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第359回 「アベノミクスを成功させる会」の提言 (2/3)

(1/3)から続く

もっとも、「成功させる会」は、肝心要の消費税については「増税して凍結」という、間違った提言となっている。提言書では、消費税増税について、現在の消費低迷の原因であることを認め、さらにデフレギャップが10兆円近くあることも認識している。
 アベノミクスを成功させる会では、先日、内閣官房参与である藤井聡京都大学大学院教授が、安倍政権が掲げた名目GDP600兆円の目標を達成するために、

●増税延期
●政府は「所得ターゲット」政策を改めて宣言すべし
●政府はデフレ完全脱却こそが最大の財政健全化策、と宣言すべし
●「脱出速度」確保のための、3年限定の積極財政を
●デフレ脱却後は、PBでなく債務対GDP比を基準とした中立的財政を

を提言した。藤井教授の提言通りにしておけばいいものを、それでも「予定通り増税」とやってくるわけだから、話にならない。
 本質的におかしいのだが、少なくとも「成功させる会」の山本会長らは、
「デフレは総需要の不足である」
 を、理解しているはずなのだ。総需要の不足が問題である以上、財政出動による需要創出は当然として、民間最終消費支出という需要を縮小させる消費税増税は「決してやってはならない」政策になる。
 総需要の拡大を訴えながら、総需要縮小策を提言するのでは、整合性が全くない。
「成功させる会」の提言書では、現在の景気低迷について、

『当初(2014年)の引上げ(5%→8%)時の財政出動が十分でなかったこと、年金生活者や低所得者の実質所得が低下したこと、そして「いずれ消費税率は上がるのだから」という予想から消費が抑制された面があること等にあった(「提言」より引用。以下同)』

 と、分析されている。
 14年の増税の際には、財政出動が不十分だったため、消費の長期低迷を招いた。ということは、次なる増税の際には、十分な財政出動により、消費の落ち込みを防ぐことができる、という理屈だ。
 根本的に間違っているわけだが、消費税増税の影響は無制限に続く。それに対し、補正予算による財政出動は一時的措置に過ぎない。
永続する悪影響を、一時的な給付金でカバーできるはずがない。
 今回の提言では、消費増税の悪影響を軽減するために、財政出動を「三年」継続するように求めている。とはいえ、断言しておくが、上記の提言に従い、16年度にある程度の財政出動を実施し、17年4月に増税をすると、途端に財務省配下のマスコミから、
「財政破綻! 国の借金で破綻する!」
 の大合唱が起き、17年度、18年度の財政出動は削減され、消費税増税「凍結」の約束も破棄されることになる。
 財務省の官僚が数百人体制で政治家、マスコミ、学者たちに「ご説明」に回り、再び「増税やむなし」「緊縮やむなし」の空気が作られ、再び消費税増税、財政支出削減の緊縮財政が始まる。
 財務省にしてみれば、とりあえず17年4月の増税を実現できれば、
「悪影響を防止するための財政出動」
 や、
「その後の消費増税の凍結」
 については、後から何とでもできると考えているのだろう。
 財政出動は16年度のみで、17年4月の増税が実現され、その後、緊縮に転じるという未来が、間違いなく待ち受けている。
 逆に言えば、上記の提言から「増税を実施する」の部分のみ回避できれば、全体的にはデフレ脱却のために適した政策ということになる。財務省は消費税増税と引き換えに、その他のデフレ対策については認めた、という話なのだ。

(3/3)へ続く

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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