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第340回 間違った学説を唱え、頬かむりする人々(3/3)

というよりも、国内における投資先がなく、民間がおカネを借りないからこそ、長期金利が0.23%に超低迷してしまっているわけだが。
 無論、国境を越えた資本移動が制限されていたとしても、トリクルダウンが成立するかどうかは分からない。減税で利益を受けた富裕層や企業が、国内に投資せず、増加した所得を「預金」として抱え込んでしまう可能性もある。
「いや、貯蓄が増えれば金利が下がり、国内に投資されるので、トリクルダウンは成立する」
などと学者は反駁するのかも知れないが、長期金利0.23%であるにも関わらず、国内の投資が十分に増えないデフレに陥った島国が、極東にあるのを知らないのだろうか、という話なのである。現在の日本は設備投資が増えず、企業の内部留保までもが史上最大規模に膨れ上がっている。
お分かりだろう。トリクルダウンが仮に成立するとしても、その場合は、
「国境を越えた資本の移動が制限されている」
「デフレではない」
 と、最低二つの条件が必要になるのだ。ところが、現実の日本はグローバル化を推し進めつつ、同時にデフレである。トリクルダウンが成立する可能性など、限りなくゼロに近い。
 もっとも、竹中氏は別に、
「トリクルダウンはあり得ない。申し訳なかった」
 というニュアンスで、トリクルダウンを否定したわけではないだろう。
 トリクルダウンなど起きえない。政府の政策で富が「滴り落ちる」のを待っている方が悪い、というニュアンスで「トリクルダウンはあり得ない」と語ったのだ。すなわち、格差肯定論としてのトリクルダウンの否定なのである。
 そもそも、トリクルダウン仮説は民主主義国家において、一部の富裕層や法人企業に傾注した政策をする際、有権者である国民に「言い訳」をするために編み出されたレトリックだ。
「富裕層や大手企業を富ます政策をやるが、いずれ富は国民の皆さんに滴り落ちる」
 と、富裕層優遇策を正当化するわけである。
 もっとも、トリクルダウンは別に民主主義国の専売特許というわけではない。中華人民共和国の鄧小平が改革開放を始める際に連呼した「先富論」も、まさにトリクルダウン仮説そのものであった。
 つまりは、政治家がグローバリズム、新自由主義的な構造改革、緊縮財政を推進し、国民の多数を痛めつける際に「言い訳」として持ち出されるのがトリクルダウン仮説なのである。
竹中氏がトリクルダウンを否定したのは、構造改革を推進するに際し、国民に言い訳をする必要性を感じなくなったのか。あるいは、言い訳するのが面倒になったのかのいずれかであろう。
「トリクルダウンなんてあるわけがない。政府の政策で、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧困化し、それで構わない。いずれにせよ、負けた者は自己責任」
 と、一種の開き直りで「トリクルダウンはあり得ない」と竹中氏が発言したと、筆者は確信しているわけである。
 それにしても、竹中氏はこれまでは「トリクルダウン」が成立すると、著作や発言で繰り返してきたわけだ。トリクルダウンが、実際には起きないことをようやく認めたが、別に過去の自身の発言について説明するわけでもない。完全に頬かむりだ。
 政治家、学者、官僚。誰もが頬かむりし、過去の自身の言葉に責任を持たない。日本の政治は、病んでいる。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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