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増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米CFTCと議会、原油・農産物先物市場の規制強化へ

【2008年6月4日(水)】 - 先週(5月29日)、CFTC(全米商品先物取引委員会)が、原油価格が投機目的で不正に操作された疑いがあるとして、実態解明への取り組み方針を発表したのに続いて、3日には、綿花など他の商品先物にも調査を拡大する意向を正式に表明した。

 原油先物市場については、CFTCは、これまで先物市場での建玉が定期的に報告されていなかったために取引の実態が闇の中にあった商品インデックス・ファンド(商品指数連動型ファンド)と、同様に場外での相対取引が中心で実態が明らかでない商品スワップ取引にメスを入れるとしている。

 ただ、当面は、インデックストレーダーや商品スワップ取引のディーラーから、建玉に関する詳細情報を7月から毎月1回開示するよう義務付けるだけとなる。

 商品先物市場に参加しているヘッジファンドでは、一部の悪質業者の摘発という荒療治までには至らず、当局が市場を注意深く監視しているという意思表示にとどまると見ている。

商品インデックス・ファンドは約19兆円市場

 商品インデックス・ファンドとは、エネルギーや農産物などの商品市況の動きを示す国際商品先物指数(インデックス)とそのファンドの基準価格が同じ値動きをすることを目指して運用する投資信託。

 その運用の仕組みは、先物市場で直接、商品先物を購入するケースと、商品指数に連動する仕組債で運用、間接的に商品先物に投資するケースがある。

 原油先物への投資比率が高い国際商品先物指数には、「S&P GSCI」と「Dow Jones-AIG Commodity Index」があり、こうした商品指数に連動するように運用するインデックス・ファンドの運用資産額は1800億ドル(約19兆円)に達している。

 その商品インデックス・ファンドの格好の投資対象となっているのが米国標準油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)である。7月物の先物価格は、5月22日に一時、1バレル当たり135.09ドルを付け、1年前に比べほぼ2倍にまで急騰。

 この異常事態を受けて、米議会では、原油高騰はインデックス・ファンドによる投機が原因と批判を強めているのだ。

ヘッジファンドや年金基金、個人投資家も原油先物投資

 しかし、ヘッジファンドや年金基金などの大口投資家もS&P GSCIなどの商品指数に連動する形で、先物の新規買いや期先物への乗り換えを強めており、また、個人投資家も「United State Oil Fund」(運用資産額6億ドル超)などのETF(上場投資信託)に投資しており、いるのが実態だ。

 いくつかのヘッジファンドは、先物取引業界の自主規制団体である全米先物協会(NFA)に、原油先物の売買や投資顧問を行う商品先物ファンド運用業者(CPO)や商品投資顧問業者(CTA)として登録している。AQRキャピタル・マネジメントやローン・パイン・キャピタル、チューダー・インベストメント、SACキャピタル・アドバイザーズなどがある。

商品スワップ取引も先物投資の隆盛に寄与

 また、年金基金やヘッジファンドが、原油などの商品先物への投資リスクをヘッジする目的で、投資銀行と商品スワップ取引(変動する商品の将来の価格(変動価格)を固定価格に置き換える取引)を行うが、このスワップ取引が大口投資家による先物投資の増大を招いているのが実態だ。

 しかし、商品スワップ取引市場が崩壊した場合、商品相場への悪影響も懸念する見方もある。2006年に、大手ヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズが天然ガスのスワップ取引に失敗、60億ドルの損失を出して破たんしたが、その影響で、一時、天然ガス価格が不安定化したケースがある。

米議会、機関投資家や投機筋に対する規制法案検討へ

 他方、米議会でも、上院国土安全保障政府問題委員会のジョゼフ・リーバーマン議員(コネティカット州選出)が5月20日に、機関投資家や投機筋がドルや株式への投資リスクをヘッジする目的で、原油や農産物などの商品先物市場を利用することを制限する法律を検討すると明らかにしている。

 さらに、先週、上院エネルギー・天然資源委員会のジェフ・ビンガマン(民主党、ニューメキシコ州)がCFTCに、投機の規制強化を求める書簡を送っている。

 これまで、CFTCは議会証言でしばしば、現在の原油先物価格の高騰は組織的な投機取引によることを示す明白な証拠はないとして、投機主因説を否定してきている。

 しかし、ビンガマン委員長は、「CFTCのこれまでの投機の役割を軽視する見方に懸念を持っている。不十分なデータに基づいて判断されている」と批判。

 特に、同委員長が重視しているのは、米国標準油種であるWTI原油の取引が、ロンドンの先物取引所ICEフューチャーズ・ヨーロッパ(旧IPE)や米国以外の店頭市場で行われており、CFTCは米国以外での取引に関するデータを十分に掌握できない点だ。

