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第160回 異様な消費増税報道 (2/3)

 さて、民主党と自民党、公明党の三党が合意した「社会保障と税の一体改革」法案は、26日に衆院で採決される予定になっている。本法案に関連し、ほぼ全てのメディアが、あたかも自動的に14年に8%、15年に10%に増税されるかのごとき報道を繰り返している。これは、三党合意の内容を無視したミスリードである。
 26日に衆院に採決される一体改革案は、消費税増税に関して以下の附則事項(第十八条)が記載されている。

『(消費税率の引上げに当たっての措置)
第十八条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ず等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる』

 恐らく最も重要な文言は、十八条3の最後の、
「その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」
 という部分であろう。すなわち、十八条に書かれた各種の条件を勘案し、時の政権が半年後(4月)に消費税を上げるか否かを判断するという法律になっているのだ。
 十八条の「消費税増税に際した条件」の1(五年間の平均で名目GDP3%、実質GDP2%の成長率を目指す)は民主党の、2及び3は主に自民党の要求で書きいれられたものだ。まずは、民主党が主張した「成長率」について見てみよう。

【図160-1 日本の名目・実質GDP成長率とデフレーター(単位:%)】
20120625.PNG

 日本の名目GDP成長率は、97年という唯一の例外を除き、常に実質GDPの成長率を下回っている。GDPデフレーターがマイナス(除97年)というわけで、延々とデフレ状態にあることが分かる。
 97年にしても、実質GDPがわずかに1.6%成長、名目GDP2.2%成長で、民主党が増税の条件(努力目標だが)として書き入れた値を下回っている。かつ、民主党の「努力目標」は「平成23年度から平成32年度までの平均」であるわけだから、単年で達成すれば済むという話でもない。
 橋本政権期の消費税増税におけるミスは、大きく二つあった。一つ目は、
「名目GDP2.2%、実質GDP1.6%、GDPデフレーター0.6%に過ぎず、そもそもデフレ脱却と断言するには低すぎた」
 であり、二つ目は、
「しかも、97年単年のみGDPデフレーターがプラスになっただけ。たった一年で『デフレ脱却』と断言するには、あまりにも時期尚早」
 になる。単年の「デフレ脱却の兆候」のみで、橋本政権は消費増税、公共事業削減といった緊縮財政を開始し、現在に続くデフレ深刻化の引き金を引いてしまったのだ。
 上記の法律案の中に、「消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ」「経済況等を総合的に勘案した上で」といった文言がある。この文言がある限り、増税を判断する「時の政権」は、
「橋本政権の時に名目2.2%、実質1.6%成長だったにも関わらず、増税がその後のデフレ深刻化の引き金を引くことになった。今回の増税が、経済に悪影響を与えず、再度のデフレ化の引き金にならないことを、きちんと説明しろ」
 と、迫られることになる。上記の「説明」を来年の秋(14年から増税の場合)に国民を納得させる形で行うなど、絶対に不可能である。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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