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増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米9月中古住宅販売、大幅増=在庫は2カ月連続減少

-フォークロージャー物件急増による価格下落が寄与-

【2008年10月26日(日)】 - 先週末(24日)、NAR(全米不動産業協会)が発表した9月の中古住宅販売件数は前月比5.5%増の年率換算518万戸となり、市場予想の495万戸を大幅に上回った。

 住宅市場の供給過剰感を示す売れ残り住宅在庫も前月比1.6%減の427万戸と、2カ月連続の減少となり、販売増とともに今後の住宅市場の改善に期待を抱かせる結果となっている。

 中古住宅が大幅な販売増となったのは、9月に入って、安値のフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件が急増したためだ。

 NARによると、販売件数の全体の35-40%がフォークロージャー物件で占められたという。フォークロージャー物件の増加で販売価格が大幅に低下、販売件数が増加する一方で在庫も減少したのだ。

 住宅ローン金利が大幅に低下したことも購入意欲を高めたと見られている。9月の統計は、2カ月前の7月と8月に売買契約を交わし販売が完了した件数がベースになっているため、9月中旬から10月にかけて再発したクレジット市場危機で、銀行の貸し渋りが厳しくなる前だったことも大幅増に寄与している。

 前年比で見た販売件数は1.4%増と、2005年11月以来、約3年ぶりに増加に転じた。これは、1年前の2007年9月はクレジット市場危機が始まったころで、住宅販売が急減しており、その反動増という面もあるようだ。

 しかし、販売増とそれに伴う住宅在庫の2カ月連続減少については、NARの主席エコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、「世界経済が不況から回復に向かう第一歩となりうる」とし、住宅市場にとっては良い兆候と見ている。

 その上で、同氏は、「住宅市場に顧客が戻ってくれば、それがきっかけとなって、住宅価格が上昇、MBS(不動産担保証券)に対する信頼性、さらには、金融市場の信頼性の回復につながっていく」と期待感を示している。

 ただ、その一方で、ヤン氏は、最近は、失業率が高水準で雇用の悪化が続いているなどリセッション(景気失速)懸念が強まってきているため、住宅市場の先行き不透明感は高まっているとし、一抹の不安を隠さない。

●政府の住宅対策で今後数カ月後には販売は増加基調へ=NAR会長

 NARのリチャード・ゲイロード会長は、7月の中古住宅統計が発表された8月25日に、「中古住宅販売件数が月によって増減するようなことは、もうすぐなくなるだろう。政府の住宅対策の効果で今後数カ月後には販売は増加基調に変わる」と指摘しが、ブッシュ政権の住宅対策の効果も現れた格好だ。

 政府の住宅対策では、初めて住宅を取得する世帯向けに、住宅取得額の最大10%(ただし、7500ドル)の税額控除を認める住宅減税措置が盛り込まれており、住宅市場の活性化に寄与すると見られている。

 住宅取得控除は4月1日から来年7月1日までに取得した世帯が対象となるため、最大300万世帯が同制度を利用できる資格があるとし、その需要刺激効果が期待されている。

●中古住宅販売、落ち着いた動き

 9月の中古住宅販売件数(一戸建てや分譲住宅、集合住宅など、季節調整値)は、前月比5.5%増の年率換算518万戸となり、市場予想の495万戸(0.8%増)を大幅に上回った。

 5.5%という増加幅は2003年7月以来5年2カ月ぶりの大幅な伸びで、戸数自体も昨年8月の550万戸以来、1年1カ月ぶりの高水準となっている。

 アナリストは、中古住宅の販売が増加した理由については、住宅ローン金利の大幅低下で需要が伸びたとみている。ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)によると、9月の30年固定金利型住宅ローンの金利は8月の6.48%から6.04%へ0.44%ポイントも低下している。

 また、9月に入って、フォークロージャー手続きに入っている住宅物件がかなりの低価格で販売されているため、それ以外の通常の中古住宅の販売主も競争上、価格を引き下げため、全体の販売件数を押し上げたと見られている。

 最近のトレンドを見ると、ここ1年間の中古住宅販売件数は小幅なレンジ内の動きを示しており、落ち着く傾向を示している。9月の518万戸は、1月(489万戸)に比べて5.9%増となっているほか、直近の第3四半期(7-9月)の平均値503万7000戸は、第1四半期(1-3月)の平均値(495万3000戸)に比べ1.7%増となっている。

