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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

マイナス金利政策やお札の価値を減価させる政策に効果がない理由

 日銀がマイナス金利を打ち出して1週間が経過しましたが...黒田総裁の評判はもう滅茶苦茶です。

 いえ、テレビや新聞ではそんなに悪くは言われてはいません。悪く言われているのは、ネット上でのことなのです。

 ただ、マイナス金利の導入については、黒田総裁のオリジナルな考えというよりも、何人かの専門家が以前から主張していたのです。

 例えば、元日銀副総裁の岩田一政氏。

 日銀がマイナス金利導入を決定する直前に、朝日新聞とのインタビューで次のようなことを言っていました。

 ――それでは、現行の枠組みが行き詰まった場合の処方箋(せん)は何でしょうか。

 「私は『マイナス金利』政策をとることが望ましいと思う。出口における赤字発生を考慮すると、ここまで量的に日銀のバランスシートを拡大してしまったら、金利目標に戻るしかない。伝統的な金融政策の枠内で金利がゼロまで下がってしまい、それ以上下げられなかったから、量的緩和に踏み切った。だが、金利はマイナスにするという手が残っている」

 ――どういった効果があるのでしょうか。

 「一番明確なのは為替レートへの影響だ。金利をマイナスにまで下げれば、為替レートを円安にすることができる。また、金融機関の貸出金利に対しては多様な経験がある。マイナス金利のデンマークでは住宅ローンの金利がマイナスになり、借りれば借りるほどお金がもうかってお得だ。国債もマイナス金利で発行できれば、発行すればするほど利払い費を削減できることになる」

 「ただ、日銀はいま、マネタリーベースを操作目標にしてしまっている。日銀の当座預金につく金利をマイナスにすると、当座預金が増えにくくなり、マネタリーベースの積み上げに悪影響が出てしまう。また、民間の銀行の収益を圧迫するとの懸念もある。まずは日銀が現行の政策の枠組みを変えることが必要だ」

 円安誘導策ということですか? でも、それは通貨安戦争を起す恐れがありますよね。

 それに、お金を預ける庶民の気持ちが全く分かっていない、と。預金金利がマイナスになって、国民が黙っていると思っているのでしょうか?

 経済学者の深尾光洋教授も、相当前からマイナス金利を主張していました。(深尾光洋の金融経済を読み解く 2009年4月1日、マイナス金利を検討せよ)

 「それでは、全く打つ手はないのか。金利をマイナスにできれば、景気を刺激できるはずだ。しかし単に日銀がマイナス金利で銀行や企業にお金を貸し出しても、効果はあまりない。これは現金という、ゼロ金利のきわめて安全な資産が大量にあるからだ。日銀からマイナス2%でお金を借りられるのであれば、銀行は借りられるだけ借金をして現金で積んで置くだけで、努力無しに2%の利ざやが確実に得られる。しかし課税をうまく使うことで、実質的に金利をマイナスにすることは可能であり、以下では「マイナス金利政策」と呼ぶ。」

 「マイナス金利を実現するためには、政府が価値を保証している金融資産に対して、デフレによる実質価値上昇分を課税すればよい。たとえば、10年4月1日時点で、国債、預金、現金などに対して、2%の税率で課税するのだ。同じ金額の現金を持っていても、デフレにより購入できる財やサービスの量が増加するので、その増加分を担税力と見なして課税するのだ。政府は将来デフレが続く限り、たとえば2年ごとにデフレ幅に見合った課税をすると宣言する必要がある。」


 ちょっと分かりにくいですが、簡単に言えば、例えば、日銀券に毎年印紙を貼らないと、その日銀券が通用しないような仕組みにすれば、お金の価値が少しずつ減価していくので、人々はそうならないうちにお金を使おうとし、そうなれば景気がよくなるという考えなのです。

 あと、産経新聞の田村秀男氏や安倍総理も以前からマイナス金利を支持していたようなのですが...

 だとすると、ネット上の多くの住人からすれば、これらの人々は、黒田総裁とともにとんでもない考えを持った人だということになりますね。

 深尾氏は、かつての麻生政権時代に、紙幣の価値を減価させることによって消費を刺激する方策を麻生氏に直接提言していたことがあるので、記憶が残っているかもしれません。

 でも、そのようなアイデアは成功しないのですよね。

 確かに、世の中に出回っている通貨が日銀券だけであれば...そして、日銀券の価値が毎年減価するのであれば、人々はなにか対策を講じることが必要となり、その一つの手段として、お金をモノに換えることが考えられる...従って、消費が活性化することも考えられない訳ではないでしょうが、仮にそのような状態になったら、人々は円をドルに交換したり、或いは、金や他の貴金属に交換したりするだけで、一般的な消費の増加につながらない可能性もあるのです。

 或いは、お金の価値が減価するという厳しい状況においては、余計に防衛的に反応し、お金を使わなくなってしまうかもしれません。

 いずれにしても、今回、深尾氏などがかねてから主張していたおバカなマイナス金利政策という社会実験が黒田総裁の下、実施されることとなり、そして、それに対する国民の取り敢えずの判断が下ったと言っていいでしょう。

 多くのネット住人はなんと思っているかと言えば...預金金利がマイナスになれば、預金の取り付けが起きる、と。

 まあ、私も、預金金利がマイナスになったら、黙ってはいないつもりです。みんなに呼びかけて、日銀のマイナス金利を撤回させる動きに出たいと思います。

 で、既にお気づきかもしれませんが...こうしてマイナス金利を主張してきた人々は、どういう訳かリフレ政策を主張してきた人と重なるのです。

 つまり、リフレ政策が功を奏さないなか、マイナス金利政策をスタートさせたが、それに対して国民がブーイングを浴びせているということなのです。


以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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