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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

為替介入ができない理由

 円が1ドル83円台を付け、為替介入を求める声が強まっているようです。

 まあ、それにしても最近、非常識な論調が目立ちます。先ほどスパモニをみていたら、あの森永教授が、何故今円高なのかを解説していましたが、その解説を聞いていたらアホらしくなりました。

 リーマンショック以降、米国やヨーロッパはマネタリーベースを倍増させたが、日本の場合には1割ほどしか増加させていない。つまり、市場に出回るドルやユーロの量は急増しているのに、日本の円は殆ど増えていないので、円が強くなるのは当然だ、と。そして、この円高を食い止めるには、日銀がもっともっと円を市場に供給すべきなのだ、と。

 よくこの程度の知識で教授をやっているものです。そして、またこの森永氏に話をさせるテレ朝のレベルとは。


 確かに米国の場合、リーマンショック後にマネタリーベースが、それ以前の2.5倍ほどまでに拡大しているのは事実ですが、それは単に、市中銀行などの準備預金が増大しているだけの話で、実際に世の中に出回るお金が増えているというわけではないのです。

 それに、仮に世の中に出回るお金が増えたからといっても、そのことが直ちに為替相場に影響を及ぼすものではないのです。為替相場に影響を及ぼすのは、飽くまでも為替市場における需要と供給の関係なのです。

 その辺のことを分かっていないのでしょうか。


 まあ、でも、そのことはおいといて‥

 為替介入を求める声が強まっています。

 では、実際に為替介入は行われるのでしょうか?

 私は、その可能性は小さいと判断しています。

 何故か?

 それには、大きく二つの理由があるように思われます。一つは、為替介入に対する米国の態度です。

 恐らく、米国は日本が為替介入に出ることに強く反発することでしょう。何故ならば、米国では依然として失業率が高い水準にあり、また景気の減速懸念が強まっているからなのです。そうしたなかで輸出を武器として雇用の回復を図りたい米国としては、弱いドルを歓迎しているわけですから、そうした動きに対抗する日本の為替介入を許す筈がありません。

 でも、もちろん、日本政府がそれでも介入するのだ、と決断すれば介入ができないわけでもありません。しかし、9月には、日米首脳会談が予定されているではありませんか。そうでなくても、基地問題などで負い目がある菅総理が、米国の意向を無視することなどできるわけはない、と。だから、菅総理の発言も急に元気がなくなっているというわけです。

 為替介入がないと考える第二の理由は、仮に日本が独自に為替介入を行っても、その効果が殆どないと考えられるからです。それどころか、もし為替介入をやっても円高が進むとなったら逆効果になってしまうことも考えられるわけです。だったら伝家の宝刀は抜かない方がいいということになるわけです。

 今、為替介入を求める人たちは、為替介入の効果など殆ど考えていないように見受けられます。ただ、少しばかりヒステリー状態になっているだけだ、と。

 私が、こんなことを言えば、6年ほど前までは大規模な為替介入を行っていたではないかという人がいるかと思います。

 確かに我が国は、2004年の3月までの数年間において、大規模な為替介入をした経験があります。今は島根県知事になっている溝口氏が財務官をやってた頃の話です。

 では、この頃何故介入が認められたのか?

 それは、米国が景気の悪化を懸念して超低金利政策をとっていたからです。つまり、米国の政策金利は、景気対策のために2003年6月から2004年6月にかけて、それまでの最低レベルである1.0%にまで引き下げられていたわけなのです。

 こんなことを言えば、今は、もっと政策金利は低いではないか、ゼロ金利政策をとっているではないかと言われそうですが、その当時は、超低金利を採用しても、ドル安にはもっていきたくなかったという考えが米国側にあったのに対し、今は、ドル安を敬遠するどころか、ドル安にもっていきたいというようにスタンスが大きく変化しているのです。

 では、当時はどうしてドル安を敬遠したのか? 

 それは、もし、ドル金利が異常に低いことによってドル安が引き起こされるならば、資本が海外に逃避することを米国当局は懸念していたということなのです。つまり、海外の投資家が米国債を買わないようなことになれば、却って長期金利の上昇を招いてしまうので、それだけはどうしても回避しなければならない、と。

 で、そうしたことからすれば、日本が為替介入をしてドルを買い支えてくれれば、米国は安心して超低金利政策を続けることができる、と。

 つまり、当時は米国と日本の利害が一致していたわけなのです。しかし、今は利害は一致していない、と。米国は、失業率が途方もない水準に達しているために、雇用の回復を最優先課題に考えていることから、ドル安による多少の副作用は気にすることなどできないのです。

 ということなので、現実問題として為替介入によって円高を回避することは難しい、と。

 では、円高を回避する手段は何もないのか?

 実はあるのです。

 お知りになりたいですか?

 普通の人なら、円安に誘導するには、為替介入をすることを考える訳です。そして、為替介入をすれば、自然と外貨準備高が増加し、我が国政府の米国債保有高も増加する、と。

 実は、これと逆のことをやれば円高は食い止めることができるのです。

 つまり、日本政府が保有している米国債を売っぱらってしまえばいい、と。

 米国債を売るということは、ひいてはドルを売ることになり、そうなれば益々円高が進行するように思うでしょうが‥

 でも、それは一時的な現象です。もし、日本政府がどんどん米国債を売り続ければ、米国債が暴落し、米国はそれを見逃すことはできなくなる、と。何故ならば、国債の暴落は長期金利の急上昇をもたらし、経済回復の大きな足かせになってしまうからです。


 米国は、そこで、強いドルの有難味を感じるわけです。弱いドルも魅力的だが、急激なドル安は弊害が大き過ぎる、と。そして、そうなれば、再び米国は強いドル政策の方向に舵を切る必要が生じ、そうなれば、円高が止まるということが予想される訳なのです。

 でも、この手段、大変にリスキーです。


 最後に、為替に関するG7の共通認識を示しておきたいと思います。G7、即ち、先進7カ国の蔵相たちは、為替に関して次のような認識を共有しています。

 「為替レートは、経済ファンダメンタルズを反映すべきだ」

 今の1ドル=84円とかというレートはファンダメンタルズを反映していないと、日本は主張できるのでしょうか?

 確かに、名目レートで考えるならば、相当に円高になっていることは確かです。しかし、物価の変動率を加味した実質レートで考えると、とんでもないほどの円高にはなっていないことも事実であるのです。それに日米の関係では、構造的に日本の貿易黒字が続いているわけですから。

 だから、幾ら日本が円高であることを欧米の訴えようとしても、イマイチ説得力に欠けるわけなのです。

 その辺のところも、マスコミは報道すべきではないでしょうか?

以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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