 対照的に、1-3月期は、その前の3カ月間(昨年10-12月期)に比べ1.0%減、さらに、10-12月期も直前の3カ月間(昨年7-9月期)から8.0%減だったことから見ても、中古住宅販売の減少幅が縮小傾向にあり、着実に底打ちに向かっている過程にあるといえそうだ。

 米国の中古住宅販売は、昨年8月以降、500万戸前後で安定的に推移しているが、2005年まで5年間続いたブームのあと、2006年は前年比8.5%減。さらに、2007年は同12.8%減と25年ぶりの大幅減と、2年連続で急減している状況だ。

 内訳は、販売の中心を占める一戸建てが、前月比6.2%増の年率換算462万戸となったが、前年比も3.8%増と増加に転じた。他方、分譲マンションやアパートも横ばいの56万戸となったが、前年比は15.7%減と、依然、大幅減少が続いている。

●中古住宅在庫、9.9カ月分に低下=それでも適正水準の約2倍

 一方、9月の中古住宅の売れ残り在庫件数は、前月比1.6%減の427万戸となった。これは、9月の販売ペースで見て9.9カ月分の在庫(供給)水準で、も8月の10.6カ月分から大幅に低下している。これは在庫件数が過去最高となった7月以降、2カ月連続の低下だ。

 しかし、過去25年間の平均値である7.1カ月分、また、適正水準とされる5.5-6カ月分(住宅ブームのピークだった2005年は4.5カ月分)を依然、大幅に上回っている。在庫はまだ、適正水準より約150万戸多い水準だ。

●中古住宅価格、前年比9.0%低下

 低価格のフォークロージャー物件の販売が増えたことを裏付けるように、今回の統計では、中古住宅価格の中央値(季節調整前)は、前年比9.0%低下の19万1600ドルと、2004年4月以来4年5カ月ぶりの低水準となり、26カ月連続で前年水準を下回っている。

 一戸建ての価格も前年比8.6%低下の19万0600ドルに下落している。

 価格が下げ止まるには、在庫水準がかなり低下する必要があるが、それには、価格は今よりさらに低下しなければならないため、住宅価格の低下傾向は変わらないと見られている。

 また、専門家は、銀行などの金融機関は、今後はクレジットカードなどの消費者ローンや企業向け融資の焦げ付き問題が表面化することが予想されるとし、住宅購入のための貸し渋りは第2段階に入ると見られるため、住宅価格には一段の下落圧力がかかるとしている。

 すでに、住宅価格は2006年の中ごろのピーク時から18%下落しているが、今後もフォークロージャー物件が市場に流れ込む見通しのため、価格は、さらに10%も低下すると見られている。

 地域別の住宅価格の動向を見ると、西部が前年比18.5%低下と最も大きく下落、北東部の同5.4%低下、南部の同4.1%低下、中西部の同7.9%低下となっている。

●7-9月期のフォークロージャー件数、前年比71%増

 また、米不動産調査会社リアルティトラックが23日に発表した7-9月期のフォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)は、前年比71%増の約76万6000件となった。

 9月だけでは前月比12%減となり、前年比も21%増となった。これは、カリフォルニア州やノースカロライナ州などいくつかの州が30-45日間の事前通知(猶予期間)を行ってから、フォークロージャー手続きに入るよう義務付けたことによる一時的な影響だ。

 これは、9月時点で、475世帯につき1世帯の割合で住宅を失っている厳しい状況に変わりはなく、依然、底打ちの兆しが見えていない。同社では、今年のフォークロージャー件数の予想を2倍強の約250万件に引き上げている。

 今後も、フォークロージャー件数は増える見通しだ。クレディスイスが4月に発表した調査結果によると、サブプライムローン(信用度の低い顧客への融資)の借り手の約53%が今年末までにネガティブ・エクイティ(購入価格を下回りマイナスの純資産額になることで破たん予備軍といわれる)となり、この比率も2009年には63%に増大するという。

 現在のネガティブ・エクイティ比率は、5200万世帯のうち、23%に相当する約1200万世帯となっており、各州政府のフォークロージャー手続きを遅らせる措置も効果薄と見られている。

 さらに、新規のフォークロージャー件数は今年第3四半期(7-9月)がピークとなり、2012年末までに約270万世帯のサブプライムローンの借り手がフォークロージャー手続きに入るとしている。

 また、ムーディーズ・エコノミー・ドット・コムは、2009年末までに、フォークロージャー手続きに入るか、銀行差し押さえとなる住宅物件は約280万世帯に達すると試算している。(了)

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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