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今年の原油相場から見る今後の産油国の石油戦略

 NYMEX原油相場は年末を迎えるなか、60ドルの節目を試す動きを見せています。2015年7月下旬以降、55ドルが上値抵抗となっていたNYMEX原油市場において、その上値抵抗を突破して、なお上を目指す足取りを見せているというのは、原油市場の基調が緩やかながらも変化を遂げていることを窺わせています。

 NYMEX原油は、今年1月3日の取引では2016年末の弱気な足取りを引き継ぎ大幅続落場面を演じ、前半は下落基調となりましたが、後半から年末にかけて上昇基調の強まりをうかがわせています。NYMEX原油は、この一年、どのような足取りを経て年末に値位置を引き上げる動きを演じるに至ったのでしょうか。

 まず、原油価格のこの数年の動きを振り返って見るとシェールオイル革命による米国の生産量の大幅な変化とこれに伴う価格水準の低下が見られました。

 技術の発展によってシェール層からのエネルギー生産が可能になったことは革命とも呼ばれるほどの大きな変化を米国の産油量にもたらし、その結果、米国が主要輸入国から輸出国に転じると同時に、この増産の影響で国内在庫が拡大、そしてこの供給拡大に価格を圧迫される足取りが続くに至りました。

 その傾向が顕著となったのが2014年7月下旬から2015年1月にかけての時期です。この時には原油生産量が1983年以来の高水準まで拡大したことを受けて米国内の原油在庫にだぶつき感が強まるなか、2014年7月28日には101ドル台を付けていたNYMEX原油は、2015年1月半ばには44.2ドルまで値を落としました。

 その後、2015年4月から6月下旬にかけて60ドル前後で推移する場面が見られたものの、荷余り感が強まるに従って原油価格が受ける圧力は強まり、今年11月に60ドルを目指す足取りが明確になるまでは55ドルを上値抵抗にする頭の重い足取りが続いていました。

 このような原油価格の低迷をもたらしている供給過剰感に対し、従来からの原油輸出国でありOPECを中心とした主要産油国が強い姿勢を持って対応し協調減産を実施したのが年末にかけての価格上昇を促す要因であり、これこそが今年の原油価格回復を促すの中心的な役割を果たした動きと言えるでしょう。

 とはいえ、この協調減産による原油価格の回復も決して簡単な道のりではありませんでした。

 というのも、これまでにも原油価格回復のためにOPEC内で生産枠を設定した上での減産を実施する動きが見られながらも、OPEC加盟国内の減産遵守率は高いものではなかったからです。そのため今回、協調減産が合意に至り産油枠が設定されてもその基準通りの生産が実施されるかどうかに関しては懐疑的な見方が根強かったからです。

 また、OPEC加盟国の中でもリビア、ナイジェリアには減産枠が設定されなかったことで、両国の増産が減産効果を相殺する恐れも懸念されていました。

 実際、減産枠の設定がないリビアとナイジェリアは順調に国内生産量を伸ばしていったことで協調減産の効果が薄れると同時に、この協調減産の効果に対する懐疑的な見方が広がったことで、原油価格は6月半ばには42.05ドルと昨年11月半ば以降の安値まで値を落としています。

 ただ、これまでの減産と異なったのはOPECの強い姿勢です。価格低迷に際しOPECは総会において2018年3月末まで協調減産を延長することを決定し、さらに11月末に実施した総会においても、OPEC加盟国が日量約120万バレル、非加盟国が日量約60万バレル、総計で約180万バレルとする減産枠は据え置きながらも、来年12月まででの延長を決定するなど、需給バランスの調整がさらに進行するまでは減産の手を緩めない方針を示しました。

 この需給バランスの調整とこれに伴う価格回復に向けたOPEC並びにロシアを中心としたOPEC非加盟の主要産油国の強い姿勢は、今後も原油価格を下支えする要因になってくることが見込まれます。

 そこで注目されるのが、OPECとロシアを中心とするOPEC非加盟の主要産油国の減産協調を受けて原油価格はどこまで上昇するかという点ですが、原油価格の更なる上昇は一筋縄ではいかないと考えられます。

 というのも、価格が上昇するたびに浮上するシェールオイルの増産観測が強まりこれが価格を圧迫する要因になってくることが予想されるからです。

 実際に原油価格の上昇が米国での増産を促しているのかどうか、という点についてはリグ稼働数の推移から推測することが出来ます。

 ベーカーヒューズ社発表の米国のリグ稼働数の推移を見てみると、2015年11月以降に原油価格が40ドルを下回る水準まで下落した後は、時間差が生じながらもリグ稼働数もこの原油価格の下落に追随する形で減少し、2016年5月下旬には316基まで減少しています。

 しかしながら、その後は原油価格が50ドルに向けて回復傾向を見せるに伴ってリグ稼働数も拡大し、今年に入ってからは50ドルを超える水準での推移が見られるなか、リグ稼働数も700基を超える水準まで膨らみました。

 ちなみに今年次第のリグ稼働数を記録したのは8月12日に発表された768基です。原油価格の回復と夏場の需要期を迎えたことが稼働数の増加を促したと見られます。その後は需要期を終えたことで稼働数も減少傾向にあるとはいえ、原油価格が60ドルに迫る足取りを見せるなか、8月12日以降から12月28日に至るまでの間での最少数は11月4日発表の729基でした。

 原油価格が45ドル前後で推移していた昨年同期のリグ稼働数は450基だったため、原油価格が安定的に50ドル前後で推移しているという状況が、リグ稼働数の拡大を促している様子が窺われることになります。

 そのため、60ドルに迫る動きをNYMEX原油が見せている以上、これまでよりも採掘が困難になるため生産コストが上昇するとの見方が強いとはいえ、シェールオイル生産量の拡大観測は付いて回ることになり、これが引き続き価格を圧迫する要因になってくる可能性があります。

 さらに、OPEC並びにロシアを中心としたOPEC非加盟の産油国による協調減産に関しても、日量180万バレルの協調減産を行うことで初めて需給が引き締まるという事実は協調減産が終了すれば原油生産に余剰分が生じることになり、再び需給緩和に向かう可能性があることを示唆しています。

 そのため、11月末のOPEC総会における協調減産の延期決定は已むに已まれぬ選択だったとも言えるでしょう。

 この1年は原油価格の回復に向けた強い姿勢をOPEC加盟国、ロシアを中心とした主要産油国が見せたことにより60ドルに迫る水準まで原油価格も回復してきました。来年も1年を通して協調減産が実施されることが決定されたことにより、今後も原油価格が下支えられる見通しが付いたことになります。

 とはいえ、この価格の安定もOPEC加盟国およびロシアといった主要産油国の協調減産なくしては実現できない可能性が高いことが窺われるなか、これら産油国がどのような出口を模索していくのかが注目されるところです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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