FX外国為替情報のKlug(クルーク)
為替、海外投資でハイリターンを得るためのニュース、レポート、コラムを掲載

第188回 財政ファイナンス(1/3)

 緊急経済対策が閣議決定され、アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却路線が始まろうとしている。アベノミクスの肝は、財政政策と金融政策のパッケージという、筆者が本連載でしつこいほど繰り返してきた「通貨を発行し、借りて、使え」である。日本銀行が国債を買い入れ、通貨(日本円)を発行する。政府が国債で発行された日本円を借り入れ、国内で所得(=雇用)となるように使う。
日本銀行が国債を買い入れる以上、景気対策にあたり政府の実質的な負債額は増えない。また、子会社である日本銀行が国債を保有するわけだから、利払いも実質的には不要になる(一応、政府は日銀保有の国債の金利を支払っているが、決算後に国庫納付金として返還されている)。
政府の実質的な負債は増えず、さらに「直接的」に国民の雇用や所得が生まれる。代償は唯一、インフレ率の上昇だけだ。逆に言えば、インフレ率を上昇させることが目的のデフレ対策として、「通貨を発行し、借りて、使え」以外に、効果がはっきりと確認された政策は存在しない。
それにも関わらず、日本を含めた「世界中の国々」において、「通貨を発行し、借りて、使え」は「財政ファイナンス」であるとして「禁じ手」とされてきた。とはいえ、なぜそもそも財政ファイナンスが「禁じ手」なのだろうか。
財政ファイナンスとは、政府の減税や公共事業などの財源として、中央銀行の通貨発行(=国債買取)を用いることだ。まさに「通貨を発行し、借りて、使え」であるが、実は「財政ファイナンス」という言葉を使う人のほとんどが、この用語の意味を正しく理解していない。結果的に、財政ファイナンスと聞くと、途端に、
「そんなことをすると、政府の信用が落ちるからダメだ!」
「財政ファイナンスは政府に対する金融市場の信頼性を落とすからダメだ!」
 と、まことに定性的、抽象的な否定論が返ってくるわけである。バカバカしい限りだ。財政ファイナンスが「禁じ手」とされているのは、単にインフレ率が上昇してしまうためだ。
 財政ファイナンスの「真逆」の概念である「中央銀行の独立」が、なぜ声高に叫ばれていたのかを考えてみればいい。もちろん、インフレ率を抑制するためだ。政府の要望に従い、中央銀行が言われるままに国債買入と通貨発行を行った日には、当然ながらインフレ率が健全な範囲を超えて上昇してしまう。
 戦後の世界経済は、基本的には「インフレ」に苦しみ続けてきた。特に、80年代以降のアメリカは「失業率とインフレ率」が共に上昇する、スタグフレーションに悩まされていたのである。
 結果的に、中央銀行の役割は「いかに物価を抑制するのか?」に絞られていた。中央銀行がインフレ率を抑え込むためには、政府に命じられるままに国債を買い入れ、通貨を発行するわけにはいかない。すなわち、財政ファイナンスは実施してはならないのだ。
 というわけで、インフレ対策として、戦後の中央銀行は「独立的」であるべきとされ、財政ファイナンスは「禁じ手」とされたのである。すなわち、財政ファイナンスという政策に反対する人は、
「そんなことをすると、インフレになる!」
 と反論しなければならないはずなのだ。

 ところが、現実の日本はデフレである。物価上昇ではなく、物価下落に悩み続けているのだ。財政ファイナンスについて「インフレになるからダメ!」などと反論した日には、日本国民のマジョリティから、
「何を言っているんだ? こいつは?」
 と思われてしまうだろう。結果的に、財政ファイナンスに反対する人々は、まことに抽象的な「イメージ論」で論じざるを得ないわけだ。

『2013年1月9日 日本経済新聞「日銀総裁「財政ファイナンスの懸念ないように」」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL090LM_Z00C13A1000000/
日銀の白川方明総裁は9日夕に開かれた経済財政諮問会議に出席し、「日銀が財政ファイナンス(赤字の穴埋め)をしているという懸念をもたれないように、財政再建に取り組むことが重要だ」と語った。甘利明経済財政・再生相が会議終了後の記者会見で明らかにした。
 白川総裁は「アンケート調査によると、賃金が上がり企業収益が増加して経済全体がバランスよく改善する中で、物価が上がることが人びとが望むデフレ脱却の姿である」と指摘。金融政策運営にあたっては「いままで精力的に取り組んできた。これからもしっかりと取り組んでいく」という趣旨の発言があったという。』

最新の三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

メールマガジン

山岡和雅が毎日発行!
外国為替ディーラーの心の中

毎日の為替相場を、市場参加者の目を通して判り易く解説。為替ディーラーの本音は?【まぐまぐ殿堂入り】

バックナンバー

朝刊 ニューヨーク為替市場レポート
米国市場の動きを、朝一番に配信!! FX、外国為替、米国株、米国金利など、テレビやWEBサイトでは得られないニューヨーク金融市場情報のほか、アナリストの独自解説も配信します。

バックナンバー

powered byまぐまぐトップページへ

URL変更のお知らせ

KlugFXのURLはhttp://klug-fx.jpへ変更となります。お気に入りやブックマークなどに登録されているご利用者さまは、お手数ですが下記の新URLへの変更をお願いいたします。

http://klug-fx.jp