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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

第159回 ギリシャ経済の運命 (3/3)

 今年のギリシャは物価上昇率がマイナスに突っ込むと考えられているが、実際に同国のインフレ率は対前年比ですでに1%を切っている。本来、供給能力が不足し、インフレ率と貿易赤字が拡大しがちなギリシャがデフレに突っ込むという話で、どれだけ凄まじい「需要(名目GDP)急収縮」に見舞われているのか、という話である。
 需要が急収縮するのは当たり前で、何しろギリシャの失業率(12年1-3月)は22.6%である。前四半期と比べると約2%の上昇で、同国が「着実に」雇用を失っていっていることが分かる。失業者は所得がないわけで、当然ながら消費(需要の一部)を減らしてしまう。
 このような高失業率の状況で、緊縮財政をした日には、何が今後のギリシャで起きるのか、あまり想像したくない。少なくとも、失業率がさらに上昇することだけは、確実である。
 ちなみに、アメリカの大恐慌期は29年のNY株式バブル崩壊以降、フーバー政権が正しいデフレ対策を打たない結果、四年間で失業率が3.2%から24.9%に跳ね上がった。デフレ対策を打たない結果、失業率が25%に接近したわけである。
 それに対し、ギリシャはすでにアメリカ大恐慌期に失業率が近づいている状況から、「正しいデフレ対策」ではない緊縮財政を強要させられることになる。もはや、言葉が無いとしか表現しようがない。
 ご存じの通り、デフレ深刻化や失業率上昇は、「人が死ぬ」原因になる。日本は、98年以降のデフレ深刻化により、毎年97年比で1万人自殺者が増えている。自殺の理由で最も大きいものは「経済的理由」である。デフレ深刻化により「経済的理由」で死を選ぶ人が増えるという点が、デフレの最も深刻な問題なのである。
 少なくとも「国民主権」の国家と名乗るのであれば、その国の政府は「デフレ」を絶対に防がなければならない。と言うよりも、せめて防ごうとしなければならないのだ。
 日本も人のことを言えないが、それにも関わらず「デフレ下の緊縮財政」を政治家が選択しがちになり、結果的にその国では自殺者が増えるという現象が世界的に発生している。
ところが、国民を死なせる「デフレ下の緊縮財政」を、なぜかメディアが褒め称えるというおかしな状況も、同時に世界で生まれているのである。
ノーベル経済学者のポール・クルーグマン教授は、週刊現代のインタビューに応え、
「ではいまの世界的な不況、そしてユーロの危機を解決するにはどうしたらいいのか。それは不可能なのだろうか。
 実は答えは難しいことではない。ユーロ諸国、アメリカ、日本などが一斉に、大恐慌時並みの大胆で積極的な財政・金融政策を取ればいいのだ。」
 と語っていたが、正にその通りだ。上記を実施する以外に、現在の世界の「第二次大恐慌直前」という状況を打開する手段はない。
 いずれにせよ、ギリシャ国民が「緊縮財政」を選択した理由は、「世界大恐慌」とは無関係に、単なる「ユーロ残留」が目的である。そして、ユーロに残留する限り、ギリシャは通貨安ボーナスを受けられず、国内の企業の国際競争力は高まらず、貿易赤字を黒字化することは不可能だ。すなわち、経常収支の黒字で対外純資産を稼ぐことが出来ず、対外負債の返済を国内からのユーロの絞りあげ(すなわち緊縮財政)に頼らざるを得ず、結果的に国民の所得を縮小させ、失業率を高め、税収を減らし、財政を悪化させ、さらなる緊縮財政という悪夢の悪循環に入ることになる。
 それにも関わらず、ギリシャ国民は「ユーロ残留」を選択したというわけで、何と言うか「ユーロの呪縛」たるや恐るべしとしか言いようがないわけである。それにしても、失業率が30%とかに達してすら、ギリシャ国民は「ユーロ残留」を選択するのだろうか。ユーロ云々以前に、国内の暴動とデモが抑えきれなくなり、政権が倒れてしまうように思えてならない。
 何しろ、失業率20%超の状況で「緊縮財政」を実施するというのは、人類史上空前と言っても過言ではない「実験」なのだ。この「実験」により苦しむのは、ギリシャ国民である。
 とはいえ、数か月後の失業率が30%に達し、反政府デモで街に繰り出し、
「政府は失業率を上昇させる緊縮財政をヤメロ!」
 などと叫ぶのは、恐らく今回、緊縮財政促進のNDやPASOKに投票したギリシャ人なのであろう。それを想像したとき、筆者は「民主主義の限界」というものを改めて考えざるを得ないわけである。

最新の三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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