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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

第119回 四天王(2/3)

(1/3の続き)

 それはともかく、現在の世界には、長期金利の水準が2%を切っている国が、何と四カ国もある。2010年までは、長期金利が2%未満で推移していたのは、唯一、日本のみだった。(スイスは05年に瞬間的に2%を切ったが、その後は2%台に戻っていた)

 ところが、今やスイスの長期金利が日本とほぼ並んだのに加え、アメリカとドイツの長期金利までもが2%を下回ってしまったのである。07年に不動産バブルが崩壊したアメリカは、デフレ化の危機に直面しており、世界に溢れる「ドルの過剰貯蓄」が米国債に流れ込んでいる。要するに、ドルの投資先不足という話で、98年以降の日本そのままに、アメリカも過剰貯蓄問題に苦しみ始めているわけだ。9月9日時点のアメリカの長期金利は、何と1.92%である。(「アメリカはデフォルトする!」などと主張していた国内マスコミは、この状況をどのように説明してくれるのだろうか?)

 さらに、ドイツにはギリシャやポルトガルなど、財政危機に直面している国々からユーロが戻ってきている。今や、ギリシャの十年債の金利(長期金利)は20%を超えている。

 それに対し、ドイツは1.77%と、何とアメリカを下回るほどに長期金利が低迷しているのである。それぞれが異なる理由で長期金利が超低迷している国々、すなわち日本、アメリカ、ドイツ、そしてスイスの四カ国を、筆者は「国債のデフォルトが起き得ない国々」という意味を込めて「四天王」と呼んでいる。


【図119-1 日米独及びPIGS諸国の長期金利の推移(単位:%)】
20110913_01.png
出典:ユーロスタット
※2011年9月の値は9月9日現在


 ギリシャとドイツは共にユーロ加盟国だ。すなわち、ギリシャ-ドイツ間では、為替レートの変動がないのである。為替レートの変動がないということは、為替差損も為替差益も発生しないという話だ。本来、両国の金利差を考えると、莫大な資金が「ドイツ⇒ギリシャ」と流れてもおかしくはない。何しろ、ドイツとギリシャの長期金利の開きは、十倍を超えているのだ。

 ドイツで十年満期のお金を借り、ギリシャの十年債に投資するだけで、十倍近い金利差で荒稼ぎができるのである。しかも、両国共にユーロ加盟国であるため、為替リスクは存在しない。

 ところが、現実のお金の流れは「ギリシャ⇒ドイツ」となっており、「ドイツ⇒ギリシャ」ではない。誰も、債務不履行を起こす可能性が高い債券に投資はしたくないであろうから、まあ、そういう話である。

 CDSプレミアムから見るギリシャのデフォルト確率は、すでに90%を上回っている。そんな債券に、今さら投資をしたいと考える投資家は極めて少数派だろう。

 今後の投資を考える人は、単にギリシャ債を避ければ済む話だが(そして、ドイツ債やスイス債を買えばいい)、問題はすでに投資をしてしまった金融機関、及び投資国側の政府である。

 すでにドイツのメルケル首相は、ギリシャのデフォルトに備え、銀行を支援するための計画を準備中であるとの情報が流れた。ギリシャがデフォルトを起こし、ギリシャ債が不良債権化した場合、ドイツの銀行は巨額の評価損を迫られる。自国の信用収縮を避けるために、ドイツ政府は資金注入を実施することになるだろう。

(3/3に続く)


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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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