FX外国為替情報のKlug(クルーク)
為替、海外投資でハイリターンを得るためのニュース、レポート、コラムを掲載

原油価格高もみ続くも波乱の可能性も

 NY原油は高値圏での往来が続いている。今月3日の取引では中心限月の11月限は76.90ドルの高値まで上昇。その後は、ロシアとサウジアラビアが秘密裏に増産で合意したと伝えられたことを受けて4日に急落したが、72ドル割れに対し強い抵抗を見せる足取りが続いている。

 そもそも、年初来は60ドル台前半で推移していたNY原油が70ドル台後半に達するまで上昇した理由は、米国によるイランに対する経済制裁にある。

 米国は5月8日にイランの核開発に関する「共同包括行動計画(JCPOA)」からの離脱を発表したが、これに伴って外国人や外国企業が米国人や米国企業を介さずにイランと取引を行うことが制裁の対象となり、実際、トランプ大統領自身もイランと取引をするものは米国との取引ができなくなる、としている。

 この経済制裁は8月7日から第一弾が、11月5日からは第2弾が実施される計画となっており、11月5日から開始される第2弾に関してはイランの石油輸出に対する経済制裁が含まれているうえ、米国はイランの石油輸出をゼロになるまで徹底するとの姿勢を見せていることから同国からの供給減少に対する懸念が強まっている。

 米国がJCPOAの離脱を発表した5月以降のNY原油の足取りを見てみると、この米国によるイラン核合意の離脱発表を受けてNY原油は70ドルを突破した。その後は、協調減産を行っているOPECが過剰な減産を解消し減産順守率を100%に戻すことで増産を実施することに合意したほか、これに伴うサウジアラビアの増産、米中貿易摩擦を受けたエネルギー需要の低迷などといった弱材料に価格が下押される場面が見られながらも、価格が下落したところでは、経済制裁に伴うイランからの原油供給減少に対する警戒感が蒸し返されて値位置を再び切り上げる足取りが続いている。

 特に9月半ばから10月初めにかけての時期には米国によるイランの経済制裁第2弾が11月5日に迫るなか買いの勢いが強まりおよそ2週間という期間内で68ドル台から76ドル台へと大きく価格が上昇した。NY原油がその後も72ドル以上という価格水準での高下し続けていることは、それだけ供給引き締まりに対する警戒感が強いことを示しているのだろう。
 
 では実際にイランからの供給量が減少しているのだろか。今のところイラン産原油輸入の動きの後退、そしてフランス、韓国によるイランからの原油購入の完全停止が伝えられるなど、経済制裁に対する警戒感からイラン産原油を購入する動きが後退して居る様子が伝えられている。

 これに伴いイランの原油輸出量(日量)は、米国によるJCPOA離脱直前は250万バレル前後に達していたが、それが7月には232万バレルに減少した。今月8日に新たにロイター社が発表したところでは10月第1週は110万バレル程度まで減少しているようであり、経済制裁に伴い同国の輸出量が次第に減少を強いられている様子が窺われる。

【イランの産油量に大幅な減少は見られず】
 ただ、このように輸出量は減少しているとはいえ、この輸出量の減少が直ちにイラン国内の減産に結び付いているわけではないようだ。というのも、OPECが9月に発表した月報でイランの産油量(日)は米国によるJCPOA脱退直後の6月は379万バレル、その翌月の7月は373万4000バレル、続く8月は358万4000バレルと発表されており、減産は認められるものの、その量はごく僅か、15万バレルにとどまっているからだ。

 2017年度の平均産油量(日量)は381万1000バレルだったため、産油量は減少傾向にあるものの、減少ペースは急激とは言えない。

 このイランの石油生産を支える主因となっているのが、イランにとっての主要相手先国による同国からの石油輸出継続意向だ。なかでもイランにとって中国に次ぐ第2位の輸出相手先国であるインドはイランからの石油輸入を続ける計画を示している。

 インドのダルメンドラ・プラダン石油・天然ガス大臣兼技能開発・起業促進大臣は、インドの石油業者2社は11月に入ってからもイランから石油輸入を行う予定であることを明らかにしている。

 また、イランにとって最大の輸出相手先国である中国もイランからの原油輸入を完全に断ち切るわけではないようだ。中国は8月には米国からのイラン産石油輸入を停止させるよう求めを拒否している。なお、中国側はイランからの原油輸入を増やすわけではないが、減らす意向もない、との姿勢を取っている。

 米国での追加利上げでドル高傾向が強まるなかイランの通貨が経済制裁に対する懸念もあって下落していることがイランの石油輸出を有利にしている側面もある。

 これに加え、2012年の経済制裁時にも完全に輸入を停止させなくても制裁対象外とされた過去の経緯もイランからの石油輸入を完全に停止させる必要はないとの認識を持たせる一因になっていると考えられる。ちなみに2012年の経済制裁時にはイランとの石油取引を継続させていてもその取引量がその前の半期に比べて減少していれば制裁対象外とされた。

 フィナンシャルタイムス紙によると、米国からの制裁を逃れるため、欧州の大手石油企業はすでにイランからの撤退を決定している。しかしながら、インド、中国らの主要消費国が引き続きイラン産原油に食指を動かすなか、石油輸出の大幅な減少を目指すことで引き起こされる経済制裁の効果も米国が目指すほどの効果が発揮されるかどうか不透明感が強まっている。

 イランに対する経済制裁に対する懸念がこれまでNY原油を押し上げる要因になっており、今後も経済制裁懸念を手掛かりにした買いを受けて72ドルを下値支持とする足取りを継続する可能性がある。特にトランプ大統領がこれまで対外関係で強硬な姿勢を見せ、米中間の通商問題においても実際に追加関税の発動に至るなど、予期しなかった行動を実行してきた経緯から、イランに対する経済制裁に対しても強い姿勢で臨んでくる可能性が懸念を深める一因となっている。

 ただ、ここに来て米国側がエネルギー高を抑制するため、イラン制裁の一部緩和を検討しているとも伝えられている。また、米国と貿易問題で厳しい対立を続けている中国、そしてインドが引き続きイランとの石油取引を行う姿勢を見せていることもあり、イランへの経済制裁の実際の効果は限られたものとなる可能性がある点に留意しておきたい。

 なお、石油市場が供給面で抱える問題はイランに対する経済発動だけではない。イランの動向と同様に注目されるのがベネズエラの産油量だ。

 OPECの9月月報によると7、8月と同国の産油量(日量)は2カ月連続で120万バレル台にとどまっている。同国の産油量は2016年度には年間平均で215万4000バレルだった。

 ベネズエラではマドゥロ大統領による失政の影響で外貨不足が引き起こされインフレが激しさを増している。10日にはベネズエラ国営石油会社(PDVSA)は賃上げを決定したと伝えられているものの、マドゥロ政権が続く限り同国の産油量の大幅な回復は望めない。

 イランに対する経済制裁という材料を織り込んだ後、原油価格をサポートする要因になってくると見られるのは同国の産油量である可能性もあるだけに、ベネズエラの動向も注視しておきたい。

【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社みんかぶに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社みんかぶの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

メールマガジン

山岡和雅が毎日発行!
外国為替ディーラーの心の中

毎日の為替相場を、市場参加者の目を通して判り易く解説。為替ディーラーの本音は?【まぐまぐ殿堂入り】

バックナンバー

朝刊 ニューヨーク為替市場レポート
米国市場の動きを、朝一番に配信!! FX、外国為替、米国株、米国金利など、テレビやWEBサイトでは得られないニューヨーク金融市場情報のほか、アナリストの独自解説も配信します。

バックナンバー

powered byまぐまぐトップページへ