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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

原油市場の上昇基調回復は困難か

 NY原油価格は下値を探る足取りを継続している。10月4日の取引で期近は76.47ドルまで上昇したが、その後は一転して下落。70、65、60ドルといった節目を下値支持として意識する動きを見せながらもその節目を割り込み、さらに下落する足取りが続き、20日の取引では52.77ドルと昨年10月以来の安値を更新している。10月4日の高値から約1か月半で23.70ドルの下落を記録したことになる。

 ここまでの大きな下落幅を記録する原因は原油価格が70ドルを超える水準まで上昇したことにある。この原油価格の上昇を促す要因となっていたのは、石油輸出国機構(OPEC)による協調減産とトランプ大統領によるイランへの経済制裁による供給引き締まりという2大要因だった。

 そのうちトランプ大統領によるイランへの経済制裁は米国が5月にイラン核合意を離脱し、これに伴って米国が再発動させたものである。8月7日の第1弾に続き、11月5日からは第2弾の経済制裁が発動されたが、第2弾の発動時には経済制裁の対象にイランの原油・エネルギ-部門も含まれることから、事前には大手銀行筋から「11月のイランの原油輸出が日量100 万バレル未満に落ち込む可能性がある」との見通しが示されたこともあり、同国からの供給減少に対するパニック的な懸念も生まれて原油価格が押し上げられた。

 このようなパニック的な買いが生まれたのも、そもそもOPECとロシアという主要産油国による協調減産がベースにあったからだ。OPECおよびロシアによる協調減産はその遵守率が100%を超える水準に達するなど、産油国側から見れば順調に行われており、これが世界的な需給の引き締まりに対する警戒感を強めていた。そこにイランへの経済制裁という新たな需給引き締まり要因が加わった。

 しかしながら、原油価格が年初来の高値まで上昇した後は金融市場全体に広がったリスク回避ムードに、原油独自の需給見通しが加わったことで、今に至る下降トレンドを描いている。

 まず、リスク回避ムードの動きに関しては、原油価格が年初来の高値を付けた直後、米国の長期金利上昇を受けて米国株式市場が急落に転じたことをきっかけにして世界経済に対する懸念が強まったが、長引きつつある米中貿易摩擦に対する警戒感も巻き込んだ結果、リスクを回避する動きはより一層強まり、金融市場に加え、原油市場から資金が流出する動きが活発化した。

 このような金融市場の動きに加え、原油市場ではサウジアラビアが増産に向けた発言を行っていることに加え、ロシアの増産が明らかになったことが更なる価格下押し要因となった。

 2016年11月には過去最高水準となる日量1072万バレルの産油量(以下、日量)を記録したサウジラビアは、その後は石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアを中心とした 非OPEC加盟国と協調して減産体制を強いてきたが、ここに来て増産していることが明らかとなった。

 今月2日に大手通信社のブルームバーグ・ニュースが伝えたところによると、10月のOPEC加盟国15か国の産油量は3333万バレルで前月に比べて43万バレルの増加となった。この33万バレルの増産分のうち15万バレルはサウジアラビアによる増産であり、サウジアラビアの10月の産油量は1068万バレルに達していたと伝えられている。

 この増産は唐突に行われたものではない。実際、10月上旬の原油価格上昇時にもサウジアラビアとロシアは共に増産の意向を明らかにしていた。サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は10月に産油量を1070万バレルまで拡大し、11月にはさらに増産する意向を示していたうえ、ロシアのプーチン大統領も10月3日の時点で、原油価格を抑制するためにすでに40万バレルの増産を実施していたこと、さらに20万~30万バレルの増産の用意があることを明らかにしていた。

 その当時は両国の増産発言に対する原油市場の反応は見られなかったが、ここに来てサウジアラビア、ロシアと世界の2大産油国による増産と、これに伴う需給緩和観測がじわじわと効いてきている。

