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第146回 国家的自殺を後押しする者たち(1/3)

 97年の橋本政権による緊縮財政開始以降、日本の公共投資は「日本史上空前」のペースで減らされた。特に、道路関連の建設投資が減らされに減らされ、今や日本の高速道路のサービスは、主要先進国最低であるのはもちろんのこと、韓国にさえ劣っている。

 日本の公共投資は、国土的条件がまるで異なるフランスを、08年以降に対GDP比で下回るようになってしまった。フランスと日本とでは何が違うのかと言えば、ずばり「自然災害の有無」と「国土的条件」である。

 フランスは南東部のアルプス山岳地帯のごくわずかな地域を除くと、地震がない。「地震が少ない」のではない。「地震がない」のだ。それに対し、日本は国土面積は世界のわずかに0.3%に過ぎないにも関わらず、マグニチュード6以上の大地震が集中して発生する。何しろ、日本列島はユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートと、四つの大陸プレートが交差する真上にある。

 フランスに行かれた方は、是非、高速道路の「脚」に注目して欲しい。フランスのシャルル・ド・ゴール空港からパリ市内に向かう高速道路の橋脚は、まるで「板」のように見える。要するに、薄いのだ。それに対し、日本の高速道路の橋脚は、太い柱になっている。あれは別にわざわざコストをかけているわけではなく、あの構造にしなければ、頻発する地震に橋脚が堪えられないためなのである。ちなみに、フランスのパリ周辺では、有史以来、大地震が起きたことがない。

 また、日本は国土が細長く、真ん中に脊梁山脈が走っている。さらに、一級水系(河川)が109、二級水系は2713もある。国土が山岳地帯と河川だらけになっているのだ。結果的に、高速道路一本引くにしても、トンネルや橋梁を設置しなければならない。さもなければ、日本国内の物流や人々の流れは、「自然」により分断されてしまうのである。

 それに対し、フランスは国土の70%以上が平野だ。しかも、アルプスがある南部を除き、残りが「全て平野」なのである。南はトゥールーズから、ボルドー、ナント、ブレスト、ル・マン、パリ、ランスに至るまで、およそ1000Km以上の広大な地域に平野が広がっている。山がないのみならず、河川も少ない。あるにはあるのだが、フランスの河川は「少数の長大な河川」が、広大な平野をゆったりと流れていく。そのため、高速道路を建設する際のコストが、日本と比較すると安くなる。トンネルや橋梁の数が少ないわけだから、当然だ。

 しかも、日本には台風が来るため、水害や土砂災害にも備えなければならない。さらに、豪雪地帯の問題もある。日本のように、新潟のような大都市が豪雪地帯に立地している国は、世界中にどこにもない。(日本より寒い地域に都市が存在するケースはあるが、豪雪地帯はない)

 当たり前だが、フランスに台風は来ない。豪雪地帯もない。結果的に、フランスは高速道路を建設するに際し、「自然災害」や「地形」に妨げられることがほとんどない。

 このフランスの公共投資対GDP比率を、日本が下回ってしまったのだ。これはもはや、国家的自殺としか表現のしようがない。


【図146-1 主要国一般政府公的固定資本形成対GDP比率の推移(単位:%)】
20120321_01s.png
出典:「建設業ハンドブック2011」
※公営企業の公共投資、及び用地費等は含まれていない

(2/3に続く)


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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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