 また、同委員長は、投資銀行などの投機筋と航空会社や石油精製会社などの実需筋を別々に分類しないで調査する手法では、いくらCFTCが投機筋は原油高騰で主導的役割を果たしておらず、第二義的だと主張しても疑わしいと指摘している。

 これに対して、CFTCは先週発表したエネルギー先物市場の適正な価格形成を確保するためのイニシアティブの中で、英国の規制当局であるFSA(金融サービス機構)とICEフューチャーズ・ヨーロッパとの間で、WTI原油先物を含むエネルギー関連先物の建玉に関する情報を共有することで合意したことを明らかにしている。

 また、FSAは説明が困難なほどの異常な建玉がICEフューチャーズで見つかった場合には、直ちに、CFTCに通知することでも合意している。

署名な投資家ソロス氏、インデックス・ファンド規制を支持=原油高騰で

 ヘッジファンドのソロス・ファンド・マネジメントを率いる著名な投資家、ジョージ・ソロス氏も3日、米上院商業委員会で証言し、商品インデックス・ファンドが最近の原油高騰の要因になっているとした上で、原油先物市場への参加を制限するよう求めている。

 ソロス氏は、議会証言で、原油高騰は産油国の供給削減や、アジアや中東などからの原油需要の増大といったファンダメンタルズの問題のほかに、商品インデックス・ファンドが市場のボラティリティを高め、価格バブルを引き起こしている、と述べている。

バーナンキFRB議長、原油高を引き起こすドル安をけん制

 こうした議会や監督当局による先物市場規制に呼応して、ベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長も原油高騰の原因となっているドル安をけん制する発言を行っている。

 同議長は、衛星通信を通じて、スペインで開かれた国際金融会議向けに講演し、「ドル高がインフレとインフレ期待に対する影響について注視している」と述べ、ドル高がインフレ上昇を招き、インフレ期待の要因になる可能性があるとして警戒感を示した。

 その上で、同議長は現在の金融政策は、インフレを抑制し、経済成長を促す上で、適切な状況にあると強調、当面、ドル安を助長しかねない利下げは行わない意向を示している。

 市場では、FRBが利上げに転じるのは、インフレ期待が上昇すれば別だが、住宅価格の下落に歯止めがかかり安定したことが確認されたあとになると見ている。

 同議長発言を受けて、3日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)ではWTI原油先物の7月物は、前日比2.7%(3.45ドル)安の1バレル当たり124.31ドルと、5月15日以来19日ぶりの安値で引けている。

CFTC、綿花相場の乱高下の実態を調査=他の農産物先物取引も監視強化

 これまで、過去2年間にわたり、CFTCのエコノミストは、原油や小麦、トウモロコシなどの商品相場の急騰とヘッジファンドや年金基金などの投資家による投機との因果関係を否定してきた経緯がある。

 しかし、3月の綿花相場の異常な上昇とその後の急落を受けて、CFTCはようやく重い腰を上げた。この綿花相場の異常な取引というのは、3月5日にロンドンの先物取引所ICEフューチャーズ・USで、12年ぶりの高値に上昇した後、同20日までに26%も急落したというものだ。

 CFTCは、3月初めは、穀物在庫が数十年ぶりの低水準となっているのとは対照的に、綿花の在庫が供給過剰で高水準だったにもかかわらず、相場が急騰に転じ、その後、急落したのは異常な動きが背景にあった可能性があるとみているのだ。

 CFTCが3日に発表した農産物先物市場の投機防止対策でも、原油先物と同様に、インデックストレーダーやスワップディーラーから建玉に関する詳細な情報を7月から毎月1回定期報告するよう義務付ける。

 また、CFTCが当初検討していた、特定の農産物の先物取引に対する投機筋の持ち高制限(限度額)の引き上げを撤回、また、投機筋がリスクマネジメントの一環として行うヘッジ目的の先物/オプション取引には、持ち高制限を適用しないとする例外規定も撤回するとしている。

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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