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第353回 デフレ脱却に向けた三つの論点(3/3)

そもそも、2012年の安倍総理はデフレ脱却策として、「金融政策」に加え、
「インフラ投資を中心とする財政出動」
「スーパーコンピューター京や再生医療など技術への投資という成長戦略」
 と、三つの政策を掲げま。上記三つを「三本の矢」と評し、アベノミクスと呼ばれるようになったのだ。
 ところが、政権が発足した途端、「成長戦略」は「構造改革」へと姿を変え、2014年度以降は「超緊縮財政」になってしまった。
「金融政策+財政政策+成長戦略」
 が、
「金融政策+緊縮財政+構造改革」
 へと変貌を遂げてしまったのだ。
 要するに、
「デフレは貨幣現象である。日銀副総裁の岩田教授も、内閣官房参与の浜田教授もそう言っている。ならば、デフレ脱却は日本銀行にお任せし、財務省が望む緊縮財政、竹中平蔵氏ら構造改革派が望む構造改革を推進しよう」
と、ひたすらインフレ対策(緊縮財政、構造改革)を実施してきたのが過去の安倍政権なのである。つまりは、安倍政権は財務省、構造改革派という「声のでかい」あるいは「権力がでかい」勢力のために、本来は「国民のため」であったアベノミクスの中身を入れ替えてしまったのだ。
 この手の議論が国会でなされるべきだと思うわけだが、現実には「アベノミクスは失敗した」「いや、成功した」と、抽象的な議論ばかりが行われており、情けない限りだ。
 14年の消費税増税後に、筆者は「デフレにはいかなる総理大臣も勝てない」と何度も書いたが、現実に17年4月の再増税は「見送り」になる可能性が高まってきている。

『2016年4月7日 産経新聞「民進党、消費税再増税で新たな見解発表へ 先送りの方向」
http://www.sankei.com/politics/news/160407/plt1604070046-n1.html
 民進党は7日の執行役員会で、平成29年4月の消費税率10%への引き上げに関する新たな党の見解をまとめる方針を決めた。行政改革など再増税の前提条件が満たされていない上、今の経済情勢下での引き上げは困難とみて再増税先送りの方向になる可能性が高い。
 見解は党内で議論し、衆院北海道5区補欠選挙(24日投開票)前に発表する。江田憲司代表代行は執行役員会に先立つ記者会見で、再増税に関して「身を切る改革という前提が満たされていない。軽減税率は逆進性緩和にならない。おのずと結論は明らかだ」と先送りを示唆。「近いうちに岡田(克也)代表から党の見解を示したい」と述べた。
 岡田氏はこれまで増税の是非をめぐり賛否が分かれる党内世論に配慮し、態度を明確にしていない。共産など野党3党は民進党を加えた4党で再増税凍結法案の提出を目指している。』

 消費税増税の「見送り」の政治的な空気が、着々と醸成されようとしているのだ。今後のポイントは、三つ。

一. 消費税増税の見送りが「延期」か「凍結」か「減税」か

もちろん、現在の日本にとって最も適切な政策は「消費減税」である。長期で、国民の可処分所得を増やす必要があるのだ。

二. 財政出動(補正予算)について、長期の需要が見込める公共インフラ、技術への投資に踏み込めるか。

 「子育て世代への給付金」などと、例により効果が少なく、しかも短期で終わる「一時的な急場しのぎの財政拡大」をどれだけやったところで、我が国のデフレ脱却は果たせない。

三. プライマリーバランス目標の破棄

とにもかくにも、この「プライマリーバランス黒字化目標」こそが諸悪の根源だ。目標破棄が政治的に難しいならば、
「インフラが残る建設国債は、プライマリーバランス目標から外す」(信じられないことに、今は入っている)
「特別会計や特別基金を設置し、プライマリーバランスと無関係に財政の継続的な拡大を可能とする」
 といった対応もできないことはないが、いずれにせよ「プライマリーバランス目標」はそもそも財政政策的におかしい。何しろ、「財政健全化の定義」はプライマリーバランスの黒字化ではない。政府の負債対GDP比率の引き下げになる。 
 というわけで、
「プライマリーバランスではなく、政府の負債対GDP比率の引き下げという、より真っ当な目標に変更する」
 と、政策目標を入れ替えてしまうことも、有効な手段である。
 いずれにせよ、民進党までもが増税先送りに転じた。日本国経済の運命の手綱を握っている政治家には、上記「論点」を理解した上で、建設的な「デフレ脱却の議論」を進めてほしいと、切に願うものである。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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