 なお、トランプ大統領は原油価格が上昇基調にある時点で原油の協調減産を批判する発言を度々行っている。サウジアラビアとトランプ大統領の間で話し合いが行われたかどうかに関しては不明だが、サウジアラビアの増産はトランプ大統領の意向に結果として応じた形になっている。

 この2大産油国の増産に加え、米国が対イラン経済制裁の除外国を発表したことで、イランからの石油供給引き締まり懸念が大きく後退したことが、原油をさらに下押す要因となっている。

 イランに対する経済制裁に関しても、経済制裁が実施されたとしてもイランとの石油取引を継続させていてもその取引量がその前の半期に比べて減少していれば制裁対象外とされた2012年の経済制裁時のように、経済制裁自体がイランの石油輸出に対する大きな効果を見せるかどうか不透明感が強かった。

 今回、米国政府はイランからの原油輸入削減に取り組んでいるとして、日本、中国、インド、イタリア、ギリシャ、韓国、台湾、トルコの8カ国および地域に対し一時的に原油取引の継続を認める考えを明らかにしているが、その認定の基準が2012年時と同様であれば、今後もイランからの原油輸入が継続的に行われる可能性が高い。

<注目されるロシアの動向>
 イランに対する経済制裁が実際の同国の原油輸出に打撃を与えるほどの影響が回避されるとの見方が強まるなか、世界の石油需給という視点から注目されるのがロシアの動向だ。

 12月6日にOPECは総会を開催する予定となっており、この時には減産協調に関する話し合いが行われると見通しとなっている。ただ、この時にロシアが協調減産に合意するかどうか見通しに不透明感が強い。というのも、ロシア側からは協調減産に対応するかいなか、まだその意向が明らかにされていないからだ。

 ロシアが減産対応に対する明確な姿勢を明らかにしていないのは、ロシア独自の事情がある。というのも、原油価格が70ドルを超える水準まで上昇する一方、ロシアの通貨ルーブルが下落した結果、今年第3四半期のロシアのエネルギー輸出は好調を記録しているからだ。

 フィナンシャル・タイムズ紙はムーディーズ社のDenis Perevezentsev氏によるとして、ロシアの石油会社は2018年度には税抜き前時点で前年度比30から40%の増収が見込まれる、との見方を示している。また、2018年上半期には前年同期比4倍超の3090億ルーブルを計上していたロシア最大の石油業者であるロスネフチは、引き続き第3四半期(7~9月)の純利益も前年同期の3倍超となる1420億ルーブル(21億4500万ドル)だったことを明らかにしている。

 つまり、ロシアは米国から経済制裁の対象とされているものの、経済制裁が一因となってルーブルが下落したことにより、これが石油産業の利益の大幅増につながっている。

 ただ、ロシアにとって両手を挙げてこの状況を喜べるわけではない。というのも、米国でロシアに対する経済制裁体制が強化される可能性が残されているからだ。

 米国ではロシア国内での100万ドルを超える新規石油授業の参加禁止を盛り込んだ経済制裁案の検討も行われているが、シェール原油などの開発技術を持たないロシアにとって、経済制裁の実行により将来的な産油量が先細りとなるリスクがある。

 米国からの経済制裁が行われるなか、ウォールストリートジャーナル紙はロシアは脱ドル依存を実現化しつつあると報じているものの、米国による経済制裁は長期に及ぶ可能性がある。

 それだけにロシアにとって利益が上がる間に出来るだけの利益を確保しておきたい、というのが本音と考えられ、OPECとの協調減産に改めて合意する可能性は低下していると見られる。

 12月6日のOPEC総会に向けて、協調減産で合意に至るかどうか、関心が高まるところだが、イランに対する経済制裁の免除、ロシアの協調減産への合意に対する見通し不透明感など、さらにはOPECやIEAによる2019年度の供給超過見通しなど、様々な弱材料が台頭しているため、原油価格が改めて上昇基調を築くのは困難の度合いが高まって見られる。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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