FX外国為替情報のKlug(クルーク)
為替、海外投資でハイリターンを得るためのニュース、レポート、コラムを掲載

小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

三菱東京UFJのアベノミクスに対するダメだし

 三菱東京UFJが、プライマリーディーラーの資格を国に返上する方向で検討していると報じられています。

 まあ、そんなことを言われても、一般の方は、なんのこっちゃいなと思うだけかもしれませんので、プライマリーディーラーの意味を先ず説明したいと思います。

 我が国において、プライマリーディーラーというのは、「国債市場特別参加者」という言葉が示すとおり、一般の市場参加者(ディーラー)とは異なり、特別の義務や特権を有するディーラーを意味しています。

 何故そのような特別な市場参加者の存在を認める必要があるかと言えば、どのような状況にあっても国債が安定的に消化されることを確かなものにするためだとされています。

 つまりですね、常日頃、大量の国債の入札に応じてくれているメガバンクや大手証券会社に、そうした目的を遂行するために協力してもらう制度なのです。

 具体的には、プライマリーディーラーには、全ての国債の入札で発行予定額の4%以上の額に応札することや、マーケットメークのために国債流通市場に流動性を提供することなどの義務を課す反面、国債市場特別参加者会合に参加し、財務省と意見交換等を行うことができる特権を与えているのです。つまり、プライマリーディーラーになると、価値ある情報を得ることができる、と。

 ということで、本来であれば、財務省にとっても、そして、銀行や証券会社にとっても有益である筈のこの国債市場特別参加者制度から三菱東京UFJが脱退したいと言っているのです。

 何故なのでしょうか?

 その理由は、日銀が導入したマイナス金利のせいで、現状、国債の利回りが低下している(マイナスになっている)ことから、損失が出かねないと判断したからと言われています。

 どう思いますか?

 確かに常識で考えれば、マイナスの金利になっている国債を保有したいと思う者は普通、いない筈。

 しかし、現実には、10年物国債でもマイナス0.1%程度の金利水準となっており、マイナス利回りでも国債を落札するディーラー(銀行や証券会社)が存在しているのです。

 何故、彼らがマイナス利回りでも国債を落札するかと言えば、それは、日銀がさらに高値で国債を買い取ってくれるので、損失を被るどころかむしろ儲けることができると考えるからなのです。

 では、何故三菱東京UFJは、損失が発生すると考えたのでしょうか?

 それは、今の日銀の政策が続く限り...つまり、日銀が何時までも高値で国債を買い取ることを続ける限り、損失が発生する可能性は小さいが、ひとたびそうした政策が停止されてしまうと、マイナス金利の国債を自分たちが償還時まで保有することが余儀なくされるからと考えたということなのでしょう。

 要するに、アベノミクスの「大胆な金融政策」がこの先いつまでも続く保証はないから、今のようなマイナス金利という不自然な条件で発行された国債を保有することは非常にリスキーであると判断した、と。

 換言すれば、三菱東京UFJは、マイナス金利まで導入した日銀の量的・質的緩和を見限ったということになるのではないでしょうか。

 安倍総理を含むリフレ派の人々は考えました。

 銀行が国債にばかり投資するから、新規の貸し出しが伸びず、景気が良くならない。

 だったら、その国債を日銀が買い上げれば、新たな資金が世の中に出回り景気がよくなるのではないか、と。

 しかし、銀行は、国債を買い取ってもらった代金の殆ど全てを、日銀の当座預金勘定に預けたままにしておいた。

 そこで、またリフレ派の人々は考えたのです。

 日銀当座預金にマイナスの金利をかければいいではないか。そうすれば、銀行は預金を引き出し、貸出に回すようになるのではないか、と。

 そして、併せて、日銀が国債をより高い価格で市中銀行から買い上げれば、金利がさらに下がり、新規の貸し出しが伸びるのではないか、と。

 しかし、お金を貸す市中銀行からすれば、余りにも金利水準が下がり過ぎて、貸出先の貸し倒れリスクをカバーできないほどになってしまっているので、新規の貸し出しにより二の足を踏むようになっているのです。

 市中銀行からすれば、何故10年物の国債までもがマイナスの利回りになるなどという非常識な事態が起きているのか、となるのです。

 これが物価が毎年5%とか10%とか低下するという酷いデフレの状態で起こるのならまだ理解できるけれども、物価の上昇率がほぼゼロ程度の状況で、10年物国債がマイナスの利回りになっているのは、日銀のバカな社会実験のせいではないか、と。

 それに、マイナス金利を導入するというのであれば、預金金利もマイナスにしなければ整合性が取れないのに、日銀や政府は、預金金利は絶対にマイナスにしてはならないと言う、と。

 日銀のやっていることと、民間銀行の考えていること、どちらが筋が通っているかは明らかだと思います。

 アベノミクスのエンジンをこれ以上ふかすのは止めてくれ、ということだと思います。


以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

メールマガジン

山岡和雅が毎日発行!
外国為替ディーラーの心の中

毎日の為替相場を、市場参加者の目を通して判り易く解説。為替ディーラーの本音は?【まぐまぐ殿堂入り】

バックナンバー

朝刊 ニューヨーク為替市場レポート
米国市場の動きを、朝一番に配信!! FX、外国為替、米国株、米国金利など、テレビやWEBサイトでは得られないニューヨーク金融市場情報のほか、アナリストの独自解説も配信します。

バックナンバー

powered byまぐまぐトップページへ

URL変更のお知らせ

KlugFXのURLはhttp://klug-fx.jpへ変更となります。お気に入りやブックマークなどに登録されているご利用者さまは、お手数ですが下記の新URLへの変更をお願いいたします。

http://klug-fx.jp