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需給動向が明らかにした金の上値の重さ

 10月に入ってからNY金は大きく値を引き上げる場面が見られながらも、その後は同月26日に1246.00ドル(指標の期近12月限)の高値を付けたとはいえ、これも一時的な動きにとどまり、概ね1240ドルを上値抵抗にしての推移にとどまっている。

 NY金は年が明けてから4月下旬までは1300ドル台での推移が続いており、4月下旬には1月下旬に付けた1370ドルに迫る動きも見せていた。しかし、その後は4月半ば以降は約4ヵ月に渡って値位置を切り下げ、8月16日には1167.10ドルの安値を付けたた。

 1167.10ドルまで下落した後は売られ過ぎに対する警戒から買い戻されながらも1220ドルまでの戻りがせいぜいで、10月11日に大きく上昇するまでは概ね1190ドル~1220ドルのレンジ内での高下が続いていた。

 このような金価格の低迷は米国での追加利上げ観測の強まりを受けてドル高傾向が強まったこと、追加利上げを肯定する米国経済の好調さと、これを受けたリスク選考の動き、追加利上げが金利を産むドル、債券等の金融資産にとって強気材料になるのに対し金利を産まない金にとっては買いを刺激する要因にはならなかったことが背景となった。

 そしてこの価格が低迷していた時期に投資用需要が低迷していたことがワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した今年7月~9月月間の金需要動向で明らかとなった。

 今回の報告で注目されるのは、上場投資信託(ETF)関連需要の大幅な減少だ。このETF関連需要は前年同期に比べて103.2トンもの減少を記録している。

 さらに注目されるのがこのETF需要は北米地域で73%もの減少を記録したと報告されている点だ。

 前述のように金ETFへの投資需要が大きな減少を記録したこの時期は、追加利上げ観測と、これに伴って株式市場、債券市場、ドルへと資金の流入が続いた時期と重なる。ダウ平均は7月に入ってから9月末までの間は強い足取りを演じ、10月初旬も堅調地合いを引き継ぎながら3日まで最高値を更新する足取りが続いた。

 今年のダウ平均の動きを振り返ると、1月下旬にかけ上昇し2万6616.71ドルまで上昇した後は、2月2日の取引で米長期債の上昇を懸念した売りが膨らみ700ドル近くの下落を記録。その後は6月下旬まで2万5500ドル付近を上値抵抗にする頭の重い足取りが続いていた。

 7月を迎えてドル高指向が強まるなかダウ平均も再び値位置を切り上げて10月3日に2万6951.81ドルの高値を付けるまでは短期的な高下は見られたが、概ね上昇基調を維持した。

 この動きは、この間低迷を強いられていた金市場とは対照的な動きであり、それだリスクオンの地合いが強かったことが改めて確認出来る。

 なお、2018年7~9月期における金の総需要自体は弱気だったわけではない。全体の需要は前年同期に比べて1%増加し、およそ964.3トンとなっており、ETF関連需要の大幅な減少を相殺するだけの需要も見られている。

【金の項目別の需要動向】
 需要の動向を項目別に見てみると、最も需要が拡大したのがバー・コイン需要で前期比では65.1トンの増加を記録して298.1トンに達したほか、宝飾用需要も前年同期に比べて47.9トン増加した584.4トンと大幅な増加となった。

 また、公的部門の需要も前期比で26.6トンと大きな伸びを見せて148.4トンに達しており、金ETF以外の需要は概ね強気だったことが窺われる。

 ただ、投資の目的を考慮してみると、ETF投資自体は価格の値上がりを期待して行う傾向が強いのに対し、バー・コイン需要、どちらかというとリスクへの備え、つまり守りの投資という側面が強い。

 また、宝飾用需要に関しては価格の下落が需要増加の直接的な原因と見られる。

 米国の追加利上げを背景とした新興国からの資金引き上げの動きに伴う新興国経済に対する懸念や、米中貿易摩擦が世界経済に与える影響が懸念されるなか、守りの投資に対する意欲の現れると見られるが、ここに価格下落という要素が加わったことで需要の大幅な増加が見られたのだろう。

 そのため、米中貿易摩擦打開に向けた動きの高まりや、米国の追加利上げ打ち止め観測など世界経済や新興国経済への懸念が弱まる動きが見られるようであれば、守りの資産を求める動き、つまりバー・コイン需要が後退する可能性もある。

【米追加利上げ打ち止め意識強まれば金市場に資金還流】
 今回のレポートでは追加利上げを背景としたドル高指向の動きが金ETF投資需要の大幅な低下をもたらし、これが価格を引き下げる一方、価格の低迷が逃避買い需要を促すという構図が示された。今年に入ってから2度、米長期債の金利上昇に対する懸念が株価の急落をもたらす場面が見られており、米国では今後は追加利上げに加え、追加利上げの打ち止めに対する意識も強まると見られる。

 そうなればドル指向も弱まることが予想され、これが金市場へと資金が還流する動きを呼び起こす可能性もある。ただ、それなれば7月から9月間に渡って金価格をサポートする要因となっていた需要が後退するリスクが高まると予想され、金価格の上昇も一筋縄ではいかないと思われる。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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