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とれんど捕物帳 ドル円の上値を積極的に追うのは躊躇されるところ

配信日時
2017年12月16日(土)09:05:00
掲載日時
2017年12月16日(土)09:15:00

 今週は週後半にかけて一旦ドル買いが止まっていたものの、週末にはドル買いの動きが復活している。米税制改革への期待などからドルショートの調整はなお続いていたといったところ。ただ、それにしてもドル円の山は険しい。週前半は113.75円付近まで上昇し、115円の目標に向かってようやく5合目に到達といったところだったが、直ぐに撤収させられている。「これぞドル円の醍醐味、簡単じゃないから面白い!」とでも言って自身を諭したくもなるだろう。ちなみに115円は恐らく小山だろう。

 そんなことはさておき、撤収させられた最大の要因は、またしても米消費者物価指数(CPI)と、同日のFOMCであったであろう。CPIのコア指数は前年比で1.7%と前回から鈍化し、予想(1.8%)も下回った。インフレがまだ、FRBの目標に向こうとしていない状況が示された格好となった。

 一方FOMCは、政策金利こそ大方の予想通りに0.25%の利上げを実施してきたものの、それ自体は既に織り込みで反応はなかった。注目はFOMCメンバーの金利見通しだったが、こちらは9月時点と変わらずの年3回。一方、成長見通しは上方修正され、2018年は2.5%成長と9月時点の2.1%から上方修正している。ただ、インフレには慎重さが見られ、来年の見通しは9月時点から変化してない。コアPCEで1.9%を見込んでいる。

 FOMCについては、全体的にほぼ想定通りではあっただろう。しかし、改めてインフレに対する慎重な見方に市場はドル売りで反応したようだ。

 最近の市場は、足元の米経済は強くFRBの追加利上げ期待も高いが、インフレが上向くまではドルは買えないといのが共通認識となっている。いつからか10年債以降の米長期金利を見てドルを動かすというのが主流になっており、長期金利はインフレ期待を示すコア指標と位置づけられている。

 FRBの利上げ期待から2年債など短期ゾーンの利回りは逆に上昇し、長短の利回り格差は縮小が続いている。いわゆるイールドカーブのフラット化が進んでいる訳だが、過去の経験則からもドル円の場合、米国債利回りがフラット化している局面では上値が重い。従来、米国債利回りのフラット化は、先行きの景気減速懸念から発生していたためだ。

 ただし、今回は違う。景気回復により労働市場は、ほぼ完全雇用だ。しかし、それにもかかわらず、賃金の伸びは緩慢だ。そのため、家計の購買意欲が高まらず、企業は商品の値付けに強気に成れずにいる。米国のみならず日本など世界各国で同様の現象が発生しており、世界経済は未経験の局面にいる。

 新興国の台頭、グローバル化、ITの発達、高齢化、そして、過度な株主重視など様々な複合要因が重なったためとは思われるが、従来よりも失業率とインフレの負の相関係数の絶対値が小さくなっているのであろう。

 一応、ここで触れておくが、アラバマ州の上院補欠選挙の結果についてだが、市場の反応は短期的だったものの気掛かりなところだ。共和党のムーア候補が敗北し、民主党のジョーンズ候補が勝利した。これで上院の議席数は51対49の僅差となる。米税制改革法案には影響はないものと見られるが、今後もインフラ法案など財政拡大策を盛り込んだ法案提出が予定される。共和党上院議員で税制改革法案に唯一反対したポール議員が、この先も財政赤字拡大を伴う政策に強硬に反対するようであれば、これまで以上に議会は混迷を深める。トランプ大統領は来年1月30日の一般教書演説に向けて、インフラ拡充策を打ち出してくるものと思われるが、議会の混迷はドルにとってはネガティブ要因だ。

 さて来週だが、クリスマス週で、はっきり言ってやる気はないだろう。ボリュームも少なくなることが予想される。各国中銀の政策発表も今週で大方終了し、あとは日銀を残すのみだ。一部報道で出口論は時期尚早だが、一方で追加緩和は不要との説明を全面に出す可能性が伝わっていた。欧米の各国中銀が、賃金の伸び悩みからインフレは目標から下振れている状況ではあるが、景気回復が鮮明になっていることから出口戦略に舵を切るなか、日銀もそろそろ出口戦略を検討してもよいのではとの意見も出ている。金融緩和の副作用も心配される。

 ただ、米国もユーロ圏も消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除くベースでも前年比1%程度はある。日本はまだ、0%すれすれといった状況で、指標だけから見れば出口戦略の検討は時期尚早と言えよう。リーマンショック前の好景気時に、調子に乗ってフォワード・ルッキングとか言って、同じような過ちをしたのを忘れてはならない。日銀も英中銀同様に、“明確な”賃金上昇を確認してからでも遅くはないと思われる。来週は材料が少ないので、金融緩和の副作用などへの言及など、黒田総裁の会見次第では反応する可能性も無きにしも非ずだが、概ね無難な通過になるのではと思われる。

 経済指標も米住宅指標などがあるが、最近は反応しない。米PCEの発表も予定され注目かもしれないが、FOMCやCPIを通過したばかりでもあり、通常はさほど反応しないことが多い。

 最大の注目は米議会の動向であろう。つなぎの米暫定予算の期限を22日に向かえるが、この動向は要警戒だ。米政府機関閉鎖という最悪の事態は回避されると期待しつつも、それなりにもめそうだ。米税制改革法案とも絡みそうだが、1月のどこかの時点までのつなぎの暫定予算を再度可決することにより、税制改革法案は年内に成立させ切り離す可能性もありそうだ。上院では、一部民主党議員の賛同も得なければならない。

 週末のクリスマス休暇に向かって市場参加者も少なくなって行くことが予想されるが、米税制改革法案が無事に成立したとしても、ドル円の上値を積極的に追うのは躊躇されるところではある。今週末には反応していたが、基本的には法案成立は既に織り込んでいるはずだ。一方で株式市場が堅調なこともあり下値を攻めて行く雰囲気にもない。中立からやや下のスタンスを取りたいところではある。ドル円の想定レンジだが、111.00~114.00円を想定。スタンスは中立継続とする。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↑↑(→)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 →(↑↑↑)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美

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