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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

なんとも中途半端な日銀のマイナス金利政策

 日銀が、マイナス金利政策を採用すると発表しました。正式には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」と言うのだ、と。

 何と言ったらいいのでしょう。

 流石、黒田総裁!

 甘利大臣の辞任とほぼタイミングを合わせるような格好で、予想もされなかった緩和策を打ち出すなんて、憎い、憎い!

 これでさらに安倍総理の覚えが良くなることでしょう。

 でも、このニュースに驚いている人が少なからずいると思うのです。

 いや、一般の方も驚いてはいると思うのですが、事情通の人ほど違った意味で驚いていると思います。

 では、何故事情通は、このマイナス金利に驚くのか?

 それは、日銀の、これまでのマネタリーベースを年間80兆円のペースで増やすという目標を実現するためには市中銀行が日銀に預ける預金、つまり日銀当座預金に若干の金利を付けてやることが不可欠だからなのです。

 マネタリーベースなんていうと、一般の方には分かりづらいと思うのですが、今や、その大半は日銀当座預金が占めていると言っていいのです。

 で、その日銀当座預金残高を増やすことによってマイルドなインフレを起こそうと日銀は必死になっている訳ですが...本来であれば、幾ら日銀が当座預金を増やそうと思ってもそう簡単には増えないのです。

 というのも、当座預金というのは、本来金利がゼロだからです。

 金利が付かない預金をそんなに沢山保有するということは、市中銀行にとっては資金の運用方法が極めて稚拙だということになり、普通はあり得ないのです。

 従って、日銀が何もしないで手を拱いていては、本来年間に80兆円近くも日銀当座預金が増えるなんてことはないのです。

 しかし、実際には、ここ3年間ほど日銀が宣言したとおり日銀当座預金は増えています。何故でしょうか?

 答えは、日銀が、日銀当座預金に0.1%の金利を付けてあげているからです。

 つまり、本来金利がゼロのところ、0.1%の金利を付けて上げることによって年間80兆円ほど日銀当座預金を増やす政策に協力させているのです。

 ここまでのことはご理解頂けたでしょうか。

 もしご理解頂けたら、日本が欧州のようにマイナス金利政策を採用することが困難であることは容易に想像が付くと思います。

 というのも、もし市中銀行が日銀に預けている預金に金利が付かないどころか、逆にマイナスの金利が課せらられれば、市中銀行は損を被るからです。

 ですから、もし、これまでに貯め込んできた日銀当座預金の全てにマイナスの金利が適用されるとなれば、市中銀行は、その大半を即座に引き出してしまい...そうなると、日銀当座預金イコールマネタリーベースは急減してしまうでしょう。

 そんなことこれまでの政策を撤回しない限りできませんよね。

 だから、事情通にとっては、日銀がマイナス金利政策を採用すると言われても、どういうことか理解に苦しむわけです。

 では、日銀は何をしようとしているのでしょうか?

 日銀のサイトには次のように説明されています。

 「金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。」

 具体的には...

 日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じて、プラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する(別紙)。


 お分かりでしょうか?

 今回、全ての日銀当座預金にマイナス金利が課せられる訳ではないのです。

 別紙の内容をみてみましょう。

 3段階の構造は、(1)基礎的残高と(2)マクロ加算残高と(3)政策金利残高に3つから成り、(1)の基礎的残高とは、既往の残高を意味し、これまでどおり0.1%の金利が付くのです。

 (2)のマクロ加算残高の細かい内容は必ずしも明確ではありませんが、年間80兆円のペースでマネタリーベースが増えるのに応じて増加することが予想されます。で、この部分に対しては、金利がゼロになる、と。

 そして、(3)の政策金利残高に対してのみ今回のマイナス金利が適用されるというのですが、政策金利残高とは、(1)の基礎的残高と(2)のマクロ加算残高を上回る部分とされています。

 なんとなく、日銀が何を考えているのか分かりかけてきたのではないでしょうか。

 いいでしょうか。

 マイナス金利が適用されるとは言っても、それは政策金利残高に対してのみであるので、日銀の年間80兆円のペースでマネタリーベースを増やす政策を阻害しない範囲で適用されるのに過ぎないと言っていいでしょう。

 だとすれば、マイナス金利を適用するとは言っても、殆どアナウンスメント効果しかないのではないでしょうか。

 つまり、マイナス金利を適用するとはいっても、それによって今ある日銀当座預金が一度に沢山引き出され、市中に資金がどっと出回るなんてことは期待できないのです。

 では、一体なんのために?

 何かをしないと、無能に思われるので、だから何かをやったというだけのことではないでしょうか。

 そういえば、黒田総裁は、先日、何でもやると言っていたのです。


以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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