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小麦市場で何が起きているのか

 米国小麦アソシエイツ(USW)は10月18日に、今年12月1日よりエジプトのカイロ事務所を閉鎖することを発表しました。

 USWによると、同組織のカイロ事務所では中東諸国、北アフリカ地域での市場調査などを行っていましたが、今後はこの地域での活動はオランダのロッテルダム事務所が引き継ぐことになっています。

 USWはなぜこのカイロ事務所閉鎖の決断を迫られたかのでしょうか。バイス・ピーターソン代表は、その理由として、近年、エジプトには廉価なロシア産小麦が流入し米国産小麦は激しい競争にさらされていることを挙げています。

 同代表の言葉示すように、小麦市場ではロシアの存在がこの近年、急激に高まっています。

 現地10月12日に発表された米農務省(USDA)の需給報告によると、2017/18年度のロシアの小麦生産量は前月時点の予測8100万トンから8200万トンへと上方修正されました。

 この生産量はEUの1億5104万トン、中国の1億3000万トン、インドの9838万トンに次ぐ世界第4位の量となります。この生産量上位4か国のうち、中国、インドはそのほとんどを国内で消費しており、この両国の輸出はごく限られた量となっています。

 また、従来からの主要輸出地域であったEUの輸出量は2014/15年度にこれまで最大の3545万5000トンを達成した後は頭打ちとなっています。2017/18年度の輸出量は2850万トンの見通しとなっています。これに対し、ロシアは生産量こそ世界第4位ながら、輸出量は3250万トンと世界最大となることが見込まれているのです。

 実はロシアは世界の主要小麦輸出国となったのはここ最近のことです。2000/01年度以前の年間輸出量は100万トンを下回る年度の方が多く、2001/02年度に437万2000トンの輸出量を記録した翌年の2002/03年度には1262万1000トンの輸出量を達成しました。

 その後もジリジリと年間輸出量は拡大傾向を見せ、2010/11年度に一度大きく落ち込みながらも2011/12年度には2162万7000トンの輸出量を達成しました。その後は、天候不良による減産の影響を受けた輸出量の減少を経験しながらも、年々、輸出量を伸ばし、いよいよ今年度は3000万トンを上回る輸出量の達成に至っています。

 ロシアは1990年代は穀物の純輸入国でしたが、1998年8月に発生下ロシア金融危機の影響で農産物価格が大幅に上昇した結果、農業における収益性が高まり、これが外貨投資を呼び込むことで、農業生産の成長を遂げてきました。

 このような背景を受けて輸出量を伸ばすなか、ロシアは世界最大の小麦輸出国としての地歩を固め、これに伴って米国の小麦輸出も厳しい競争にさらされた結果、前述のようにUSWが事務所の閉鎖を余儀なくされているのです。
 
 なお、エジプトは世界最大の小麦輸入国でUSDAによると、2017/18年度の輸入量は1200万トンに達する見通しとなっています。

 しかしながら、前述のように強まるロシアからの輸出圧力を受けて、エジプトにおける米国の輸入相手先としての地位は2012/13年度時点の第5位から2016/17年度には37位へと大幅に低下しています。

 注意したいのが、このような流れが今後も続く可能性がある、という点です。というのも、今年5月にはトルコがロシアの穀物製品に対する制限を解除し、ロシア産小麦の輸入を再開させています。トルコ、ロシア間は歴史的な背景もあって政情不安というリスクが常につきまとっていますが、世界第9位の小麦輸入国であるトルコにとって、陸続きであるうえ、廉価な小麦を提供できるロシアは重要な相手先国であると考えられます。

 また、2015年12月には中国国家質量監督検験検疫総局(ACSIQ)とロシア連邦動植物衛生監督局(ロスセリホズナドゾル)との間でロシア産穀物及び油糧種子に関する中国での輸入手続きに合意に至っています。

 この合意は、これまで限られていた内陸のシベリア連邦管区からの小麦輸出を可能にするものとなりました。その後、中国側の検疫検査の厳しさや輸送上の課題、ターミナル確保の問題などがあり、この合意のもとによる小麦輸出は大きな動きを見せていません。

 しかしながら、ロシア農業省によると、シベリア連邦管区の2016/17年度の小麦生産量は1025万トンとなっています。ロシア管区の中では第4位の生産量ではありますが、1000万トンを超える生産が可能な地域から中国に向けた小麦輸出の合意は、今後、拡大する可能性を秘めていると考えられ、それだけに今後の展開が注目されるところです。

 世界有数の穀物生産国として成長しているロシアが着々と競争力を強めるなか、小麦だけでなく菜種など他の穀物市場においても輸出国同士の競争が厳しさを増すことになりそうです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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