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第117回 格付け機関の三つの罪(前編)(1/3)

 7月のIMF及びEUからの緊急支援合意により、一時的に下がっていたギリシャの長期金利が、再び上昇している。2011年8月29日時点のギリシャの長期金利(新規発行十年物国債金利)は、実に18.02%である。

 長期金利の反騰に驚いたのか、8月28日にはギリシャのベニゼロス財務相は、
「不安に陥りやすい人たちが存在するものの、7月21日の決定は実行に移され、ギリシャ経済の新たな支援プログラムは予定通り実施されるだろう」
 と発言している。

 問題なのは、ギリシャがEUやIMFから支援を(予定通り)受けたとしても、同国の経済成長率がマイナスに落ち込んでいる以上、さらなる財政の悪化は避けられないという点だ。ドイツのショイブレ財務相は、ギリシャの財政状況が依然として深刻であるとの認識を示し、
「ソブリン債務のさらなる積み上げは、景気を刺激するのではなく、経済成長を阻むだろう」
 と語った。


【図117-1 欧州諸国の財政収支対GDP比率(単位:%)】

20110830_01.png
出典:ユーロスタット


 図117-1が、2010年までの欧州諸国の財政収支対GDP比率である。上記グラフからは、主に三つのことが読み取れる。


(1)2010年時点で、マーストリヒト条約で定められたユーロ圏の財政赤字対GDP比率の上限である3%を、ドイツを含めて主要国はどこも守っていない。

(2)アイルランドの財政赤字対GDP比率は、2010年に30%超という驚くべき水準に達した。

(3)ギリシャは加盟当初(2001年)から、実はマーストリヒト条約ライン(3%)を守っていなかった。


 (3)について補足すると、実は2010年にユーロスタットが公表した資料では、ギリシャは加盟時の2001年時点では、マーストリヒト条約ラインを辛うじてクリアしていたのだ。と言うよりも、クリアしていなければユーロ加盟は不可能なので、当たり前なのだが。

 ところが、2009年秋に、過去のギリシャ政府が「粉飾会計」を行っていたことを、パパンドレウ政権が暴露した。まさにこれこそが、現在に連なるギリシャ危機の始まりになったわけだが、01年の財政赤字対GDP比率3%未満についても、粉飾会計であったことが判明した。結果、先日公表された2010年までのユーロ加盟国の財政収支対GDP比率について、ユーロスタットは過去にさかのぼり、ギリシャの数値を修正したという話である。

 要するに、ギリシャははじめからユーロに加盟する資格がなかった国というわけだ。この種の「不良国」までをも拡大主義に基づき、共通通貨に引き入れてしまったことこそが、最終的にはユーロの致命傷になったのである。

(2/3に続く)


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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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