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第355回 日本国の正しい成長戦略(2/3)

需給関係とは、所詮はバランスだ。割合として「需要>供給能力」となっているならば、立派な「成長産業候補」である。需要が増えていなかったとしても、過去に供給能力が大きく削減され、あるいは今現在も減りつつあり、「需要>供給能力」になっているならば、間違いなく「成長する環境」の産業分野に該当する。
 ちなみに、成長する「環境」と書いているのは、もちろん「需要>供給能力」であったとしても、正しい施策が打たれなければ、生産される付加価値が増えていくとは限らないためだ。筆者は「成長する環境」になっている産業分野は断言できるが、その産業が成長するかどうかは、これは事前には明言できない。
 ケインズではないが、将来は常に不確実なのである。不確実であったとしても、将来の豊かさのために、今、企業経営者や国家がリスクを負って投資をする。その種の「根性」を、ケインズは「アニマルスピリット」と名付けた。
 筆者は「野獣の魂」と訳しているが、バブル崩壊までの日本の経営者や政治家は、このアニマルスピリットを持っていた。だからこそ、日本は経済成長を続けた。
 ところが、バブル崩壊後と橋本緊縮財政以降のデフレにより、日本経営者や政治家はすっかり牙を抜かれた獣と化してしまった。将来のための投資をしない資本主義国が、経済成長できるはずがない。
 筆者が言論活動を続けている目的の一つは、我が国の経営者や政治家にアニマルスピリットを取り戻してもらうことにある。
 それはともかく、今後の我が国では「需要>供給能力」というインフレギャップに陥っている分野こそが、成長する可能性が高い。厳密には、
(1)インフレギャップに陥っている分野
 及び、
(2)インフレギャップを埋めるための投資に関連した分野
 この二つこそが、日本の成長産業(厳密には「候補」)なのである。
 それでは、インフレギャップになっている分野とは、具体的にどこだろうか。簡単である。現時点で、人手不足になっている、あるいはなりつつある産業分野になる。
 具体的には介護、医療、保育、農業、運送、そして、政権が公共インフラの整備というまともな政策を打てば、土木・建設の人手不足感も高まっていくことになる。(現在は、安倍政権が公共事業を民主党政権期の水準にまで引き下げたため、人手不足がある程度解消してしまったが)
 要するに、現時点ではまだ「ヒト」が動かざるを得ないサービス分野こそが、成長産業なのだ。そして、これらの産業分野において、人手不足を解消するための生産性向上を実現する「技術」に関連した産業もまた、間違いなく今後の成長産業になっていく。
 安倍政権は2016年4月19日の産業競争力会議で、成長戦略の分野別目標値を発表した。一部は正しいのだが、全体的には上記の「需要>供給能力」を意識しているとは言えず、それどころか産業開発会議にもぐりこんだ民間企業の経営者たち(「民間議員」ではない)のビジネスを拡大するための戦略までもが含まれていた。
 安倍総理が発表した成長戦略における重点分野には「人工知能やロボットなどの先端技術」「サービス産業の生産性向上」という、
(1)インフレギャップに陥っている分野
(2)インフレギャップを埋めるための投資に関連した分野
 が入っているのだが、「公共分野での民間資金活用」つまりはPFIやコンセッションまでもが含まれてしまっている。さらに、安倍総理大臣は「人材確保」を理由に、
「第四次産業革命を担う優秀な人材を海外から呼び込みたいと思います。このため、永住権取得までの在留期間を世界最短とします。『日本版高度外国人材グリーンカード』を導入します。」
と、発言した。
 要するに、インフレギャップ(人手不足)に陥っているサービス分野の生産性向上にかこつけて、公共サービスの民間への切り売り(コンセッション、PFI)や外国移民拡大を狙っているとしか思えないのだ。
 日本のサービスの分野の生産性向上は、日本国民の手で成し遂げられるべきだ。そうすることで、ようやく日本国民の実質賃金が上昇に向かう。
 また、別に生産性向上のための技術開発投資において、「海外の優秀な人材」の力を借りることを全面的に否定する気はない。とはいえ、何故に「永住権」を与えなければならないのだろうか。意味が分からない。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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