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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

第152回 第二次大恐慌の引き金 (1/3)

 2012年第1四半期のスペインの失業率が、24.4%に達した。スペインの雇用統計について、現在の集計方法が始まった1996年以来、最悪の値を更新したのである。本連載でも頻繁に取り上げる、大恐慌下のアメリカが1933年に記録した失業率24.9%に、匹敵するほどに雇用環境が悪化しているわけだ。
 ちなみに、大恐慌期のアメリカは「全土」の失業率が24.9%であり、農村部はそこまで酷くはなかった。すなわち、逆に言えば都市部の雇用環境はより悪化していたわけで、何とは50%に近接したのである。所得を得られないという点は同じだが、農村部は都市部ほど「失業」はしない。当時のアメリカの都市部では、労働者の半分が「所得を得られない」状況になっていたわけだ。まさに、経済的なカタストロフィ状態に陥っていたといっても過言ではない。
高インフレ、あるいはハイパーインフレーションも、失業率が極端に上昇するデフレ深刻化や恐慌も、共に国民経済の「失敗」なのである。理由は、インフレ率高騰も恐慌も、両方とも国民が「飢える」という同じ結果をもたらすためだ。
 高インフレとは、需要に対し供給能力が全く足らず、インフレギャップが巨大化している状況である。例えば、1946年ごろの日本がまさにそうだったわけだが、財やサービスの供給能力が需要に全く追い付かず、実際に当時の日本国民は飢えた。46年の日本のインフレ率は360%を上回ったが、これは日本において「歴史上最も高いインフレ率」と考えられている。
 基本的に平和が続き、国民が供給能力の蓄積を好む日本では、インフレ率はそう簡単には上がらない。何しろ、明治初期に明治政府が政府紙幣(明治通宝など)を発行し、富国強兵に向けた政策を展開したにも関わらず、インフレ率は一桁で収まったほどだ。46年の日本のインフレ率は、有史以来空前の高さと言っても過言ではないのである。
 さて、国民経済の供給能力が極端に不足し、インフレ率が高騰している国においては、国民は物不足、サービス不足、最終的には「飢え」に苦しむ。逆に、恐慌下では、財やサービスの生産能力は「余って」おり、実際に農村部に食料が溢れかえっているケースが多い。それにも関わらず、デフレ深刻化で所得を得られない失業者が極端に増え、国民が高インフレ同様に飢えてしまうのだ。
何しろ、失業者は所得を得られないため、財やサービスを購入するお金がない。所得を得られないとは、やはり「飢え」に繋がってしまうのである。
 現在のスペインは「供給能力の拡大」ではなく、「需要の極端な縮小」によりデフレギャップが発生している。需要の極端な縮小の原因は、バブル崩壊以外にない。
バブル崩壊後の国は、特に民間の「投資」が激減する。何しろ、「消費」はある程度は維持しなければ、国民が飢え死にしてしまうのに対し、投資は「先送り」が可能なのだ。
結果、現在のスペインは「低インフレ」の状態に陥っている。労働者の四分の一近くが
失業状態にあり、かつ若年層失業率は50%を超え、所得不足から「飢え」へと向かっている国民が少ないにも関わらず、いや、だからこそ物価が低迷しているのだ。

【図152-1 ユーロ圏及びイギリス、スイスのインフレ率(対前年比%)】
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出典:ユーロスタット

 図152-1の通り、現在のスペインのインフレ率は2%を下回っている。同国の物価上昇率の水準は、他のユーロ加盟国(ギリシャ除く)よりも低くなっているのである。
 スペインやギリシャの物価上昇率が落ち込んでいるのは、別に両国の供給能力が高まったためではない。そうではなく、バブル崩壊により需要が急収縮しているために、物価上昇率が低迷していっているのだ。
 日本の例を見るまでもなく、健全な価格競争により物価が下落したのではなく、「バブル崩壊後の需要の縮小」によりインフレ率が落ち込む国においては、企業経営がひたすら厳しくなっていく。企業の業績が悪化すると、当然ながら人員削減が行われ、失業率が上昇していく。
 フィリップス曲線からも分かる通り、失業率の改善には、ある程度のインフレ率が欠かせないのだ。ところが、現在のギリシャやスペインはインフレ率を上昇させる政策を採ることを「許されておらず」、このままではスイスや日本同様に深刻なデフレ局面を迎えることになり、失業率はアメリカ大恐慌期を上回ることになるだろう。
 ちなみに、2012年のギリシャの物価上昇率は、最終的にはマイナスになると予想されている。このままでは、スペインも同じ道を辿ることになるだろう。
 デフレ期のオーソドックスな対策は、「国債発行+財政出動+通貨発行(国債買取)」のパッケージである。中央銀行が国債を買い取り、通貨を発行しつつ、政府がそのお金を「雇用」が生まれるように使うのだ。雇用の創出とは、すなわち付加価値(GDP)の発生だ。政府が中央銀行に発行させた通貨を国債で吸い上げ、雇用創出のために使えば、国内の需要を意味する名目GDPが成長する。すなわち、物価下落の主因であるデフレギャップを埋められる。

最新の三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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