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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

長引く貿易摩擦を受け中西部で挙がる不穏な声

 11月6日に開票された米国中間選挙では、上院は共和党の議席が過半数を占めたものの、下院では民主党が勝利した結果、ねじれ国会が成立することとなった。これにより、トランプ大統領による政権運営がこれまでよりも難航するとの見方が浮上しているが、このトランプ大統領にとり地盤を揺るがしかねない動きがある。

 その動きが見られるのが米中西部だ。米国の中西部は米国最大の穀物産地だが、今年は生育期を通して好天に恵まれ、大豊作の年となっている。米農務省(USDA)の11月時点での予測によると、18/19年度(18年9月1日~19年8月31日)間の穀物生産量は、コーンが前年度の146億400万Buに対し146億2600万Buへ、大豆生産量は前年度の44億1100万Buに対して46億Buといずれも増産になることが見込まれている。

 大豊作の年は供給量の増加見通しが強まり穀物の価格は抑制され、この傾向は次の年の作付を迎える時期まで継続することが可能性が高まる。今年も同様に豊作は確実との見方が強まるな8月中旬からコーン、大豆市場共に下方への圧力が強まるなか値を落とし、コーンに関しては9月下旬にかけて再び値を落とすという足取りを見せたうえ、その後も共に上値を抑制される足取りが続いている。

 ただ、今年に関しては同様に豊作となった前年度と大きな違いが見られている。コーンの場合は今年同様に豊作となったことで需給が緩んだ前年同期に比べて20セントほど高い水準での高下が続いているのに対し、大豆の場合は2006/07年度以来、初めて期末在庫率が二ケタ台に乗せた前年度に比べておよそ100~150セントも下落した水準での高下が続いている。

 これは大豊作、そしてそれ以上に米中間の貿易摩擦により米国の対中大豆輸出が大きく減少、いまだに米中貿易摩擦が打開に至っていないばかりか、今後の見通しに不透明感が強いことが背景となっている。

 トランプ大統領が中国製品に対する追加関税の賦課計画を発表した時点で、中国との間で貿易摩擦が生じる可能性は指摘されており、これに伴い米国の大豆輸出が大きな打撃を受けることは予測されていた。

 そのため、同大統領は貿易摩擦による影響を軽減させるべく、米国の穀物農家に対し120億ドルもの補助金を用意する計画を明らかにしており、USDAもその補助金の交付が行われていることを明らかにした。

 大手通信社が11月16日に明らかにしたところによると、USDAはすでに大豆、コーン、小麦などの主要産地であるイリノイ、アイオワ、カンザス、インディアナ、ミネソタの5州の対象農家に対し8億3780万ドルもの補助金の支払いを行っている。

 しかしながら、同じく同通信社は、この補助金を受け取った農家からは米中貿易摩擦の影響もあって発生した損失を補てんするには遠く及んでいない、との声も伝えている。

 また、農家側が受け取った具体的な金額は不明ながら、様々な報道が伝えている様子を見る限り、今回の助成金で受け取った金額は米中貿易摩擦による影響を相殺するには程遠い、という印象を受けるものが多い。ちなみに、全米とうもろこし生産者協会は米中貿易摩擦が農家に与えた影響は60億ドルに相当するとの見方を発表している。

 なお、米農務省は12月には第2弾となる残りの補助金の分配計画を発表する、としているが、同時に、2019年もこの制度が引き続き行われるかどうかは現時点では不明であることも明らかにしている。

貿易摩擦の打開の見通しがつかず、さらに貿易摩擦によって生じた損失を埋めるに十分な補助も見込めないなかでは、農家側の今後の穀物生産に対する不安感を強めるだけでなく、政権への不満という形になって現れてもおかしくない。

 さらに米農家にとって注意しなければならないのは、米国不在の間に中国と他国との穀物取引における結びつきが強まる可能性だ。

 実際、米中間の貿易摩擦により中国のブラジル産大豆輸入の動きが活発化している。中国通関当局によると、中国の10月のブラジル産大豆輸入量は前年同月の338万トンを大幅に上回る653万トンに達している。これは10月の総大豆輸入量のうちの95%に当たる量に達したのに対し、米国からの輸入量は6万6900トンにとどまっている。

 米中貿易摩擦の影響で中国側は米国からの輸入量に相当する分の補充に働く必要があったが、それがブラジルからの輸入で補うことができ、またその補充のために拡大されたルートが安定的に稼働するようであれば、米中貿易摩擦に打開の見通しが強まった時には、すでに中国とブラジル間の大豆取引における結び付きが強まり、中国の米国産大豆への依存度は貿易摩擦以前よりも低下している。

 米国中西部の農家に対する補助金は2019年に関しては今のところは予定されていない、と伝えられており、米中貿易摩擦による直接的な影響を受けている農家への補助が十分に行き届かない可能性もある。

 そうなればトランプ政権に対する米中西部の不満が募るのは必至と見られ、共和党は中西部で下院7議席を失う結果となった中間選挙以上の敗北をきする可能性も高まるだろう。

 一方の中国でも米中間の貿易摩擦の影響で国内の大豆の輸入価格が上昇している。今のところ、大豆の輸入価格の上昇が豚肉価格を押し上げるほどの影響は見られていないものの、豚の飼料となる大豆粕価格が上昇すれば、豚肉価格の上昇さらには物価に対する押し上げ圧力を強めるとみられる。

 月末に行われ20カ国・地域(G20)首脳会合での米中間の首脳会談でどのような話し合いが行われるか、トランプ政権の強硬的ない姿勢もあってまだ見通しには不透明感が強い。だが、米中貿易摩擦が長引くようであればトランプ大統領自身、足元をすくわれるリスクが着実に高まっている。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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