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早くも伸び悩むNY金は1250ドルを達成できるのか

 NY金は今月11日の取引で大きく上昇し、8月13日以降、上値抵抗となっていた1220ドルを一気に上抜いた。この日、中心限月の12月限が記録した上げ幅は前日比で34.2ドル高に達した。翌12日は急伸後の修正場面を演じながらも、今週も引き続き緩やかに値位置を切り上げる動きを見せているとはいえ、1240ドルに近づくと上値が重くなるなど、伸び悩みの様相も見せつつある。

 NY金が11日に大きく急伸したのは、米長期金利の急激な上昇がきっかけとなった株安。米10年債の利回りは9月19日には3%台に達しており、この時点から金利上昇に対する警戒感がじりじりと強まっていた。

 金利が上昇することによって市場の流動性低下が予想され、米国経済にとってのブレーキになりかねず、その懸念から株式市場を初めとするリスク資産市場から資金を引き上げる動きが活発化する可能性が高まる。金は投機家の買い戻しに加え、株安、ドル安から、「安全資産」、「資金の逃避先」としての側面が見直された。

 米10年債の金利は9月18日に3%台に達した後は伸び悩みとなっていたが、今月4日には前日の3.072%から3.214%へと一気に上昇。この時点では市場では警戒感が強まりつつも、この金利の上昇が一時的なものかどうかを見極めムードが強かった。

 しかし、その後も金利は低下しないどころか9日には3.24%に上昇。10日も引き続き3.210%と3.2%台での推移が続いたことで、金利上昇が経済に与える影響に対する懸念が深まり、株式市場から資金が一気に流出した。

 この10年債の金利と株式市場の動きを受けてNY金市場には安全な投資先としての需要が集まったことが、11日のNY金の急伸の背景となった。

 ただ、中心限月が8月2日以来の1230ドル達成に至るほどにNY金市場が強い足取りを見せたのは、米国初の世界的な株安、米中間の通商問題が暗礁に乗り上げるなか、この貿易摩擦が米国、そして世界経済に与える影響に対する警戒感、そしてNY市場でのファンド筋を含む大口投機家の売り込み、といった要因が背景にあったと見られる。

 ちなみにNY金市場におけるファンド筋を含む大口投機家の売り越し数は10月2日時点では2万1800枚だったが、これが9日時点では3万8175枚まで膨らんでいる。4週間前の9月11日時点の売り越し玉は7590枚だったため、NY金市場ではこの4週間で大口投機家が如何に売り込んできたかを窺うことが出来るだろう。

 NY金は8月13日以降は米国での追加利上げが重石となるなか1220ドルを上値抵抗にしての推移が続いていた。

 金利の上昇は、金利を生みだす債券、ドルといった米国の金融資産を保有することで利益を得られる可能性を高める一方、金利を産まない金は追加利上げの恩恵を受けない、との見解が重石になって価格の浮上を遮ってきた。

 特に米国では8月後半に2020年内の打ち止めの可能性が示されたとはいえ、当面は追加利上げを継続する方針であることが示されたことが金市場にとって上値を抑制する要因となってきた。

 とはいえ、米連邦準備制度理事会(FRB)は経済に対して中立的な金利の水準を3.0%と見ているため、10年債の金利がこの水準を一気に超えてきたことで市場の風向きが変わる可能性も出てきている。

 ただ、NY金のこの強い足取りが継続的なものかどうか、という点に関しては注意が必要だろう。というのも、そもそも11日の取引で急伸場面を演じたとはいえ、その直前のNY金市場はファンド筋を含む大口投機家の売り越し玉数が大幅に膨らんでいたため、価格に上昇圧力が強まれば売り方が買い戻しを迫られ、踏み上げ場面を演じざるを得ない、という環境にあったからだ。

 また、11日には831.83ドル、12日には545.91ドルと2日連続で急落したダウ工業平均株価は、13日に自律反発に転じた後、週明けの取引で89.44ドル下落しながらも、続く16日の取引ではこの発表の米証券会社やヘルスケアなど大型株の決算が良好だったこともあって買い戻されており547.84ドルの上げ幅を記録するなど、戻り歩調を維持している。

 11、12日の急落時にはパニック的な売りも見られていたが、7月~9月間の米企業の決算に大きな問題が見られないようであれば、金利上昇に対する警戒感がくすぶりながらも、米株式市場は落ち着きを取り戻していくことが想定される。そうなれば、NY金価格上昇を促す要因となっていた逃避買い需要も後退していく可能性が高い。

 なお、金に対する需要を示唆する指標として注目される金の上場投資信託(ETF)のうち最大規模のSPDRの残高の推移を見てみると、金利の急上昇をきっかけにした株安・金高場面が見られる直前の10月9日時点では730.17トンまで落ち込んでいたが、その後は段階を経て拡大し15日時点では748.76トンに達している。

 ただ、16日、17日と748.76トンにとどまり、その後の伸びは見られていない。そのため、長期金利の上昇による株安・金高という場面では金に対する需要が膨らんでいた様子が窺われたが、その需要も一段落ついた可能性も出てきている。

 まだ様子を見る必要はあると思われるが、金ETF残高が今後も伸び悩むようであれば、金に対する逃避買い需要には一巡感が強まることになり、金価格が持続的に上昇する可能性を支える根拠を失うことになる点に注意が必要だ。

 ダウ工業平均株価は17日に再び下落に転じ、この株安と米住宅指標の弱気な内容を受けて米長期金利が一時的とはいえ低下したうえ、その後も上昇率が抑制されたことは逃避買い需要を後退させることになりそうだ。

 また、トランプ大統領による金利引き上げを巡っての度重なるFRB批判が見られながらも、17日に公開された連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では今後も、漸進的な利上げが適切との見解で一致したことが明らかになっており、今のところは今後の追加利上げ方針に変更は見られない。

 急激な金利の上昇によって大幅な価格の上昇を演じたNY金だが、株式市場の下落に反応して早くも金利が和らぐ動きを見せ、米株式市場にも下落に対する抵抗感が強まっている。逃避買い需要の盛り上がりにも欠ける状況もあり、ここからさらに価格帯を切り上げていくには勢いが乏しく1250ドルの達成に向けての道のりは遠のいた印象が強まっている。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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