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地政学リスクの高まりにも反応薄の金市場

 NY金市場は5月15日の取引で大きく値を崩した後、5月下旬にかけて1310ドル前後まで値を戻してきましたが、6月に入ってからは再び地合いを弱め、1300ドルを上値抵抗にしての高下が続いています。
 
 5月15日の暴落場面では中心限月の6月限は前日比27.9ドル安の下げ幅を記録し、1290.3ドルで取引を終えています。この日の暴落の背景となっていたのは、強気な経済指標でした。

 この日発表されたのは4月の米小売売上高、ニューヨーク(NY)連銀製造業業況指数でした。NY連銀製造業業況指数が20.10と事前予想の15.00を大幅に上回ったことで6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げ実施が一層、現実味を帯び、金離れの動きを活発化させたのです。

 ただ、その後は米朝間の首脳会談中止の報が流れたことやイタリアの政情懸念を受けて安全な投資先を求める動きが広がったことで買い戻しが誘発されました。

 イタリアでは暫定首相に指名されたカルロ・コッタレッリ氏が暫定内閣の組閣で主要政党の支持を取り付けられていないことを受けて7月に再選挙が実施されるとの見方が浮上しました。これがユーロ安を促すと同時に金の買い意欲を刺激しました。

 また、トランプ大統領が中国は米国産産の農産物を大量に購入することに合意した、とツイートしたことをきっかけにして収束に向かうとの見方が強まった米中間の通商問題についても、5月29日には米国による中国向けの500億ドル相当分の追加関税賦課の最終案を15日までに公表すると伝えられたことで逃避買いが集まったことも金市場にとっては強材料となりました。

 しかし、その後は米国によるカナダ、メキシコに対する鉄鋼、アルミニウムに対する輸入関税適用の報を受けても上昇は一時的で上値の重さを窺わせる足取りにとどまりました。

<流出続く金ETF残高>
 金に対する安全な投資先としての需要のバロメーターとなる金の上場投資信託(ETF)の残高は4月下旬以降、減少傾向になってます。

 金ETFのうち最大規模を誇るSPDRの残高は、4月30日には871.2トンでしたが、その後は5月下旬にわずかに増加しながらも6月に入ってから再び減少しています。その結果、6月5日時点の残高は836.13トンと約5週間でおよそ35トン縮小しました。

 4月下旬から6月上旬までの間に、米中間の通商問題、欧州の政情、米朝首脳会談の中止の報など、金に安全な投資先としての需要が集まるきっかけとなり得る材料がいくつも浮上し、NY金の価格はその都度反応を見せながらも、実際には金に対する逃避買い需要は盛り上がっていなかったことが分かります。

 このような金に対する逃避買い需要離れの動きは米国での6月の追加利上げが確実視されると同時に、強気な雇用統計を受けて年内の追加利上げ回数が引き上げられる可能性が浮上したことが原因になっていると考えられます。

 なお、5月23日に公開された5月1~2日のFOMC議事録要旨では早期の追加利上げが適切との見方が示されるものの、追加利上げの加速化に関しては慎重な見方も示されたことで、追加利上げ回数の引き上げ観測が後退していました。

 しかしながら、1日発表の5月の米雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが前月比22.3万人と事前予想の19万人を上回ったほか、失業率の3.8%への低下、平均時給は前月比では+0.3%、前年比では+2.7%と伸びが加速化したことが明らかになりました。

 この強気な雇用統計が追加利上げ回数の引き上げ観測を後押ししており、6月に入ってからの金価格の下落、そして金ETF残高の縮小につながっています。

 6月12、13日にFOMCが開催されます。今回のFOMCで最も注目されるのはやはり年内の追加利上げの回数です。5月のFOMCの議事録からは追加利上げ回数が引き上げられる可能性は低いと見られますが、その後、発表された米国の経済指標に強気な内容が続いたことで、当事者間のセンチメントに変化が生じた可能性があります。

 地政学リスクの高まりに対する反応が一時的にとどまるだけでなく、金ETF残高が縮小するなど、金に対する投資意欲そのものが後退していると見られます。また、ここに来て中国が今年、米国からの輸入を250億ドル前後拡大させる案を提案したと伝えられており、米中間の通商問題に対する懸念も和らぎを見せています。

 金ETF残高の縮小が金に対する投資意欲の減退を示すなか、FOMC開催まで金市場にとって新たな弱材料が浮上しているだけにNY金がさらに下押される可能性が高まってきたと見られます。今回のFOMCにおいてどのような内容が決定されるのか、追加利上げ回数の引き上げがあるのかどうか、注目されるところです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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