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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

一筋縄ではいかないFOMCの金利政策

 NY金市場は12月に入ってから強い足取りを見せ、中心限月の2限月は4日の取引で1247.50ドルまで上昇した。NY金市場の中心限月がこの水準まで上昇するのは今年7月上旬以来のことになる。

 NY金は11月半ばにかけて下値を追う足取りを演じ、11月13日には1196.60ドルを付けるなど、約1か月振りの安値まで値を落としていた。しかし11月16日にクラリダ副議長が米CNBCのテレビインタビューにおいて、フェデラルファンド(FF)政策金利は中立水準に近づいている、との見解を示したことで、米国での追加利上げ打ち止め、もしくは追加利上げ回数の減少観測が強まったことが価格を押し上げ、1220~1230ドルのレンジへの回復が促された。

 11月19日から30日までは1230ドルを上値抵抗にしての推移が続いていた。それが、12月に入ってから騰勢を強め、1250ドルに迫る足取りを見せている。

 その背景が、12月1日に開催された米中首脳会談における、米中両国の間での米国による追加関税の発動猶予合意だ。米国は1月から中国製品に対する追加関税を現行の10%から25%に引き上げることを計画していた。それが、今回はこの追加関税の発動に90日間の猶予期間を設定することで合意に至った。

 米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が直接会談を行うのは約1年ぶりのことで、市場の事前期待は高まっていたものの、そこに追加関税の発動見送り期間の設定の報がもたらされたことを市場は歓迎したうえ、米中間の貿易摩擦の激化がいったんは見送られたことで世界経済に対する安堵感がもたらされたことが買いを呼んでいる。

 とはいえ、今回合意に至ったのは一時的な休戦であり、既存の関税措置が完全に撤回されるわけでではない。また、今後どのように話し合いを進めていくかなど、具体的なスケジュールは未定で、今後、貿易摩擦がまた激化に向かうのか、それとも打開に向かうのか不明で、見通しには不透明感の残る状況にある。

 このような中、金市場で価格をサポートする潜在的な要因となっているのが、やはり連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げ打ち止め観測だ。

 FRBによる追加利上げ打ち止め観測が強まったきっかけとなったのは、11月28日に公表されたFOMCの議事録や、この前後に行われたパウエルFRB議長、クラリダFRB副議長らによる発言だ。

 まず、パウエル議長の発言については、エコノミック・クラブ・オブ・ニューヨークで行われた講演において、一連の米利上げを受けて米国の金利は米経済成長を加速も減速もしない中立レンジをやや下回る水準に達した、と発言した。同議長は2か月前の時点では、金利水準が中立水準には程遠い、との見方を示していたため今回の発言を受けて、今後の追加利上げの打ち止め、もしくは追加利上げペースの鈍化見通しが強まった。その前日にはクラリダFRB副議長も同様に、中立レンジをやや下回ると、パウエル議長と一致する内容の発言を行っている。

 さらにこの両者の発言を後押しするように、公表されたFOMC議事録では、米国経済に対して引き続き強気な見方を示しながらも、今後数回の会合において声明の文言を修正する必要性が出てくる可能性があるとされたうえ、一部関係者がすでに中立に近いと指摘したことも明らかになった。
 
 今月行われる12月18、19日に開催されるFOMCでは追加利上げが見込まれているが、注目されるのが、来年以降の政策だ。パウエルFRB議長、クラリダ副議長、そしてFOMCの議事録から推測されるような追加利上げの打ち止め、または追加利上げペースの鈍化はあり得るのだろうか。

 その手掛かりになるのが、4日に行われたニューヨーク連銀のウィリアム総裁の発言だ。同総裁は米経済に関しては極めて好調に推移している、としたが、同時にFRBは来年も追加利上げを継続していく、との見通しも示した。

 パウエルFRB議長、そしてクラリダFRB副議長の発言を受けて追加利上げの打ち止め、またはペースの低下観測が広がるなかで行われた同総裁の発言は、先のパウエルFRB議長、クラリダ副議長の発言に対する市場の反応に対する修正を意識したとも考えられる発言だが、同総裁は米景気に対して強気な見通しを維持すると同時に、インフレ率は目標に近い水準で推移する、との観測も明らかにしており、受け取り方によっては追加利上げの打ち止めが近いことを示唆しているとも考えられなくはない。

 このような当局者による発言を読み解く中で手掛かりになってくるのが、実際に金利は中立金利に近づいているのかどうか、という点だ。そもそも中立金利というのは景気を刺激も後退もさせない金利、だが重要なのは中立金利はどの水準が適正か、という点だ。

 この水準の設定は難しく、FRB自身もその変更を行っている。FRBは金融緩和政策を実施するなかで、中立金利を3%としていたが、9月のFOMCにおいて2.5%~3.5%の幅を持たせる水準へと変更した。

 現在のFF金利の誘導レンジは2.00-2.25%であるため、この変更された中立金利水準を基にして考えると、FOMCの追加利上げ幅はこれまでのところ0.25%となっているため、もう一回追加利上げが実施されれば中立金利の最低水準に達することになる。パウエルFRB議長、クラリダFRB副議長の発言はこれを指摘したのみに過ぎない可能性がある。

 なお、FOMC議事録をさかのぼると10月17日に公開された9月FOMC議事録からは緩和的、との文言が削除されたのは、6月のFOMC直後に行われたNY連銀総裁の交代が影響していると考えられる。というのも、後任のウィリアムス総裁は利上げ消極派であり、中立金利は2.5%との見解を明らかにしていた利上げ消極派だからだ。

 このウィリアムス総裁の見解に加え、パウエル議長自身も利上げには消極的な姿勢を見せるなか、中立金利の水準が3%から2.5%‐3.5%へのレンジへ変更されると同時に、これによってFF金利の誘導レンジが2.5%という下限に近づいたため、金融政策は緩和的とは言えなくなり、議事録からは緩和的という言葉が削除された、という背景がある。

 とはいえ、中立金利にレンジが設けられたことで、どの水準まで追加利上げが実施されるのか、という見通しには不透明感が強まっている。従来のように3%を基準とするのであれば、少なくともあと2回、追加利上げを実施することになり、少なくとも来年も追加利上げが実施される可能性が残されることになる。下限に達すれば十分、と考えるのであれば12月の追加利上げで当面の追加利上げは打ち止めとなる可能性もある。

 その方向性を見極めるために重要になってくるのが米国の経済指標、そして当局関係者による発言だ。12月5日に予定されながらも、ジョージ・W・H・ブッシュ元大統領死去に伴う「国民追悼の日」と重なって延期されたパウエル議長の議会証言は今のところ、新たな日程は不明ながら、議会証言が実現された時、同議長がどのような発言を行うかが注目される。市場がすでに反応を見せているように、追加利上げの回数減少や打ち止めを示唆するものであれば、金市場にとっては再び追い風が吹く可能性が高まることになる。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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