことと比較すると、現時点の作柄が良好なことが分かる。

 さらに米コーンベルトの今年度の作柄は、作柄の発表が始まって以来、70%以上の水準を維持し続けている。

<米コーン生産量予測の上方修正は必至の様相>
 この状況は過去第2位の高いイールドを記録した2016年度と類似している。この年も、生育開始から収穫終了までの期間を通して作柄のうち良以上が占める割合が70%を超え続けた。

 その結果、当時としては過去最大のイールドとなる174.6Buを記録した。過去の米国のイールドの推移を見てみると、年を追う毎に上昇する傾向があるなかでも時折、それまでの水準から急激にイールドが上昇する場面がある。

 2003/4年度から2004/05年度の場合、03/04年度までは140Bu前後だったイールドは04/05年度には160Bu台へと一気に上昇し、それ以降は160Bu前後のイールドが固定化された。

 それから10年後の2013/14年度から14/15年度にかけての時期にもまた大きな動きが見られた。13/14年度に記録した158.8Buから14/15年度には173.4Buへと飛躍的に増加し、それ以降は170Bu台のイールドが固定化されている。

 特筆すべきは昨年度だろう。作年は生育期を通して作柄のうち良以上が占める割合が70%を超えることがなかったばかりか、コーンの生産量を決定づけるため生育において最も重要とされる6月下旬から7月半ばという時期に高温乾燥に見舞われた結果、良以上の割合が60%割れ直前まで低下した。しかしイールドは過去最大の176.6Buを記録した。

 一方、昨年度に比べて圧倒的に良好な作柄を記録しているにもかかわらず、6月の需給報告で18/19年度のイールドは174.0Buに抑えられている。USDAとしても良好な生育状況は把握しているが、予測の段階で先走ることを避けるために保守的な数値にとどまっているのが背景と見られる。

 というのも、17/18/年度は前述のような生育環境だったためイールドはその前年度の174.6BUを大きく下回る170Bu前後に抑えられてきたにもかかわらず、収穫期終盤となる11月時の発表で175.4Buへと急激な調整を迫られているからだ。

 USDAの需給報告におけるイールドがより現実的なイールドに近づくのは結実数の確認が可能となる8月時の発表となる。7月に熱波が続いたことで8月にかけて作柄が悪化し、イールドの下方修正が行われたという過去の経験もあって、12日に発表される需給報告でもコーンのイールドは控えめな数値が継続される可能性がある。

 ただ、生育ペースが大きく上昇し、作柄も2016年度並みの良好な状態を保っている現状、さらには高温熱波に見舞われながらも昨年度のイールドが過去最高を記録した、という状況を考慮すると、今年度の米国のコーンイールドは今後、引き上げを迫られざるを得ないのが実情と見られる。

 マーケットはすでにイールドの上方修正を織り込んでおり、引き上げがなければそれが強気のサプライズになりかねないほどの状況だ。注目されるのは理想的な生育環境が整うなか、どれほどまでの伸びが見られるのか、という点だ。

 過去にも見られたように年度を跨いでイールドが飛躍的に伸び、180Buに迫る水準が固定化されるようになるのか。需給報告の発表が待たれるところだ。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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