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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

米中貿易戦争のなか穀物市場が受ける影響を考える

 3日、米国は通商法301条に基づくとしたうえで、関税25%賦課の対象となる中国製1300品目を公表しました。この措置の対象規模は最大で600億ドル相当に達することが見込まれます。

 これに反発した中国は世界貿易機関(WTO)に米国を提訴することを発表すると同時に米国製品に対しても同規模の報復的措置を取ることを発表し、4日にはその内容が明らかにされました。

 すでに2日に発表されていた報復的措置で対象とされたの米国産豚肉などの128品目でしたが、これらの2017年度における輸入規模は30億ドル程度だったため、2日の発表時点ではこの報復的措置による影響は限られたものと見られていました。

 しかしながら、米国の1300品目にも渡る追加関税措置発表を受けて4日に発表された中国側の25%もの追加関税を課す品目は500億ドル(約5兆3000億円)相当の輸入品106品目でした。

【追加課税30%なら中国の米国産大豆輸入は最大71%減の可能性=バデュ―大学】
 穀物市場にとって懸念されるのはその中に米国産大豆が含まれていた点です。中国は米国にとって米国の中国向け大豆輸出量は総輸出量のうち約60%に達するほどの最大の輸入相手先国であり、25%もの追加関税が賦課されることによって中国の米国産大豆輸入量が大きく減少することが見込まれるからです。

 今回の中国側による報復的措置が発表される前の29日に米国のパデュー大学が発表した試算では、中国側の追加関税が30%に達した場合、中国の米国産大豆輸入量は最大で71%減少する可能性があるとの見方が示されました。

 また、中国向けの輸出量が大きく減少する結果、米国の大豆総輸出量は40%程度減少し、大豆製品総輸出量も17%の減少を強いられる、との予測が明らかとされています。

 今回発表された中国側の追加関税はパデュー大学が設定した30%を下回る25%だったため、輸出量の減少分も上記の予測を下回ることが見込まれますが、それでも大打撃を受ける可能性が高いことに変わりはありません。
 
 今のところ、今回の中国による米国産大豆への追加関税賦課措置に関しては、大豆の多くが飼料用として消費されることから、中国国内の豚肉価格上昇という結果をもたらすほか、中国国内の物価高をも促し、結果的に中国経済にとってもネガティブ影響が与える可能性があると考えられます。
 
 ただ、米国は中国にとって最大の輸入相手先国ではあるものの、大豆の輸入相手先は米国だけに限られているわけではありません。

 とりわけ、世界最大の輸出国であるブラジルの存在が米国からの輸入減少分を完全に補うのは不可能にしても、ある程度の量が補われる可能性が高い点に注意が必要でしょう。

 米農務省(USDA)の3月発表分の需給報告によると、ブラジルの17/18年度の大豆輸出量は米国の5620万トンを大きく上回る7050万トンが見込まれており、米国からの輸入分を補うには十分な輸出量を誇っています。

 それだけではありません。米国を遥かに上回る輸出量を示現しながらも、国内在庫は米国の1510万トンに対し2167万トンが見込まれているため、引き合いそして輸出に向けて条件が整えば輸出量はさらに伸びる可能性があると考えられるのです。

 今回、中国が米国からの大豆輸入に対して追加関税の賦課を発表するという強気な態度に出ることが出来たのも、このようなブラジルの存在を考慮したからこそ、ではないでしょうか。

 ちなみに中国の通関当局によると今年2月の同国の大豆輸入量は542万トンでそのうち米国産が334万5000トンでした。これは月間輸入量のうちの約61%に当たる量です。

 なお、この月のブラジルからの大豆輸入量は175万トンで米国からの輸入量は大きく下回っているものの、前年同月の輸入量は68万7000トンでした。これに対し米国からの前年同月の輸入量は440万トンでした。

 そのため、2月のみのデータではありますが、米国からの輸入比率は依然として高い水準にあるとはいえ徐々に低下している可能性があるのに反しブラジルからの輸入比率は上昇傾向にあると考えられるのです。

 ブラジルにとって今回の米中の貿易戦争は、世界最大の大豆消費国であり更に需要が伸びると予測されている中国に向けの大豆輸出量を成長させる良い機会になる一方、米国にとっては中国における大豆輸入相手先としての存在を弱めることになりかねません。

 そうなれば、今回の貿易戦争の発端を作ったトランプ大統領にとって、自らの首を絞めかねない事態が発生する可能性があります。というのも、トランプ大統領を支持している地域には、米国の穀倉地帯である中西部が含まれているからです。

【追加課税賦課発表でシカゴ大豆は一時10ドル割れ】
 米国による中国製品への追加関税賦課に端を発した今回の米中間の貿易戦争ですが、中国による大豆への追加関税賦課の発表を受けてシカゴ市場では大豆価格が暴落し、中心限月の5月限は一時的とはいえ983.50セントと2月6日以来、約2か月ぶりの安値まで値を落とすなど、米国の大豆輸出減少に対する警戒感が一気に価格に現れました。

 米国はまさに今これからコーン、続いて大豆の作付時期を迎えようとしているところです。通常ならば作付前の段階で種子、肥料、農薬など今期の生育に必要な準備が進められているうえ、コストとの闘いのため作付けを予定していない穀物の種子を保有している量も予備的な量にとどまり、大量に保有しているとは考えづらいのが実情です。

 そのため、今回の中国側による米国産大豆への追加関税賦課の発表によって一部で作付変更の動きが見られたとしても、実際の作付面積が3月末に発表される米農務省(USDA)作付け意向面積から大きく異なる可能性は低いと考えられます。

 中国による米国産大豆への追加関税の賦課はまだ発表されたばかりで、中国側は関税が導入される期日は後日の発表としています。そのため、貿易戦争激化の恐れから両国間の歩み寄りが短期で見られる可能性もあります。もしくは、交渉が難航すれば中国の関税導入が実行に移され、貿易戦争がさらに激化することになるかもしれません。

 もしそうなった場合、大豆貿易に関しては、米国を上回る輸出国であるブラジルの存在があるだけに、米国側にとっては大豆供給国としての中国でのシェアを失い、かつ、取り戻すのも難しくなる結果、トランプ大統領の支持率低下、というトランプ政権にとっては好ましくない形になって現れる可能性があります。

 トランプ政権による中国産製品に対する関税賦課に端を発した今回の米中間の応酬合戦ですが、トランプ政権にとっては自らの首を絞めかねない事態が発生する恐れを含んでいることもあり、その行方が注目されるところです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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