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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

不均衡是正と円高

 はい、貴方に質問です!

 今回の金融サミットについて、どう思いますか? そう、ピッツバーグで開かれたG20の金融サミ
ットです。

 私、どうも納得がいきません。何故かって、

「各国首脳は、金融・経済危機を招いた世界経済の不均衡是正に向け各国の政策を相互評価す
る枠組みを新設することでも合意」

なんてことが報道されているからです。

 


 いいですか、世界のリーダーたちは、世界経済の不均衡が金融危機や世界同時不況を招いた
なんて、言っているわけです。おかしいと思いませんか?

 世界経済の不均衡の問題とは、米国は、恒常的に経常収支が赤字となっている一方で、中国
や日本、ドイツなどは恒常的に経常収支が黒字となっているという構造問題のことです。中国の
黒字が目立ってきたのは近年のことですが、この世界経済の不均衡問題は、もう数十年も続い
ている問題なのです。

 それが金融危機の原因だなんて、どう考えてもおかしい。金融危機を起こしたのは、欧米の金
融機関やヘッジファンドが投機に走り過ぎたからであって、この世界経済の不均衡の問題は直接
の関係はないのです。もちろん、世界経済の不均衡の問題は、一方で、日本や中国などが米国
への輸出に過度に依存した経済構造になっていることを意味しているので、もし、そうでなけれ
ば、日本経済は昨年秋以降の輸出の急減による痛手を受けることもなかったと言うことはできま
す。

 しかし、仮に、日本と米国の貿易関係が、黒字でもなく赤字でもないような状態にあったとして
も、米国の景気が悪くなれば、当然日本からの輸入も減るわけなのです。つまり、仮に、日本が米
国に対して輸出超の状態になっていなくても、今回のような金融危機が起きれば、輸出は急減
し、日本は痛手を受けたであろう、ということです。

 だとすれば、今回の金融危機や世界同時不況を世界経済の不均衡問題とを関連付けることは
不自然なのです。

 では、世界経済の不均衡問題は解決しなくてもいいのか?
  
 そんなことはありません。それはそれで徐々に解決していくことが必要であり、また、米国の住
宅バブルが弾ける前までは、G7においてもそういう認識ができていた訳です。

 でも、結局、世界経済の不均衡問題は、各国の思惑により放置されたままになっていたので
す。何故か?

 その方が、米国にとっても、日本やドイツなどにとっても都合がよかったからです。貿易不均衡
を改めるということは、基本的に米国への輸出依存度を落とすということになり、それは日本やド
イツの輸出企業にとっては有難くない話であったからです。一方、米国にしても、確かに経常収支
の赤字が増大することは歓迎すべきことではなかったわけですが、それでも海外から米国に資本が流入し、米国経済が順調に成長を続けることができるのであれば、そうした流れに冷や水を浴
びせる必要はないと考えた、ということです。

 それに、そもそも現在の不均衡は、何も誰かから強制された結果ではなく、経済民主主義のル
ールに従った結果なのです。つまり、米国の消費者が中国や日本の製品を買いたいと思うから、
米国の経常収支が赤字になっただけの話ですし、また、そうして借金国になった米国に対し、中
国や日本は、いくら借金大国とはいえ、やっぱり米国は世界一の経済大国だからと考えたから、
いくらでも米国に投資をしただけの結果なのです。

 もし、日本や中国が、米国に対する信認度を落とすことがあったら、米国への資本の流れはもっ
と少なくなっていたはずです。そして、そうなれば、当然のことながらドル安が進み、その結果、米
国の製造業は、今ほどは国際競争力が落ちることはなく、結果として経常収支の赤字も今よりも
小規模で済んだはずだと思うのです。

 
 では、何故、今、この世界経済の不均衡問題を持ち出したのか?

 それは、アメリカが中国の勢力に押された結果なのです。今のアメリカ経済が回っているのは、
一つには、海外からの資本流入があるからです。いくら経常収支ベースで毎年8000億ドルほど
の赤字を計上しようとも(最近は減少気味ですが)、それを補う資本の流入があるので、経済が
回っているのです。もし、この海外からの資本の流れが滞ってしまうと、たちどころに金利が上昇
してしまい、経済に大打撃を与えることでしょう。

 そして、ご承知のとおり、米国に対し大量の資金を供与しているのが、中国であり日本であるの
です。

 米国は、日本が、保有する米国債を売り払うなんてことはないと高を括っています。それは、日
米には固い信頼関係があるからです。というよりも、日本には米軍が駐留しているではありませ
んか。日本が、アメリカの気に障るようなことをする度胸はない、と思っているのでしょう。

 他方、中国はどうでしょうか。人口13億人の中国。一党独裁の中国。人権が尊重されない中
国。軍事大国の中国。それに急速に経済成長を遂げている中国。その中国が大量の米国債を保
有しています。つまり、米国は、中国から借金をしている、と‥。

 で、その中国が、いろんなことをことあるごとに言うのです。国債を発行し続けてインフレになる
ようなことはないだろうな、とか、ドルが暴落するようなことはないだろうな、とか。日本のように米
国の言うことをいつも聞くとは限りません。もし、何らかの理由で中国が米国債を大量に売り払う
ようなことになれば‥、そうした恐れを米国は感じているのでしょう。

 今までナンバーワンだと思っていたのに、いつの間にか中国という金貸しにお金を借りるような
立場になってしまった、と。これは何とかしなくては‥、と。

 だからこそ、少しでも海外から借金をすることがなくて済むように、世界経済の不均衡是正を訴
えているのです。海外は、内需振興に努め、米国製品をもっと買うようにしろ、と。

 で、世界経済の不均衡を是正するとなれば、当然のことながら、これから先緩やかにドル安が
進むことを容認するということになります。急激なドル安は、資本の逃避を招き危険すぎますが、
緩やかなドル安なら歓迎だ、と。そういうシナリオが米国政権の頭の中にできつつあるのではな
いでしょうか。

 そして、そういう雰囲気が日本にも伝わってきていればこそ‥

 何のことかお分かりですか?

 日本は、政権が交代しました。そして、財務大臣には藤井さんが就任しましたね。そして、その
藤井大臣は、国際通貨研究所の行天理事長を顧問に付けたではありませんか。

 私、最初は、何で今頃‥と思いました。

 このぎょうてんさんという方、いい人です。国際金融局の審議官をしていたとき、私は部下として
仕えたことがあります。エリート臭くないところがいいのです。世間では通貨マフィアとして名前が
知れているのでしょうが‥

 まあ、そんな方ですが、何で今頃?

 それは、藤井大臣が、かつてのプラザ合意のようなことが近いうちに起こるかもしれないと感じ
たからこそ、この人を呼んだのではないか、ということです。


 何となくそういうムードが出来上がりつつあり、そしてドルは、90円を割り、89円台に突入してい
るのだと思います。


  以上

最新の小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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