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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

第二十五回 検証されない「日本財政破綻論」(2/3)

(1/3の続き)

 民間が不況に苦しみ、手元に運用先がないお金が溜まっていくからこそ、銀行などの国内金融機関が、こぞって国債を買っている(=政府に貸し付けている)わけだ。この状況で、政府が「増税」をした上で、負債を返済してくれたところで、銀行側としては全く嬉しくないだろう。

 政府の負債返済で、手元に運用先がないマネーが溢れた挙句、増税により不況が悪化する、すなわち民間の資金需要がますます縮小してしまうのである。こうなると、一度バブルで痛い目に会い、その後は比較的固い運用を心がけていた国内銀行も、海外の高リスクな投資商品(例:サブプライムローンを含んだ証券化商品)の購入を、検討していかざるを得なくなるのではないだろうか。

 要するに、あくまで日本政府が国内から資金調達している以上、増税をした上で、負債を返済したところで、問題(=不況)を悪化させるだけの話なのだ。国家のバランスシートと所得(GDP)間のお金のフローを見るだけで、そんなことは誰にでも理解できる。
 もちろん、政府が海外から外貨建てで資金を調達している国のリスクは、日本とは全く異なるレベルになる。政府に外貨建ての負債がある以上、為替レートの状況によっては「デフォルト(債務不履行)」の可能性があるわけだ。

 そうである以上、通貨や国際決済を管轄するIMFが、乗り出してくるのも理解できる。政府の「対外負債のデフォルト」は、国際経済に様々な悪影響を与える。IMFが事前に警告を発し、各国政府の「対外負債」の拡大を抑制しようとすることに、確かに意義はあるだろう。

 しかし、政府が国内から借り入れた結果、積み上がった負債残高にまで、IMFが嘴を突っ込んでくるのは、良く言って大きなお世話、悪く言えば内政干渉である。しかも、政府の調達コスト、すなわち国債金利が極端に高いのであればともかく、日本国債の金利は長年、世界最低を維持しているわけだ。

 IMFは、未だに「政府が自国通貨建てで国内から借りた負債」「政府が自国通貨建てで海外から借りた負債」「政府が外貨建てで海外から借りた負債」の三つを同一視することを続けている。この三つが「同じく政府の負債である」という考え方に基づき、経済対策を練ることは、冗談抜きにかなり危険である。問題の認識を見誤っている以上、まともな対策など立てようがないのだ。

 もっとも、日本国内のマスメディアに至っては、未だに政府の負債を「国の借金」あるいは「日本の債務残高」などと、事実誤認な呼び方をしているので、問題認識以前の問題なのだが。


 さて、なぜ筆者が「政府の負債(=読売新聞の言う「日本の債務残高」)」などと、呼び方にこだわるのかと言えば、国内マスメディア方式のセンセーショナルなフレーズに引きずられると、問題の本質を見誤り、解決を間違えてしまう可能性が高まるためだ。この世界に、問題を正しく認識せずに正しい解決策を編み出せる、都合のいい天才は存在しない。

 お分かりだとは思うが、筆者は別に「日本の財政は問題ない」などと、極論を言う気は全くないのだ。正直、政府の負債残高が増大していくこと自体は全く問題に思わないが、政府負債対GDP比率(読売新聞の言う「日本の債務残高の対GDP比%」)が悪化していくのは、これはやはり問題だ。なぜならば、日本政府が自国のGDPを成長させるために、適切な投資ができていないということを意味しているからだ。すなわち、国債発行による資金調達後の、リソース配分の問題であり、負債残高それ自体の問題ではないということだ。

 負債残高を問題視するのであれば、
「日本の財政悪化が世界で突出しているならば、なぜ日本国債の金利は世界最低なのか?」
 という疑問について、論理的な回答を導き出さなければならない。何しろ、日本の国会ではじめて「財政危機宣言」(武村正義蔵相、当時)が成されて以降、日本政府の負債残高は二倍以上にまで拡大したのだ。それにも関わらず、この期間の日本国債の金利は、却って低下していったのである。

 1995年11月国会において、武村蔵相が、
「日本の財政は危機的である!」
 と宣言した時点の政府の負債残高は、458兆円(IMF数値)だった。あれから14年が経過し、政府の負債残高は当時の二倍以上の996兆円(同)にまで膨らんだが、この期間、長期金利の上昇は全く見られない。


【図25-2 日本政府負債残高(右軸、十億円)と長期金利推移(左軸、%)】
20091111_25_02.gif
出典:IMF(政府負債残高)及び日本銀行(長期金利)


 新聞が「日本の財政は危機である!」とセンセーショナル、かつヒステリックに叫ぶのは勝手である。しかし、せめて過去に自分たちが主張した「日本は財政破綻する」論の正否がどうだったのか、検証くらいはして欲しいものだ。

 しかし、マスメディアに限らず、「日本は財政破綻する」論を主張している人々が、自らの予想の検証をすることは、決してない。それどころか、「日本は財政破綻する」論を主張し続けるために、彼らは破綻に至るまでのロジックを、コロコロと変えていくのである。まさしく「恥知らず」以外に、彼らを表現する言葉は見当たらない。
 

(3/3に続く)

最新の三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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