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第359回 「アベノミクスを成功させる会」の提言 (3/3)

(2/3)からの続き

 そもそも、消費税とは「高所得者層」にとっては大した負担にならず、「低所得者層」にとっては厳しい税金である。消費税は所得税や法人税とは異なり、所得格差を拡大する効果がある。
 現在がデフレ期ではなかったとしても、消費税増税はその逆累進性と、スタビライザー(安定化装置)としての効果がないという点から、日本にとって不適切であると断ぜざるを得ないのだ。消費税を推進する政治家は、国内の所得格差を拡大することを目指しているとしか思えない。
結局、「アベノミクス成功させる会」もまた、財務省の傘下に落ち、「アベノミクスを失敗させた会」と化したわけである。
「成功する会」の提言書提出以降、消費税の再増税を巡り、与野党の攻防が激しくなっている。菅義偉官房長官は5月22日、消費税再増税の可否を判断する時期について、伊勢志摩サミットの議論を踏まえ、安倍晋三首相が適切に判断する考え方に変わりないとの認識を示した。一方、民進党の岡田克也代表は、再増税した上で、景気対策のため財政出動を求めた自民党の提言を批判。
改めて、「成功させる会」の消費税に関する記述を詳しく見てみたいのだが、提言書は、

『現下の日本経済の最大の問題は、消費の低迷にある。消費は2014年4月の消費税率引上げ(5%→8%)で落ち込んで以来、一向に回復の兆しを見せず、2015年10‐12月期にはトレンドから底割れするという事態にまで陥った。』

という文章で始まる。
そして、来年4月に予定している消費税再増税について、

『その一方で、来年(2017年)4月には、消費税率の再引き上げ(8%→10%)が予定されている。現下の経済状況を考えれば、これを再延期すべきだという主張が出てくるのは当然であり、有力な選択肢であることは間違いない。
ただ、単純に延期を表明するだけで経済が好転する訳ではないことは、一昨年の延期決定から今日までの状況を見れば明らかである。恐らくその要因は、当初の引上げ(5%→8%)時の財政出動が十分でなかったこと、年金生活者や低所得者の実質所得が低下したこと、そして「いずれ消費税率は上がるのだから」という予想から消費が抑制された面があること等にあったと考えられる。また、単純延期する場合、前回延期の際に安倍総理が表明した「リーマン・ショックや大震災といった事態が生じない限り、必ず実施する。」との公約との関係が問題となる。更に、「アベノミクスは失敗した。」との野党の批判に上手く反論できるのかどうかも問われることになる。』

と、分析。上記を受け、消費税について、

『消費税率引上げ(8%→10%)は、予定通り2017年4月から実施し、当面10%で打ち止めと宣言。』

という提言をしているわけだ。
整理すると、消費税増税の理由として、
(1) 財政出動すれば、消費増税の影響を緩和できるはず
(2) 延期では、将来的な増税予想から消費が抑制されてしまう
(3) 単純延期したら、公約違反
(4) アベノミクスが失敗したと野党から批判される
と、主に四つを挙げているのである。
(1)は先述の通り、明確な間違いだ。減税されない限り、終わりない形で続く消費増税の悪影響を、短期(三年)の財政出動でカバーできると思う方がおかしいのだ。さらに、消費税は逆累進性があり、国内の所得格差を拡大する悪しき税金である。
その上で、上記の(2)から(3)を、巧くクリアする手法がある。すなわち、
「現在がリーマン。ショック級の事態であると認め、消費税増税を『凍結』し、アベノミクスは14年4月の消費税増税が理由で失敗した(あるいは「成功を収めていない」)」
と、総理が説明してしまえばいいのだ。。
「リーマン・ショック級の事態」は、そもそも抽象的な表現であるため、何とでも説明できる。さらに、延期ではなく「凍結」であれば、将来的な増税予想の問題が解消される。
そして、アベノミクスの失敗の責任を「三党合意に基づく消費税増税」に押し付けてしまえば(事実である)、民進党も批判しにくい。
増税を凍結した上で、デフレギャップを埋める10兆円規模の財政出動を三年間継続すれば、日本経済はようやくデフレから脱却できる。
ところが、「成功させる会」は、消費税増税の「凍結」には踏み込めず、「増税後の凍結」という、問題解決に至らない提言をした。なぜなのだろうか。
それ以前に、結局のところ、消費税率は何のために上げるのだろうか?
上げる必要はない。というよりも、デフレ期に消費税を増税してはならない。
というのが、正しい解なのだ。
大本の議論から目を背け、財務省主導の消費税増税が「目的化」され、過去五年間の政治は動いてきた。別に、消費税を上げても構わないが、それは「経世済民」、すなわち国民が豊かになるという政府の目標を達成できる場合のみである。
ところが、現在の消費税議論では、「消費税を上げる」という「手段」が目的化してしまっている。結果、日本のデフレは継続し、国民は貧困化し、ついに増税を巡る狂った議論が行き着くところまで行き着いたのが、現在なのだ。
総理がいかなる判断を下すのかは、現時点では分からない。いずれにせよ、日本国民は「狂った議論」の背景にあるものを、正しく認識する必要がある。さもなければ、我が国は永遠に「手段が目的化している」状況から抜けられない。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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