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生産コスト割れでも低迷が続く白金市場の舞台裏

 NY市場では白金(プラチナ)価格が低迷した状態が続いている。指標の期近10月限は今月15日に756.60ドル、16日の取引では755.70ドルと2008年に発生したリーマンショック後の10月下旬以来の水準まで値を落とした。

 その後、自律反発に転じているが、800ドルを上値抵抗線にしての取引が続いている。22日の10月限の終値は793.70ドル。

 白金の価格(NY期近つなぎ足)の過去を振り返ってみると、それまで600ドル以下で推移していた白金は2003年には上昇指向を強めて2005年末には1000ドルを突破。

 その後しばらくは1350ドルに近づくと上値が重くなる足取りを演じながらも2007年下旬から2008年上旬にかけて高騰。2008年3月上旬には2250ドル台まで上昇した後もしばらくは2000ドルを前後する足取りが続いていたが、この年の7月半ばに大きく値を崩し、9月にリーマンショックが発生した悪影響から10月下旬には752.1ドルまで暴落となった。

 リーマンショック後は白金の需給引き締まりに対する警戒感を背景にした買いが見られるなかじりじりと値を戻し、11年に入ってからは1800ドル台での推移が続き、一時は1900ドル台に値を乗せる場面も見られた。

 しかしながら、白金の騰勢が見られたのもこれまでで、その後は戻しては売られるを繰り返しながら値位置を落とし、2015年には再び1000ドル割れの水準に達した。

 2016年以降は1000ドルに達すれば売り直される場面が続いただけでなく、とうとうパラジウムとの価格差も逆転するに至っただけでなく、すでに白金安のパラジウム高という従来から見ると価格差が逆転した関係が常態化している。

<価格変化をもたらしたリサイクルの存在>
 このような弱気な価格形成をもたらした背景となっているのが、リサイクル供給の存在だ。

 白金は最大の生産国が南アフリカで、その情勢の不安定さから、かつてはストを背景とした価格高騰場面が見られた。というのも、南アフリカでストが発生すればたびたび武力衝突が発生し、死者が発生するほどの激しさを見せることもあったからだ。

 激しいストの長期化は鉱山生産量を落ち込ませ、白金の需給引き締まりを促すとの見方が強まる。そのため、価格が下落すれば生産コストを割り込み、これがストを誘発する要因になるとの懸念が強まり、価格が回復に向かうというパターンが見られた。しかしリサイクルからの供給量が次第に拡大するに伴って、鉱山生産量の減少が白金の需給に与える影響は徐々に低下し、現在ではスト発生に対する反応もごく限られたものとなっている。

 リサイクルの白金供給は自動車用触媒からの回収分に、電子・電気からの回収、宝飾品からの回収が加わるが、この3種類からの供給が揃って開始されたのが2008年からとなる。

 そのうち自動車触媒からの回収分は2008年には10万オンスを突破し、2011年には3種類からの供給量の合計は20万オンスを突破した。その後もリサイクル供給分は2017年まで概ね20万オンスを維持している。

 南アフリカの政治的、そして経済的な不安定さを背景と下価格の高騰や急落を経験するなかで、安定的な供給を求める動きが広がったことがリサイクルからの供給拡大を生みだす一因となったが、これが現在では安定した供給源としての位置をしっかりと獲得するに至ると同時に、白金価格の上値を抑制する要因にもなっている。

 そのため、多少の減産分はリサイクルで補われるとの思惑が働くため、かつてのように南アフリカでストが発生してもストによる減産を懸念した反応が見られることは無くなっている。

<価格回復のカギを握る自動車用触媒としての需要>

 白金を巡る需給バランスがリサイクルの存在によって次第に変化していくなか、今回のように800ドルを下回る水準まで白金価格が下落しているのは、米国の追加利上げが続きこれに伴いドル高がもたらされていることに加え、米中間の貿易摩擦問題や米トルコ間の緊張の高まりが背景となって新興国の通貨リスクが上昇していること、そしてこれらの動きがリスクオフムードを高めて金価格の低迷が続いていることが背景となっている。

 米国経済は好調な状態が続きこれを受けて、当面の間は追加利上げが継続的に行われることが見込まれる。このような環境下では新興国に関しては政治的、地政学的、そして経済的な不安定さから新興国から米国へと資金が向かいやすい、つまりリスクオフムードが続くと予想され、これが引き続き白金価格の上値を抑制しそうだ。

 ただ、注意したいのは、これまでの価格下落を受けて、白金は南アフリカの鉱山会社の生産コストを割り込むなど、生産コスト割れの状況に陥っている点だ。生産コスト割れの水準まで価格が下落するなか、南アの鉱山会社インパラ・プラチナム(インプラッツ)は鉱区の閉鎖および売却計画を発表したほか、今後2年間で1万3000人の人員削減策も発表している。

 このリストラ計画に対し鉱山労働者建設労働組合(AMCU)が対抗する姿勢を示しており、実際にストが発生する可能性も浮上しているが、前述のようにリサイクル供給によって鉱山減産分が補われる状況が近年は続いているため、ストが発生しても価格に与える影響は限定される可能性が高い。

 ただ、鉱区の売却による生産量の減少は、将来的な需給の引き締まりを予想させるため、時間をかけながら価格が引き締まる可能性が出てきていることを意味している。

 また、白金とパラジウムの価格差が逆転していることで、触媒用としての白金需要は今後、拡大に向かう可能性がある。

 白金はディーゼル車の触媒として使用される一方、パラジウムはガソリン車の触媒として使用されるが、独フォルクスワーゲンによる排ガス不正問題を受けて欧州ではディーゼル車離れの動きが広がり、これが白金需要の減少に繋がった経緯がある。

 しかしながら、従来はパラジウムを上回る価格帯にあった白金価格がパラジウム価格を下回ることにより、自動車用触媒としての需要が回復する可能性が出てきている。自動車用触媒用としての需要の高まりが見られるようであれば、過剰感のある供給にも引き締まり観測が働くこととなり、白金価格の浮上を促す重要な要因となってくるだろう。

 そこでカギとなってくるのは中国の自動車需要だろう。米中間の貿易摩擦が激化するなか、中国の6月の自動車輸入は前年同月に比べて87.1%と大幅に減少した1万5000台にとどまったことが中国汽車流通協会(CADA)のデータで明らかとなった。

 米中間の貿易摩擦をうけ7月には中国の米国車に対する輸入関税は40%に引き上げられている。2018年1月~7月間の中国新車販売は、前年同期比4.3%増となる1595万台を記録しているため、中国の自動車需要そのものが弱まっているわけではない。

 今後、米中間の貿易摩擦が解決に向かうのかどうか、そして貿易戦争のさなかに引き上げられた輸入関税が中国の自動車用需要そのものにも影響をもたらすのか、という点を確認したいところだ。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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