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増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米5月個人消費、半年ぶりの大幅増=税還付が寄与

【2008年6月29日(日)】 - 先週末(27日)、米商務省が発表した5月の個人所得・支出統計は、個人消費支出が前月比0.8増(実質ベースは0.4%増)と、4月の0.4%増(改定前は0.2%増)の2倍となり、昨年11月の同1.0%増以来6カ月ぶりの大幅増となった。市場予想の同0.7%増も上回った。

 個人消費が急増したのは、政府が景気刺激策の一環として、4月下旬から1億3000万世帯に総額1070億ドル(約11兆3000億円)の所得税の還付を開始した効果が現れたためだ。

 米財務省によると、税還付は20日時点で、全体の約7割に相当する783億ドル(5月だけで480億ドル)に達しており、7月中旬まで続く見通しだ。また、税還付金の使途は、エコノミストの予想によると、全体の40%が消費に回り、残りが貯金や借金返済に使われると見られている。

 実際、5月の貯蓄を見ると、年率換算で5550億ドル強に達した。これは、49年ぶりの高水準で、この結果、貯蓄率(可処分所得に対する貯蓄の割合)も4月の0.4%から5%に急伸した。

 5月の個人所得も、税還付が大きく寄与し、前月比1.9%増と、市場予想の同0.5%増の約4倍という高い伸びとなった。これは、2005年8月に米国南部を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」による被災者の救援に充てられた資金支援で所得が急増した同9月の3.2%増以来2年8カ月ぶりの大幅増となる。

 消費者が自由に使える税引き後の可処分所得も同5.7%増(実質ベースは5.3%増)と、1975年5月以来33年ぶりの大幅増となっている。

◎第2四半期GDP伸び率、上方修正=統計発表受けて

 税還付金の寄与度が大きいとはいえ、5月の個人消費が高い伸びとなったことから、多くのエコノミストは、第2四半期(4-6月)GDP伸び率の見通しを上方修正しており、今年上期中にマイナス成長となることは避けられるという見方が広がっている。


 第2四半期GDP伸び率については、税還付でGDPが0.7%ポイント押し上げられると見られており、今回の統計発表後、グローバル・インサイトは前期比年率+1.2~+1.5%、また、JPモルガンチェース銀行も従来見通しの2倍の同+2%に、それぞれ上方修正している。

◎個人消費、税還付終了後は再び低迷か

 しかし、税還付を除いた場合の個人所得の伸び率は、前月比わずか0.4%増となり、また、可処分所得の伸び率もゼロ%となることから、エコノミストは、税還付金の支給が完了する7月中旬以降、税還付の影響が短命に終わり、個人消費が再び落ち込み、景気が減速する可能性があると懸念している。

 こうした懸念は、この日発表された6月のミシガン大消費者信頼感指数の改定値にも現れた。改定値は速報段階の56.6から56.4に下方改定され、5月の59.6を大幅に下回った。これは1980年以来28年ぶりの低水準で、56年の同統計の歴史の中で3番目に悪い数値となっている。

 これは、個人消費が税還付に支えられているものの、1バレル当たり140ドルを超す原油高とそれに伴うガソリン価格の急騰(1ガロン当たり4ドル強)、住宅差し押さえの増加に見られる住宅市場の一段の悪化、さらに、失業率が5.5%と、約3年ぶりの高水準になるなどの雇用市場の悪化を受けて、一段と消費者心理が悪化していることを示すものだ。

 また、同大の消費者信頼感調査では、全体の9割が米経済はリセッション(景気失速)になっていると指摘、また、全体の6割強がこうした景気低迷が今後数年間続くと悲観的な見方を示している。

 同大のリチャード・カーティン教授は、「消費者は将来の所得や雇用に対する不安、さらには、ガソリンや食料品の価格上昇を懸念して、買い控えを選択している」という。

 同調査では、来年のインフレ率は20年以上ぶりの高水準になると予想、ガソリン価格も今後数年間は1ガロン5ドルになると予想しており、今後数カ月は高額な耐久財や住宅などの購入を差し控えるとしている。

 こうした景気の先行き懸念を反映して、先週末のニューヨーク株式市場では、ダウ工業株30種平均が前日の358ドルの大幅安に続いて、前日比106.91ドル安の1万1346.51ドルで引け、2006年9月以来1年9カ月ぶりの低水準となった。ダウ平均は、昨年10月に付けた過去最高値から19.9%も下落している。

◎コアPCE、3カ月連続で前年比+2.1%=利上げは秋以降か

 インフレの動向を示すPCE(個人消費支出)物価指数は、前月比0.4%上昇と、前月の同0.2%上昇の2倍となった。しかし、前年比は3.1%上昇となり、4月の3.2%上昇から減速、昨年10月以来7カ月ぶりの低水準となった。

 また、FRB(米連邦準備制度理事会)が重視しているコアPCE物価指数(値動きが激しいエネルギーと食品を除く)は、前月比0.1%上昇と、前月と同率の上昇となったが、市場予想の0.2%上昇を下回った。

 しかし、前年比は3カ月連続となる2.1%上昇となり、FRBが望ましいとするレンジ+1.5~+2%を依然、上回っている。このため、FRBがインフレ警戒を緩めることにはならないと見られている。

 ただ、FRBの2008年のコアインフレ率の予想レンジ(+2.2~+2.4%)をやや下回っていることから、金利先物市場では、早期の利上げの可能性は薄いと見ている。

 先週末のCBT(シカゴ商品取引所)では、統計発表後、FF金利先物の8月物は、FRBが8月5日のFOMC(公開市場委員会)で政策金利を現行の2.00%から2.25%に利上げする確率を前日(26日)と変わらずの26%としたが、前々日(25日)の67%からは大幅に下げており、早期に利上げする可能性は低くなっている。

 また、11月物は、10月28-29日のFOMCで、政策金利が2.25%に利上げされる確率を依然100%とし、秋以降の利上げを織り込んでいる。(了)

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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