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株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド

低迷する原油価格に浮上する価格回復の可能性

 NY原油は下落基調を継続し、下げ止まり感がない。NY原油の中心限月である12月限は10月3日に76.90ドルまで上昇していた。この日は76.41ドルで取引を終え、翌日には上値警戒から修正が入りながらも74.00ドルが下値支持線として意識されるなど、高値圏を維持した。

 しかし10月10日を境にしてNY原油の地合いは軟化に転じており、中心限月12月限は、時折買い戻されるなど修正が入りながらも総体的には弱い足取りを継続。23日には約2か月ぶりに66ドルを割り込んだうえ、30日の取引では65.33ドルと再び66ドルを下回る水準まで値を落としている。

 NY原油の弱い足取りの背景となっているのは、米中間の貿易摩擦が長期化し、世界経済に与える影響に対する見通しに不透明感が強まっていることが挙げられる。

 また、米国で長期債の利率が3.2%台にまで上昇したことを受けて金利の上昇が米国経済に与えるマイナスの影響に対する懸念が強まると同時に、株式市場が急落場面を演じ、リスク回避の動きを促したこともエネルギー市場から資金が流出する一因だ。

 さらに、米国の経済制裁によりイランからの原油輸出の落ち込みが警戒されるなか、同国からの供給量減少に対応するためにサウジアラビア、ロシアと2大産油国が増産していることも価格を下押す要因として挙げられる。

 5月にトランプ大統領がイラン核合意からの離脱を表明し、イランに対する経済制裁を発表したことで同国からの原油輸出減少懸念が強まって以降、サウジアラビアは増産体制を敷いている。

 石油輸出国機構(OPEC)の月報によると今年1月は997万6000バレルだったサウジアラビアの産油量(日)は9月には1051万2000バレルに増加している。

 なお、増産を実施しているのはサウジアラビアだけではない。OPECと強調して減産を実施しているロシアの産油量(日)も今年1月の1114万バレルから9月には1154万バレルに増加しているとOPEC月報は伝えている。1月~9月間でサウジアラビアとロシアだけで約90万バレル増産していたことになる。

 このように2大産油国が次第に産油量を拡大させるなか、米国では原油在庫が9月半ば以降、拡大傾向にある。これも10月に入ってからの価格下落の一因になっている。

 米中貿易摩擦が中国経済に与える影響を含め、世界経済に与える影響がエネルギー需要の見通し不透明感を強めると同時に、世界2大産油国の増産、さらには米国での在庫拡大といった状況が価格の下落を促す主因になっていると考えられる。

<サウジアラビア、ロシア以外の要因とは>
 このような中で、在トルコ・イスタンブールのサウジアラビア領事館でジャーナリストのカショギ氏が殺害されたのではないか、という疑惑が発生し、当初、関与を否定していたサウジアラビアは10月20日に誤って殺害してしまった、と発表した。

 この事件が注目されるのは、これをきっかけにして米国がサウジアラビアに対して経済制裁を実施するかどうか、という点だ。トランプ大統領にとって目下の最大の注目事項は11月6日の中間選挙だろう。

 この中間選挙の結果は大統領によるこれまでの政策に対する評価を示しており、この選挙の結果次第では残り2年の任期における政策実現のし易さが変わってくる。さらには、次期大統領選にも繋がる選挙となるだけに、トランプ大統領がこの中間選挙に勝つための政策を突然、発表する可能性は否めない。

 ただ、サウジアラビア側としては、サウジアラビアのエネルギー・産業・鉱物大臣であるファーリハ氏は今後も1100万バレル(日量)の産油量を目標にして増産体制を維持する旨を伝えるなど、石油需給の安定に向けて尽力する姿勢を示すなど、対抗的な措置を取る意向はないことを明らかにしている。

 トランプ大統領がどのような政策を発表してくるか、常に注意は必要であり、この事件に誰がかかわっていたかが注目されるところだが、このカショギ氏事件がサウジアラビアの石油政策に大きな影響を及ぼす可能性は今のところ低く、同国から当面の間は安定的な供給が続くと予想される。

 その一方で、石油の供給という点での不安材料も見受けられる。その筆頭として挙げられるのがベネズエラだ。年間平均産油量(日量)が2016年は215万4000バレル、2017年は191万6000バレルを記録していたベネズエラの産油量は、国内の混乱が影響して急激な落ち込みを見せている。

 今年1月時点の同国の平均産油量(日量は160万1000バレルと、それでも過去2年に比べて大きく減少した状態にあったが、それが9月時点では119万7000バレルに落ち込んだ。

 同国の場合、最も懸念されるのは同国の産油量は回復が見込めないばかりか、今後も減少の一途を辿る可能性が高い、という点だ。

 というのも、同国の減産の原因が一時的な障害によるものではなく、同国の政治情勢の影響によるものだからだ。ベネズエラではマドゥロ大統領が政権を握っているが、政策の失敗により極度のインフレや物不足に陥っている。

 ちなみに10月9日に国際通貨基金(IMF)が発表した見通しによると、年末までに同国のインフレ率は137万%へと急激に上昇すると見られるうえ、2019年には1000万%に達することが見込まれている。

 今後、どのような形でベネズエラ情勢の立て直しが図られるか、見通しには不透明感が強い。しかしながら、マドゥロ大統領が交代する場面が見られるとすれば、ここまでの混乱を引き起こしている同大統領が自らその地位をすんなりと譲るよりも何らかの混乱を経て換わる可能性が高いのではないだろうか。

 そうなった場合、ベネズエラ国内が混迷を極めるのは避けられず、石油市場においてはその混乱に伴う同国の石油供給懸念が強気要因として働くことになりそうだ。

 ちなみにサウジアラビアは産油量の余剰生産量を130万バレル、としている。そのため、万が一、ベネズエラが石油生産不能に陥ったとしても、理論的には同国の減産分はサウジアラビアの増産でカバーすることが可能だ。
 
 しかしながら、増産を実施するために余剰生産能力を拡大させるには応分の投資が必要であり、そのコストは価格に転嫁されることになるため、余剰生産能力の拡大が直ちに原油価格の下落につながるわけではない、という点に注意が必要だろう。

 また、このベネズエラ情勢に加えOPECの姿勢に変化が生じる可能性も注目される。というのも、OPEC加盟国と非加盟国による共同閣僚監視委員会(JMMC)は10月25日付けで在庫の増加や世界経済の見通し不透明感を指摘したうえで、方針の転換を図る必要性が生じる可能性を示しているからだ。

 現在、NY原油は66~68ドルのレンジ内まで低下し、サウジアラビア、ロシアという2大石油大国の増産と米国内の原油在庫拡大という状況下にあっては、上値の重い足取りが続くことが見込まれる。

 また、カショギ氏事件をきっかけにしてトランプ大統領が今後、どのような政策を発表するかに注意が必要とはいえ、サウジアラビアが石油市場の需給安定を保持する姿勢を見せていることも市場の重石になってきそうだ。

 ただ、ベネズエラ情勢はその時期には不透明感が強いながらも緊迫度が日増しに増している状況といえ、引き続き同国の情勢並びに産油状況には注意が必要であると同時に、在庫が重石となって原油価格の低迷が続くようであればOPECが方針転換を迫られる可能性も浮上している。

 当面は上値の重い状況が続くことになりそうだが、ベネズエラ、そして行き過ぎた協調減産の修正に取り組んでいるOPECの方針に転換があるのかどうか、注意が必要となっている。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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