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ドル高により悪循環のサイクルがより強まりそうな白金価格

 NY白金市場の中心限月は、現地8月15日の取引で大きく値を落とした後は9月上旬まで800ドルを下回る水準での低迷場面が続いていた。その背景は、白金市場の需給の弱気見通しに加えて米国での追加利上げに向かう金融政策と、今後の追加利上げ回数の増加見通しが挙げられる。加えて追加利上げ観測を後押しする米国の強気な経済指標の報告を受けて、米国の金融資産に対する投資圧力が高まる一方、リスクオフの地合いが強まり貴金属市場から資金の流出が続いていることが背景となっている。

【米利上げ観測強まりNY金市場から資金流出】
 この資金流出の動きは安全な投資先としての役割を強く持つ金市場で顕著となっている。人気のバロメーターとされる取組高の推移がその傾向を示している。

 NY金が中心限月が1300ドルを超える水準で推移していた18年3月末までの期間、取組高は50万枚以上での推移が続いていた。しかし米国での追加利上げ観測が強まるに伴って金価格が下落するなか取組高は減少し、18年6月5日以降は7月下旬に50万枚を上回る枚数を記録した以外は50万枚を下回る枚数での推移が続いている。

 米国での追加利上げの方向性は、貴金属市場ではドル高に対する懸念という形で現れており、その結果、金価格は1220ドル以下の水準まで値を落としている。

 将来的にドル高傾向が続くと予測されるなかでは敢えて金を買い進もうという動きは見られておらず、それどころか金市場から資金の流出が促されていることが価格を抑制しており、これが取組の減少という形になって現れている。

 ここで注意したいのは金市場は貴金属市場の中で最大規模を誇るため、他の貴金属に対する影響も大きい点だ。そのため、金市場で見られているドル高に対する警戒感は他の市場にも同様の傾向を与えている。

【足取りの弱さ目立つ白金】
 銀、白金市場が共に金市場に連動する足取りとなっているのがその例だ。なかでも足取りの弱さが目立つのが白金だ。

 白金の場合、ドル高傾向に独自の需給の弱さが加わっているからだ。これらの売り要因を受けた白金市場の地合いは他貴金属に比べても顕著な弱さを見せている。それを示しているのが対パラジウムにおける白金価格の地合いの弱さだ。

 白金は従来は対パラジウムでも白金の方が割高な状態が続いていた。しかしディーゼル車の排気ガス不正問題をきっかけにしてディーゼル車の触媒としての需要が主となる白金の需要は落ち込みを見せる一方、ガソリン車の触媒需要が主な用途となるパラジウムの需要が膨らんだことを受け、白金価格は昨年9月には対パラジウムにおいても割安に転じ、現在のその状況が続いている。

 需要の弱さを手掛かりにした売りが続き、白金価格は、今年8月15日から今月12日にかけて、800ドル以下の水準にまで下落を余儀なくされている。

 白金価格が800ドルを割り込むのはリーマンショック後の2008年10月下旬以来のこと。生産コスト割れや、これによって生産縮小の動きがもたらされるとの観測が台頭している。

 実際にはこの800ドル建てという価格水準が白金生産動向に影響を与えることはあっても、その影響は限定される可能性も高い。米国の追加利上げに伴うドル高が白金市場にとっては重石になると同時に、価格支援要因にもなり得るからだ。

 これは、国際市場で白金はドル建てで取引されるものの、その産地である南アフリカの通貨ランドが対ドルで下落していることが背景となっている。

 南アフリカの通貨ランドは、今年第二四半期の実質GDPの成長率が-0.7%と予想外のマイナス成長になったことでリセッション入りに対する懸念が強まったほか、対米関係の悪化を受けたトルコのリラの下落、さらには米国の追加利上げや米国と他の国々との通商問題を受けたリスク回避の動きが手掛かりとなって対ドルで売られ、9月初頭には2016年5月以来の水準まで下落している。

 南アフリカの通貨ランドが対ドルで下落したことは、南アフリカ経済に対する不安感の現れといえるが、あくまでも同国にとって白金が主な外貨獲得のための商品であるという視点で見た場合、白金の輸出で米ドルを得て、これを国内でランドに交換すればドル高・ランド安の影響によって利潤が生まれる状況となっている。さらに、ランド安が生産コストを押し下げる、という点も指摘されている。

 白金市場においてはパラジウムとの価格差が逆転したこと自体が異常な自体といえ、それを考慮すると価格差が逆転した2017年9月以降、白金価格の低迷は顕著だったと言える。

 南アフリカでは白金の生産縮小の主だった動きは見られていない。実際、世界最大の白金生産業者であるアンプラッツ社の四半期報告では、今年第1四半期の白金生産量はいつの時期との対比は不明な柄も7%増の61万3800オンスと報告されているほか、第2四半期の白金生産量は対前年同期比で同量の61万9600オンスと報告されている。

 つまり、パラジウム価格以下の水準まで価格が下落しているにもかかわらず、白金生産量を縮小しようという動きはアンプラッツ社の報告からは見受けられないのだ。

 ドル高に伴うランド安は通貨価値という側面から白金価格をサポートする要因となっており、これが南アフリカでの安定的な生産につながっていると見られるため、800ドルを下回る水準まで白金価格が下落しているとはいえ、白金の生産調整が行われる可能性は高くはないと見られる。

 そのため、価格が800ドルを下回る水準まで低迷したことが、アンプラッツ社の第3四半期の生産量にどのような影響を与えたのか、もしくは与えていないのか、を見る上で、同社の第3四半期の報告が待たれるところだ。

 ドル高は、リスク回避の動きを活発化させ、これがドル建てでの白金価格を下押す要因となり、これに独自の需給要因が加わったことで、白金価格は約10年ぶりの水準まで価格が下落した。

 この水準まで価格が下落したことで、白金の需要は緩やかながらも盛り上がりを見せており、リースーレ-トも9月18日時点では0.67%台に上昇している。

 ただ、この動きも800ドル以下という価格水準が割安感を強めた結果と見られる。パラジウムとの価格差が逆転した状態が長引くことでパラジウムの割高感に対する意識が強まり、これが徐々に白金需要の拡大という動きを促すことは十分に予想される。

 白金の需要の拡大は長期的に見れば、白金価格を押し上げる要因になってくるだろう。ただ、ランド安が白金生産を支える要因となり白金減産の動きが進んでいないことは、今後も白金価格の上値を抑制する要因となってきそうだ。

 パラジウムとの価格差がどの程度、白金需要を喚起させるか見通しに不透明な点は強いが、ドル高・ランド安傾向が維持されるようであれば、白金の需要が拡大下としても上げ余地は限定されてくる可能性に留意しておきたい。
 
 ちなみに、ジョンソンマッセイ社によると、今年の白金は総計で31万6000オンスの供給超過が見込まれている。これは2011年以来、最大の規模となるが、ドル高に伴うランド安が生産を支えているという現状により同社の予測が実現される可能性が高いと思われる。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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