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第124回 経済ニュースの「ウソ」を見抜け!(1/3)

 全く喜ばしい話ではないのだが、本連載にまことに相応しい報道が頻発している。すなわち「購読者を騙す経済記事」が立て続けにリリースされているのである。すなわち、TPP関連の報道だ。

 現在、民主党政権は経済産業省の「煽り」に乗せられ、TPPすなわち環太平洋連携協定への交渉参加に前のめりになっている。交渉参加後の離脱など、現実的に不可能に近いにも関わらず、経済産業省の官僚たちが、
「TPP参加と、交渉参加は違います。交渉に参加して、条件が合わなかったら離脱できます」
 などと繰り返し、それに民主党首脳部が引きずられているわけである。

 そもそも、TPPについて「交渉参加」しようとした場合、日本は一定のコミットメントを求められる。TPP交渉は町内会の寄り合いではなく、外交なのだ。外交である以上、一定のコミットメントなしでは、そもそも参加することができないのだ。また、過去の多国間交渉において、交渉途中で離脱した国の例はほとんどない。

 この辺りの外交センスが民主党政権に皆無であるからこそ、筆者は現時点におけるTPP参加はもちろん、交渉参加にさえ反対せざるを得ないのである。民主党政権がどうしてもTPP交渉に参加したいというのであれば、日本国民への影響を「全て」オープンにしなければならない。

 経済産業省の官僚や一部の民主党の政治家は、
「交渉に参加してみなければ、詳細は分からない」
 などと詭弁を弄している。バカバカしい限りだ。


【図124-1 TPPの作業部会】
20111018_01.png


 現時点で、TPP参加予定国が協議している作業分野は24もある。これら24の作業部会の種類について、まずは情報を全て明らかにし、それぞれの分野について「現時点で分かっていること」をオープンにすることは、別に苦労をすることもなく可能だ。

 24の作業分野について、大々的にディスクローズした上で、
「それぞれの分野について分かっていることは、これしかない。残りは調査中である」
 と発表すればいいのである。

 ところが、政府やマスコミはTPPについて、あたかも「製造業 v.s. 農業」という構図であるかのような報道を続けている。製造業も農業も、所詮はTPPの作業部会の、それぞれ24分の1ずつに過ぎない。作業部会の残りの24分の22については、一切情報(作業部会が存在する情報を含め)を明らかにせず、
「保護的な日本の農業を改善するチャンスだ! だからTPP参加を!」
 などと言われては、国民や政治家がまともな判断などできるはずがない。

 日本政府やマスコミがオープンにしない「24分の22」の中には、かなり「怖い」分野が含まれている。代表的なものは「投資」だ。

 そもそも、投資の全面自由化は、国家の安全保障に影響を与えかねないため、WTOでさえ自由化の対象外とされている。さらに、元々のTPP協定、すなわちP4協定(シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイが締結済み)には、「投資」は含まれていないのである(また「金融サービス」もP4協定に含まれていない)。

 要するに、アメリカがTPP参加時に作業部会の中に「投資」(及び「金融」)を突っ込んだという話だ。アメリカが貿易協定において投資を「突っ込もうとする」のは、毎度のことである。NAFTAや米韓FTAには、きちんと投資の自由化が盛り込まれている。また、アメリカは以前、MAI(多国間投資協定)をOECD内で実現しようとしたが、フランスの反対で失敗した。WTOにおける投資自由化も、発展途上国に猛反発され、やはり挫折を味わっている。

(2/3に続く)


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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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