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第81回 法人税引き下げと泥縄式対策(2/3)

(1/3の続き)

 さて、現在の日本の民主党政権をの中心に位置する人々は、基本的なマクロ経済について全く理解していない。何しろ、財務大臣時代に国会で「乗数効果」を知らないことを暴露された人物が、首相の座についているのである。

 民主党政権は、マクロ経済を知らない割に、人気取りや「支持率アップ」のためならば、突発的におかしな対策を取ろうとする。その代表的なものが、突如、話が浮上した「法人税5パーセント引き下げ」である。


『2010年2月13日 NHK「首相 法人税5%引き下げ指示」

 菅総理大臣は13日夜、記者団に対し、来年度の税制改正の焦点となっている法人税率について、地方分をあわせた実効税率を5%引き下げるよう、野田財務大臣らに指示したことを明らかにしました。

 この中で菅総理大臣は「先ほど、玄葉国家戦略担当大臣と野田財務大臣が、法人税を3%引き下げるか、5%引き下げるか、最終的な判断を決めてくれと求めてきた。企業が海外に出て行き、雇用が失われることは、日本経済や雇用に決してプラスではない」と述べました。そのうえで菅総理大臣は「ここは思い切って法人税を5%下げ、経済界は国内に投資し、雇用を拡大し、さらには給料を増やす。それによって景気を引き上げ、成長を促し、デフレを脱却する。そういう方向に積極的に使えるように、法人税を5%引き下げる方向で調整するよう両大臣に指示した」と述べ、来年度の税制改正の焦点となっている法人税率について、地方分をあわせた実効税率を5%引き下げるよう、野田財務大臣らに指示したことを明らかにしました。(後略)』


 デフレの深刻化を受け、現在、日本の法人企業の70%は赤字になっており、法人税をほとんど支払っていない。すなわち、仕事が無くて困っている中小企業に対しては、法人税減税は何の恩恵も無いのである。

 そもそも、日本の国内経済の問題は、需要不足から生じるデフレ不況により、黒字法人が少なくなってしまっていることだ。根本的な問題には手をつけず、法人税を全体的に引き下げても、黒字企業の内部留保を増やすだけの結果に終わる。すなわち、またもや「過剰貯蓄(預金超過)」の拡大である。


【図81-1 日本の銀行の貸出金・実質預金・預金超過額の推移(単位:十億円)】
20101222_02.png
出典:日本銀行 金融経済統計月報
※預金超過額=実質預金-貸出金と定義


 現在、日本の銀行の貸出残高は、11ヶ月連続で減少している。その裏で、実質預金(銀行にとっては借入金)は増え続け、日本の家計の現預金残高は、ついに800兆円という、人類前代未聞の規模に達してしまった。

 また、銀行の貸出態度DIを見た場合、少なくとも大企業や中堅企業に対してはプラスになっている。(中小企業については、ぎりぎりマイナス)そうである以上、現在の日本国内は、明らかに資金需要不足に陥っている。貸し出し態度DIがプラス、すなわち銀行側が「お金を貸したくて堪らない」環境下にありながら、貸出金が減り続けているわけだ。

 根っこの問題である需要不足に手をつけず、法人税引き下げで「政府から黒字企業への贈与」を行うなど、一体何を考えているのやら、さっぱりわからない。

(3/3に続く)

本ブログの「需要不足」関連記事はこちら。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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