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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

米国がドル安に誘導したいのであれば、金を処分すればいい!

 トランプ氏は、中国が人民元の価値を不当に低く抑え輸出競争力を維持していることへの対抗手段として45%の関税を中国製品に掛けることを主張しています。

 まあ、そこには並々ならぬ決意も窺える訳ですが...

 しかし、ねえ...と思わない訳にはいきません。

 というのも、米国は、本当に人民元の価値が上がり、そしてドルの価値が下がることを望んでいるかと言えば、非常に微妙であるからなのです。

 確かに人民元の価値が上がり、そしてドルの価値が下がれば、米国の輸出産業にとっては恵みの雨となるでしょう。しかし、その一方で、米国の消費者たちは輸入品にしろ、国産品にしろ、今までより高い代価を支払うことが余儀なくされるので、国民の生活水準は下がってしまうのです。それにドルの価値が下がり続けるということは、米国に入ってくるお金が減ることを意味し...そうなると、株価には下押し圧力がかかるとともに、米国債の売れ行きは悪くなってしまうのです。

 但し、そうした副作用について十分分かった上で、もうこれ以上貿易赤字を積み上げることは不可能だというのであれば、それなら安いドル政策に舵を取ることも考えられると思います。

 否、もうそろそろ米国は本気で貿易赤字減らしに取り組んだ方がいいのです。

 では、その際、トランプ氏が主張しているように輸入課徴金を課すことがいいのでしょうか?

 しかし、単にドル安に誘導したいというのであれば、もっと穏便で簡単な方法があるのです。

 それはですね...

 世界で一番金の公的保有が多い国をご存知ですか?

 ずばり、それは米国です。

 しかし、世界一の債務国が、世界で一番金を沢山保有しているなんておかしいでしょう?

 私は、仮に米国が金を売りに出せば、簡単にドル安が実現できると思います。

 だって、そうでしょう? 金を売らなければいけないとは、相当に困窮しているのだなという印象を内外に与えることになるからです。

 理屈ではないのです。人々の感情に訴えるのです。

 金の保有が底を衝くことによって、初めて自分たちの国は、世界一の借金国だと気が付くのです。

 ドルの急落が怖いというのであれば、金を少しずつ売りに出せばいいのです。そうすると少しずつドルの価値が下がると思います。

 いずれにしても、ドルの価値が下げて米国の製造業を復活させることが目的なのでしょう?

 でも、米国は、やっぱり金を手放したくないのですよね。万が一のことが起きた時、金を持っていた方が何かと都合がいいと考えているのです。

 しかし、そんな中途半端な態度だから、ドル安にはもっていけないのです。

 米国の国民は、中国製品に輸入課徴金を課すべきかどうかを考えるよりも、先ず、安いドル政策が望ましいと考えるのかどうか、そこのところをよく考える必要があるのではないでしょうか。

 今から45年ほど前、ニクソン大統領は次のようなスピーチをしたのですが、そこにも、安いドルを望むのか、強いドルを望むのかが曖昧な態度が示されているのです。

 In recent weeks, the speculators have been waging an all-out war on the American dollar. The strength of a nation's currency is based on the strength of that nation's economy--and the American economy is by far the strongest in the world. Accordingly, I have directed the Secretary of the Treasury to take the action necessary to defend the dollar against the speculators.

「最近、投機家たちが米ドルに対して全面的な戦争を仕掛けている。国の通貨の強さはその国の経済の強さに基づいている。米国の経済は世界一なのだ。そこで私は、財務長官に対して、ドルを投機家たちから守るべく必要な措置を取るように指示した」

 I have directed Secretary Connally to suspend temporarily the convertibility of the dollar into gold or other reserve assets, except in amounts and conditions determined to be in the interest of monetary stability and in the best interests of the United States.

「コナリー長官に、ドルを金や他の準備資産へ交換することを一時的に停止するように指示した。但し、金融の安定及び米国の利益になると認められる場合において、一定の額と条件を満たす場合は例外とする」

 I am taking one further step to protect the dollar, to improve our balance of payments, and to increase jobs for Americans. As a temporary measure, I am today imposing an additional tax of 10 percent on goods imported into the United States. This is a better solution for international trade than direct controls on the amount of imports.

「ドルを守り、国際収支を改善し、そして国民の職を増やすために、私はさらなる措置を取る。一時的な手段として、本日、米国に輸入される商品に対し10%の追加的税を課す。貿易問題を解決するためには、輸入額を直接コントロールするよりも、この方が優れている」

 This import tax is a temporary action. It isn't directed against any other country. It is an action to make certain that American products will not be at a disadvantage because of unfair exchange rates. When the unfair treatment is ended, the import tax will end as well.

「この輸入課税は一時的なものである。特定の国に対するものではない。不公正な為替レートによって米国製品が不利にならないようにするための措置である。そうした不公正な扱いが終了したとき、この輸入課税も終わりにする」

 As a result of these actions, the product of American labor will be more competitive, and the unfair edge that some of our foreign competition has will be removed. This is a major reason why our trade balance has eroded over the past 15 years.

「こうした措置の結果、米国製品は競争力が向上し、我々の競争相手が保有していた不公正な手段が取り除かれる。これこそが、我が国の国際収支が過去15年に亘って均衡を失ってきた最大の理由である」

 ニクソン大統領は、ドルを守る必要があると言いながら、ドルの価値は不当に高くなっていると主張しています。

 何か矛盾していますよね。

 トランプ氏も、ニクソン大統領と同じような考え方をしていると思われますが、そのような考えから抜け出せないから、いつまで経っても問題が解決しないのです。というよりも、まだ、何が問題か分かっていないのですね。


以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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