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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

第103回 自由貿易と経済成長(3/3)

(2/3の続き)

 ちなみに、筆者は例によって、自由貿易を「全て悪!」などと言って全面的に否定したいというわけではない。それにしても、自由貿易が「必ず善!」というわけではないのも確かだ。その国の国民にとって、自由貿易が豊かさの拡大に貢献するのであれば、淡々と推進すればいい。そうでなければ、ある程度は保護主義的な政策を採るべきだ。環境によって、適切なソリューション(解決策)は変わる。政治家が環境を確認し、是々非々で政策を実施すれば良い、と言いたいわけである。


『2011年5月22日 日本経済新聞「TPP先送り「平成の開国」の看板が泣く

 震災の復興には、日本経済の成長が欠かせない。その成長を支えるのは、輸出を柱とする貿易である。自由貿易を目指して国を開くのが、いま日本が進むべき道であるはずだ。

 菅政権は逆のメッセージを世界に発している。米国など9カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に関し「6月に結論を出す」としていた方針を先送りした。菅直人首相は自ら掲げていた「平成の開国」の看板を下ろしたのか。(中略)

 震災後でも、日本にとって自由貿易が重要であることは変わりない。むしろ輸出を拡大し、復興に必要な投資を呼び込むために、震災前より自由化を急がなければならない。

 少子高齢化が進む日本が成長を維持するには、海外との経済連携を強め、アジアなどの活力を取り込む必要がある。被災した東北地方で大胆に農業改革を実施し、農地の大規模化を進めることもできるはずだ。

 TPPで足踏みする一方、菅首相は日中韓首脳会談では3カ国の自由貿易協定(FTA)に意欲を示す。改革から逃げて、優先政策が定まらなければ、日本への世界の同情は失望に転じるだろう。菅首相は背筋を伸ばし、開国の意志を貫くべきだ。』


 何というか、
「自由貿易は宗教じゃありませんよ」
 などと、賢しげに忠告したくなるような社説である。自由貿易は別に、イデオロギーでもなければ、宗教でもない。単に、「国民を富ませるための一手段」に過ぎないのだ。

 例えば、日本企業がグローバル市場で「輸出を柱とする貿易」を推進し、成長を目指したとして、国民の給与水準が下落していってしまうのでは、全く意味が無い。と言うよりも、国民の給与水準を下落させてまで、日本企業がグローバル市場で戦う意味があるのだろうか。企業とは、もちろん収益の最大化を目指すべき組織体である。但し、同時に国民経済に貢献することをも求められていることを忘れてはならない。


【図103-2 日本の財の輸出総額(左軸、単位:億円)と平均給与(右軸、単位:千円)】
20110526_03.png
出典:財務省、国税庁


 図103-2の通り、アメリカの不動産バブルが拡大し始めた02年以降、確かに日本の輸出総額は増えた。しかし、同時に国民の平均給与は下落を続けたわけである。

 無論、日本国民の給与水準が下落していったのは、97年の橋本政権による緊縮財政開始以降のデフレ深刻化の影響が大きい。それにしても、
「日本の輸出拡大が、給与水準の上昇に役立たなかった」
 ことは、紛れもない真実である。

 これは、改めて考えてみると当たり前だ。先に、ルモンド紙、アラン・トネルソン氏、ジョン・グレイ氏の言説を見た通り、自由貿易は企業のグローバル市場における競争を激化させ、国民の賃金水準を引き下げる効果が発生する。すなわち、デフレ促進だ。

 フランスや韓国同様に、日本も「新しいグレシャムの法則」からは逃れることができていないのだ。

 個人的には、日本が自由貿易で繁栄しようが、保護主義で繁栄しようが、どちらであっても構わない。それにしても、日経新聞の社説のように、
「自由貿易を目指して国を開くのが、いま日本が進むべき道であるはずだ」
 と主張するのであれば、せめてその数値的根拠だけでも示して欲しいと思うわけである。単に、フレーズのみで日本の自由貿易推進を煽り立てるのでは、単なる扇動者でしかない。そして、新聞とは「社会の公器」を名乗っている以上、扇動者であってはならないと思っているわけだが、いかがだろうか。


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最新の三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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