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豊作は確定的となったとうもろこし市場のこれからを考える

 前週末、米コーンベルトでのクロップツア―を終えたプロファーマーが18/19年度の米国のコーンのイールド(単収)の見通しを177.3BUと発表したことを受けて米国の今年度のコーンが豊作になるのはほぼ確定的となってる。

 米国のコーンの豊作見通しが示されたのはクロップツア―が初めてではない。米農務省(USDA)は既に8月の需給報告において18/19年度の単収(イールド)が過去最高の178.48Buとの見通しを示していた。

これは、週間作物進度報告の発表が開始されてから8月の需給報告が発表されるまでは作柄のうち良が占める割合が70%以上を維持する極めて良好な状態を維持していたことが反映された上での数値だった。

 今回のクロップツアーの結果は、USDA予測に達しなかったが、それでも過去最高のイールドが見込まれていることに変わりはない。

 豊作見通しを後押しするのが、米コーンベルトでのコーンの平年を上回る生育ペースだ。USDAの発表によると、8月26日時点では18州平均のドウ率が92%、デント率は61%となっており、それぞれ平年の84%、42%を大幅に上回っている。さらに成熟率は10%。これも平年の5%を上回っていることが明らかにされた。

 ドウ期、デント期は共に結実したコーンの実が次第に固まっていく時期であり、デント期には粒にくぼみが形成されるが、ここまで生育が進行すると天候不良が生産量や作柄に大きな影響を与える可能性は大幅に低下する。

 すでに一部では成熟が開始していることが先の報告では明らかにされているが、デント期を迎えるとコーンの成熟は約2週間ほどで完了することが見込まれるため、9月半ばに差し掛かる頃には成熟率が50%を超えてくる可能性が高い。

 平年のペースと比較すると、1週間~10日ほど、速いペースとなる。そのため、寒波の到来による影響を受ける可能性も低く、収穫期によほどの長雨に見舞われるなどの天候不良がない限り生産量が現在の見通しを大幅に下回ることはない。

 なお、米コーンベルトのコーンの作柄は若干の悪化が見られているとはいえ良以上の割合は68%となっている。作柄の発表以来、保ってきた70%以上という状況が崩れているが、それでも良以上の割合が70%を割り込んだのは8月も後半とコーン生育の山場を超えた後のことだった。そのため、作柄の悪化という発表自体は市場では買いを誘発する要因となったものの、実際のイールドという面から見ると、時期が時期だけに大きな影響を及ぼすことは無く、やはり豊作が見込まれるのが現状となっている。

<コーン価格に上昇の可能性はあるのか>
 このように豊作が確定的と見られるコーンだが、価格が上昇する可能性はあるのだろうか。クロップツアーの結果を受けて豊作が確定視されるなかシカゴコーンの中心限月の12月限は7月17日以来、初めて860セント以下の水準まで値を落とした。

 従来の動きを見る限り、豊作の年は豊作が織り込まれる8月下旬にかけて下値を探る足取りを展開しながらも、収穫が開始されると価格が浮上する場合がある。

 これは、豊作織り込みに伴う自律修正の動きに加え、価格が低迷したことで生産意欲が後退し、次年度には生産量が縮小するとの思惑が働くことが背景となっている。また、価格が下落することで割安感が強まるなか実需の増加期待が高まることも価格を押し上げる要因となってきた。

 現時点での過去最高イールドを記録した昨年の場合も8月上旬から末にかけて一気に値を落とした後はしばらく低迷場面を演じたが、年が明けてからは地合いを固めて次第に上値を追う足取りを演じている。

 2014、2016年と近年の豊作年には同様のパターンが見られるだけに、この傾向から見ると価格が上向くまでに時間を要する可能性はあるが、豊作を織り込むなかで値を落とした水準から、さらに一段と下押される可能性は低い一方、中長期的に見ると買い場となってくる可能性が高いと考えられる。

 また、今期の場合、コーン価格の動向を探るうえで注意したいのが小麦市場の動向だ。小麦市場では高温乾燥の影響でEU、ロシア、ウクライナといった主要産地での減産が決定的となっており、これを受けてシカゴ小麦の中心限月は8月上旬に600セントを突破するなど急伸する場面も見られたが、その後は、ロシア、ウクライナの輸出動向に対する見通しの不透明感を受けて下値を探る展開を転じている。

 ロシア、ウクライナでは減産は決定的と見られるものの、輸出に関しては規制をかけてまで国内供給分を確保すべきかどうかが検討されている段階にある。輸出規制がかけられないようであれば、需給の引き締まりはこれまで懸念されいたほどではない、との安心感が強まる一方、輸出が規制されれば需給引き締まり懸念が再び高まる可能性がある。

 小麦の需給引き締まりに対する警戒感が強まるようであれば、代替用としてのコーン需要増加期待の高まりが予想され、これがコーン価格を押し上げる要因になってくると見られる。そのため、今後のコーン価格を予測するうえでも、ロシア、ウクライナが小麦輸出に対しどのような政策を打ち出すかが注目される。

 もう一点、コーンの価格動向を握る要因として挙げられるのが米中間の貿易摩擦だ。今のところ、中国が米国最大の大豆輸出先であるため米中間の貿易摩擦は大豆市場で重石となっている。この貿易摩擦による影響についてUSDAは8月の需給報告において、豊作という供給面での弱材料と貿易摩擦を背景とした輸出量の大幅な減少という供給面での弱材料が台頭する結果、18/19年度の米国の期末在庫率は前年度の10.00%から18.4%と急激に上昇するとの見通しを示している。

 貿易摩擦に解決の兆しがみえず、需給の大幅な緩和が現実味を帯びてくるようであれば大豆価格も低迷を余儀なくされ、この価格低迷が来春の作付け意欲に影響を与える可能性は否定できない。

 もし大豆価格の低迷が長引くようであれば、耕作地の状況を踏まえたうえではあるが、採算面からコーンへと作付け意欲が向けられることも見込まれる。

 これまでは豊作年の翌年は作付の縮小観測が強まりこれが価格上昇を促す要因になるというサイクルを描く傾向があった。しかしながら米中間の貿易摩擦はこのような従来の傾向にまで影響を与える可能性も出てきているのではないだろうか。

 従来ならば豊作を織り込んだ後には豊作織り込み後の価格上昇が期待できる時期を迎えると予想される。今年の場合、少なくともこれ以上の価格下落余地は乏しいと考えられるものの、従来には見られなかった要因が浮上しているため価格上昇の過程を祖呈しにくい。それだけにコーン価格が今後、上昇に向かうかどうかを予測するうえでも、ウクライナ、ロシアの小麦輸出政策、そして米中間の貿易摩擦に引き続き注意したい。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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