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低迷する白金価格に上昇の可能性はあるのか

 NY白金市場では下値を追う足取りが続いています。5月22日から今月14日まで900ドルを前後していた中心限月の7月限は、19日の取引で862.20ドルまで値を落とし、その後も大きな戻りはないまま、前日比19.00ドル安の864.90ドルで取引を終えました。20日の取引では反発に転じましたが、およそ3週間に渡って膠着状態にあったNY白金が大きく下落した背景は、米中間の貿易戦争に対する懸念です。

 15日にトランプ米大統領は中国からの知的財産権およびハイテクに関連する製品の総額500億ドル相当分に対して25%の輸入関税を7月6日から導入することを明らかにしましたが、これに対し中国も同日から米国からの大豆、自動車などの輸入品659品目、総額500億ドル相当分に対して米国と同率の25%の輸入関税を発動することを発表しました。

 中国は米国の追加関税に対して同額、同程度の影響をもたらす程度に対抗する、としており、米国に真正面から立ち向かう姿勢を見せています。

 それにもかかわらずトランプ大統領は新たに2000億ドル(約22兆円)規模の中国製品に対する10%の追加関税の考えを示し、中国もこれに同規模での対抗措置を取る構えを見せていることで、米中間の貿易戦争に対する懸念はより一層深まりを見せています。

 この貿易戦争に対する懸念は、リスクのある資産から資金を引き上げる動きを強め、白金市場から資金引き上げという形で現れたため、急落につながりました。

 また、世界の経済大国である米国と中国の貿易戦争は世界経済にもネガティブな影響を与えるとの見方から、主要新興国から資金を引き上げる動きが活発化することが警戒されるなか、白金の主要生産国である南アフリカの通貨ランドが下落したことも白金安を促す要因となりました。

 白金市場にとってもう一つの弱材料として挙げられるのが、金市場の低迷です。米中間の貿易戦争を受けて安全な投資先を求める動きが広がるようであれば、当然のことながら安全な投資先としての役割を持つ金に対する投資意欲が高まると考えられます。

 しかしながら、金価格も米中貿易戦争懸念が深まるなかで下落しており、安全な投資先としての需要の高まりを感じさせる動きは見られないどころか、むしろ、貴金市場でも資金引き上げの動きが顕著となっています。

 金ETF残高のうち最大規模のSPDRの残高は5月30日の851.45トンから6月8日には828.76トンに縮小した後は、動きの見えない状態が続いています。

 つまり、米中間の貿易戦争激化の恐れが高まっている状況下においても金に対する投資意欲は盛り上がらないままとなっているのです。

 金の動きに関しては、安全な投資先としての需要よりも米国で追加利上げ実施と年内の追加利上げ回数の見通し引き上げに対する意識の方が強いことが背景になっていると見られます。

 金市場にすら安全な投資先としての需要が集まらないようであれば、金と同様に安全な投資先としての役割を持つとされながらも金よりはその割合は低い白金に対する投資意欲が盛り上がらないのも当然でしょう。

<南アフリカ要因で需給引き締まりか>
 ただ、白金市場を巡る要因がすべて弱気ではない点に注意が必要でしょう。6月6日に貴金属調査会社であるGFMS社が発表した「プラチナサーベイ2018」では、2018年は現物の供給不足量が前年度の5.3万オンスから28.0万オンスに拡大するとの見通しが示されました。

 その一因とされているのが、価格低迷に伴う生産コスト割れを受けて南アフリカを始めとする鉱山での生産量が減少するとの見方です。同報告によると、2018年の鉱山生産量は前年度から14.9万オンス減少した577.3万オンスにとどまる見通しとなっています。

 そのうち南アフリカの減産分は11.2万オンスに達する見通しで、白金価格が低迷するなか、南アフリカの生産が急速に低迷する可能性が示されています。

 この見通しに追い打ちをかけるように、南アフリカでは電力不足という新たな問題が台頭しています。南アフリカでは労使交渉が行われていますが、ストライキが原因で電力提供が停止されたほか、その後も計画停電が行われています。

 そのため、労使交渉が落ち着きを見せるまで白金生産量が落ち込むリスクが高まっており、これが需給引き締まりをさらに進行させる可能性も出てきています。

 19日時点の白金価格は2016年2月初旬以来の低い水準に落ち込み、その後の反発にもかかわらず、引き続き880ドルを下回る低い水準にとどまっています。白金価格が回復するためには米中間の貿易戦争に対する懸念やこの貿易戦争が新興国に与える懸念が和らぐ必要があるでしょう。

 ただ、一段の下落余地は乏しいとみます。862ドル台を割り込んだ場合、2016年1月につけた811.4ドルが次の下値目標になります。この水準は2008年のリーマンショック以来の低水準です。しかし現時点では、米中間の貿易戦争に対する懸念がリーマンショック発生時ほどの資金引き上げの動きをもたらさないと予想します。

 価格低迷が鉱山生産量の減少をもたらすとの見通しが既に発表されていることも、これ以上の下落に歯止めをかける要因になってきそうです。

 注目されるのは米中間の貿易戦争の行方ですが、この問題が解決の見通しが付くまで低迷を余儀なくされるのは間違いないにしても、当面はこれ以上の大きな下落は避けられたままでの低迷場面を演じるのではないでしょうか。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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