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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

法人税減税論議

 経団連が法人税の引き下げを求め、それに対し直嶋経済産業大臣は、法人税の15%減税、来年から5%削減を打ち出しています。(もっとも財務省は冷ややかな目で見ているようですが)


 直嶋経済産業大臣は、次のような経歴を持った人です。

<直嶋正行経済産業大臣の経歴>

1945年10月生まれ
1971年 神戸大学卒業
1971年 トヨタ自動車販売入社
1980年 全トヨタ労連専従
1982年 全トヨタ労連組織局長
1991年 自動車総連副会長
1992年 参議院選挙当選(民社党)


 かつては、春闘などを通じて戦いあった経営者側が、自分に頭を下げている訳ですからさぞかし気分がいいかもしれません。

 いずれにしても、管理者側と組合側が裏で手を握っている姿は、自民党の55年体制と同じような気がするわけですが‥、政権交代が起きても、そういうことは変わらなかったということなのでしょうか。


 鳩山政権下において、あれほど消費税の引き上げに否定的な態度をとってきた民主党ですが、菅さんが財務相に就任した辺りから変化が生じています。

 それはそうでしょう。ギリシャの財政危機が世界経済をパニックに陥れ、日本も、財政再建の必要性が再認識されているからです。

 でも、それだけではありません。無駄を削れば財源はどれだけでも出てくると主張していた民主党ですが、もはやどれだけ見直しても、これ以上の財源は出てきそうにもないからです。

 つまり、今後、少しでもマニフェストに忠実な政策を実行しようとすれば、国債の発行額を増やすか、増税でもしない限り、財源の確保が不可能であることが明らかになったのです。

 しかし、これ以上の国債の増発は、どうしても避けなければならない。 もし、これからも国債を大量に発行し続けて、長期債務残高がGDP比200%を超えるような事態になれば、後々、国家財政を破綻させた張本人として名前が残ってしまう恐れがあるからです。

 だとすれば、もはや選択の余地などあるはずがなく、増税路線は不可避になってきているのです。

 しかし、そうした状況にあって、民主党は今回の参院選のマニフェストに、法人税減税について盛り込む方針だとか。

 国民には消費税増税が必要だと主張する一方で、何故、法人税だけ減税なのでしょうか?

 法人税を減税すべきだと主張する人々は言います。

 日本は、諸外国に比べて法人税が高過ぎると。そんなに税金が高ければ、企業が海外に逃避してしまう、と。


<法人税の国際比較> 2010年1月現在

米国  :40.75%
日本  :40.69%
フランス:33.33%
ドイツ :29.41%
英国  :28.00%
中国  :25.00%
韓国  :24.20%

 
<GDPに占める消費課税の割合>

米国   : 4.7%
日本   : 5.1%
フランス :10.9%
英国   :10.7%
ドイツ  :10.7%

(資料:財務省)


 確かに、法人税については、我が国や米国は群を抜いて高い水準にあると言えます。他方、消費課税の割合をみると、米国と日本は、英国やフランス、ドイツなどに比べて約半分の水準にとどまっていることが分かります。

 となると?

 例えば、ドイツや英国は、法人税の税率が低く消費課税が高いという結果になっているのですが、だとしたら、我が国の企業は、英国やドイツに本社を移したいと思うのでしょうか?

 確かに、法人税率が低いと企業にとっては有利に映り、そして、消費課税が高いということは、企業ではなく国民の税負担が大きいということで、その意味でも企業の負担は小さくなるように思えるのですが、企業にとっては本当にいいことばかりなのでしょうか?

 実は、そんなことはないのです。幾ら消費税は企業が負担するものではなく消費者が負担するものだと主張したところで、もし、消費税を増税した結果、その商品の売り上げが落ちるようであれば、増税分の実質負担は企業側にかかってくるからです。

 つまり、消費税が高いということは、企業にとっても負担がかかるということで、企業の実質的な税負担は、法人税だけで判断することはできず、消費税なども加味することが必要なのです。

 そして、そのような観点から日本企業の税負担を判断するとどうなるのか?

 本当に、我が国の企業は重い負担に喘いでいるというのか?

 全く違うと思います。

 我が国の長期債務残高(国及び地方合計)の残高は、対GDP比で180%程度あると言われていますが、それはとりもなおさず、国民や企業の税負担が低いことを物語っているのです(無駄遣いが多いことも影響しているでしょうが‥)

 次の租税負担率の国際比較の数字をご覧ください。日本は先進国のなかでは米国とともに群を抜いて租税負担率が低い状況となっているのです。


<租税負担率 対国民所得比> 2007年度(或いは2007年)

日本  :24.6%
米国  :26.4%
ドイツ :30.4%
フランス :37.0%
英国  :37.8%


 つまり、法人税率という狭い切り口でみるのではなく、租税負担率という幅広い切り口で企業の税負担率を見ると、日本の企業の実質的な税負担は、むしろ軽いとも言えるのです。

 なのに何故、法人税を下げるというのでしょうか?

 確かに、法人税率を引き下げれば、企業が喜ぶのは分かります。しかし、そもそも日本は、長期間に渡って貿易収支が黒字になっているのです。つまり、日本の企業は、国際競争力がある、と。ですから、貿易収支が赤字であり、日本企業の体力を回復させる必要があるというのであれば話は別なのですが、実際には全く逆の状況になっているのです。

 それに、法人税率が高いと企業が国外に脱出してしまうというのであれば、アメリカにあるトヨタの工場は、何故日本と同じように法人税率が高い米国に進出したのでしょうか?

 そして、また、何故アメリカのトヨタは、アメリカから抜け出して工場をヨーロッパに移すようなことをしないのでしょうか?

 つまり、企業は、納める税金を少しでも少なくしたいばかりに、法人税率を下げないと‥、と政府や国民を脅かしているだけの話でしょう。


 それに法人税率を引き下げると、デフレが酷くなる可能性があるのを彼らは承知しているのでしょうか?

 何故かといえば、法人税率が下がる分、企業は製品価格を安くする余力が発生するからです。

 逆に、法人税も消費税も引き上げることになれば、物価は上がり、菅さんの悲願であるデフレ脱却ができることになるのですが‥。

 平成22年度における税収見込みは、37.4兆円で、そのうち法人税は、約6兆円に過ぎません。


<平成22年度 税収見込み>

所得税 12.6兆円
法人税  6.0兆円
相続税  1.3兆円
消費税  9.6兆円
酒税   1.4兆円
揮発油税 2.6兆円
印紙収入 1.0兆円

合計  37.4兆円


 減税及び補助金によって助けられた自動車業界は、さらに法人税の減税まで政府にお願いして、少し厚かましいとは思わないのでしょうか?

 法人税率を減税したところで、日本企業の技術力や商品開発力が飛躍的に向上するものでもないでしょう。それなのに、法人税の減税が、成長戦略に入るというのは如何なものでしょうか。

以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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