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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

長期金利がマイナスになりそうな本当の理由

 長期金利(新発10年物国債の利回り)が0.1%を切り、マイナスになりそうな状況になってます。

 どうしてでしょう?

 そのような質問をすると、そんなの簡単じゃないのと言われそうですね。

 それは日銀が先週マイナス金利を導入したからじゃないか、って。

 確かに、先週のマイナス金利導入をきっかけとして金利が急低下しているのは事実ですから、間違っているという訳ではないのですが...でも、よく考えたらどうも納得がいかないのです。

 というのも、日銀がマイナス金利を適用する日銀当座預金の量は、当面は10兆円ほどに過ぎず、約260兆円ほどある日銀当座預金の4%にも満たず、しかも、昨日、グラフで示したとおり、民間金融機関は、そもそも10兆円ほど日銀に預金を預けておけば何の支障も生じないので、250兆円を上回る部分にマイナス金利が課せられたとしても、本来は痛くもかゆくもないからです。

 つまり、マイナス金利が課せられるのであれば、その分の預金を引き出せばいいだけのことだからです。

 そうでしょう?

 これが、マイナス金利が課せられる部分というのが、例えば法定準備預金に係る分などであれば、その部分は必ず預けなければいけないお金であるので、マイナス金利が課せられると、民間金融機関にとっては大きな痛手となるでしょう。

 でも、その場合であっても、だからといって国債の利回りを大きく引き下げる要因になり得るのでしょうか?

 実は、その場合も、国債の利回りを決めるのは、国債に対する需要と供給であり、マイナス金利が適用されることによって民間金融機関の国債に対する需要が増加する訳ではないので、国債の利回りが急低下したり、ましてやマイナスになることはないのです。

 では、今回何故、10年物国債の利回りまでマイナス寸前になっているのか?

 それは、今回マイナス金利が適用されることになった日銀の当座預金の該当部分は、まさに金融機関の意思によって預けられている余裕資金であり、それが今回のマイナス金利導入によって0.1%の金利を稼ぐチャンスを喪失するために、その部分が10年物国債に向かっているからに外なりません。

 日銀は、本当は、その部分が企業への融資等に向かうことを期待している訳ですが、民間金融機関からすれば、魅力のある融資先はないということで、またしても国債に向かう格好になったのです。

 面白い話ですよね。そもそも資金需要が弱く、魅力的な融資先がないから民間金融機関は国債で余裕資金を運用していたのを、黒田総裁率いる日銀が、その国債を大量に買い上げ、民間銀行が融資を増加させることを期待した、と。

 しかし、日銀が買い上げた代金は、当座預金として預けておけば0.1%の金利を稼げるので、民間金融機関は融資を増やすことをしなかった、と。

 そこで、今回、その当座預金(但し一部)の金利を0.1%からマイナス0.1%にしたところ、やっぱり融資は増えずに、国債の購入に向かっているだけだ、と。

 ということは、マイナス金利を導入することによって、イールドカーブが下がると黒田総裁は言っていましたが、イールドカーブが全体として下がるということは、日銀の思惑とは裏腹に全然融資が増えていないことの証明になるだけであって、この政策が失敗だということになるのです。

 いずれにしても、今言ったような理由で民間金融機関の国債の対する需要が仮に年間10兆円分ほど増加したとして、それほどまでに利回りが低下するものなのでしょうか? だって、マイナスになる可能性があるほどですから。

 何故こんなに10年物国債の利回りまでが急低下しているのでしょうね。

新発10年物国債の利回り.jpg


 それは、まさに日銀が、量的・質的緩和と称して、市場にある国債を買い占めているため、民間金融機関が国債を流通市場で購入するのが難しくなっているからなのです。

 それに、日銀は、単に大量の国債を買い占めるだけではなく、相場よりもかなり高い価格で購入しているために、民間金融機関は益々国債を購入することが難しくなっており、だから、国債の価格が高騰し、利回りがマイナスに迫っているのです。

 ということで、今、国債の流通市場で金利が急低下しているのは、今回日銀がマイナス金利を導入したからというよりも、そもそも量的・質的緩和の下で日銀が大量にしかも高値で国債を買い占めていることが本当の理由なのです。

 では、そうやって強引に国債の利回りを低下させて何かいいことがあるのか?

 我が国の全般的な金利水準が下がれば、円安の圧力がかかることが容易に想像されますが...そしてまた、円安になれば輸入物価の上昇を通じてマイルドなインフレが起きる可能性がありますが...消費者からすれば、金利収入が減ることと円安によって物価が上昇することの2つの意味で購買力が奪われてしまうのです。

 こうして金利がマイナスに迫ることによって、国債を発行する政府の金利負担が軽くなるので結構なことではないかと考える人がいるかもしれませんが、その分、日銀が本来得るべき金利収入が減少するので、政府と日銀を合算して考えるとプラマイゼロというべきでしょう。

 いずれにしても、超低金利どころかマイナス金利が発生するような状況になれば、投機熱を煽り、バブルが発生するだけの話なのです。

 で、いつの日にか原油価格が上昇し始めるなどして、インフレ率が上がりだすと、否が応でも金融を引き締めざるを得なくなる日が来て、バブルが弾けてしまうのです。


以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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