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上昇を始めた白金価格に期待はできるのか

 NY白金価格は5月22日に続伸場面を演じ、中心限月の7月限は前日比9.0ドル高の908.80ドルで取引を終えています。

 今年2月半ば以降、NY白金は短期での戻りは見られながらも、中期的には下値を足取りを継続しており、5月21日には877.80ドルまで値を追としていました。この下落途上では逆転していた白金とパラジウムの価格差が一時的に解消される場面も見られましたが、白金価格の低迷に伴って再び逆転に転じています。

<低迷を強いられる白金価格>
 白金がこのように中期に渡って下値を追う足取りを演じたのは、需要の成長期待が薄いことが背景となっています。

 特に排ガス規制が厳しさを増すなか、コストアップを迫られるディーゼル車は販売台数の伸び悩みが見込まれると同時に、自動車触媒用としての白金需要の伸びには限界があるとの見方が強まったことが白金市場にとっての弱材料となりました。

 白金の主要な用途は自動車の触媒用で、総需要のうち自動車用触媒用需要が占める割合は40%前後となっています。そのため、触媒用需要が落ち込むようであれば白金の需要全体に与える影響も大きくなると予想されることが下押し要因です。

 注目されるのは、この2月半ば以降の価格下落途上において、米国によるロシアへの制裁が発動されていた点です。なぜこれが注目されるかというと、ロシアは白金の主要供給国であり、そのロシアの企業が米国による制裁を受けたことで非鉄貴金属やパラジウム市場では供給引き締まり懸念が強まり、価格が上昇する場面が見られながらも、白金市場での反応は薄かったからです。

 なお、米国による制裁の対象となったのはロシアの富豪であるオレグ・デリパスカ氏と同氏の傘下に位置するアルミ生産大手であり、大手白金およびパラジウム生産業者であるノルリスク・ニッケル社の株式も大量に保有しているUCルサールでした。

 そのため制裁がノルリスク・ニッケル社の白金およびパラジウム生産にも影響を及ぼす可能性があるとの見方も台頭し、パラジウム価格はこの懸念を受けて価格上昇場面を演じ、米財務省による制裁が発表された4月6日から4月19日にかけてNYパラジウムは終値ベースで見た場合131.3ドルの上昇場面を演じました。これに対し、この間の白金の上昇幅は22.6ドルにとどまっています。

 その原因として考えられるのが、ロシアはパラジウムに関しては世界最大の供給国であるのに対し、白金に関しては世界第2位の供給国という点です。特にロシアの生産が世界の生産のうち占める割合は、パラジウムが40%を占める一方白金は11%に過ぎないため米国による制裁が白金の供給に与える影響も限られる、との見方が上値を抑制する要因になっていたのでしょう。

 このように弱い需給が背景となって下方への方向性を強めてきた白金がここに来て反発に転じていますが、この価格の上昇も一時的なものにとどまることになりそうです。というのも、2018年度も引き続き弱気な需給が見込まれているからです。

<排ガス規制の厳格化で供給超過状態に>
 イギリスの貴金属製錬大手であるジョンソン・マッセイ社は14日に、2018年度の世界の白金需給は、17年度の10.1万オンスの供給過剰をさらに上回る31.6万オンスの供給過剰になるとの見通しを発表しました。

 NY白金価格が今月14日から18日にかけて下値を追う足取りを演じたのは、弱気な需給報告の発表を受けたことが背景となっています。

 同社によると、白金供給が過剰となるのは肝心の触媒需要に加え、宝飾用、さらには投資用としての需要も低迷する見通しとなっています。

 そのうち触媒用需要に関しては、欧州での排ガス規制の強化に伴って大型ディーゼル車を中心に減少することが見込まれています。欧州では2014年9月から排ガス規制のEuro6が開始され、2017年9月にはEuro6dーtempが開始されました。
 
 これに伴い実走行時の排ガスを測定する新しい試験サイクルの運用が始まりましたが、排ガス規制の流れはさらに深まり、19年9月からはこのEuro6d-tempが全車両への採用が予定されています。

 欧州では排ガス規制の一段の厳格化を前に開発が進められていますが、排ガスの浄化効果が白金よりも効果的なパラジウムの需要が高まっているほか、白金族を使用しない尿素SCRシステムの開発も進められています。

 排ガス規制の強化とこの流れが強まるなかで次第に存在感が弱まる白金需要という流れを受け、ジョンソン・マッセイ社は2018年度の触媒用としての白金需要は前年度に比べて10.8万オンス減少した318.4万オンスにとどまるとの見通しを示しました。

 これに対し一方の供給は鉱山生産量が前年度を5.8万オンス下回る605.4万オンスが見込まれるものの、リサイクル供給が前年度に比べて7.8万オンス増加した202.9万オンスに達することで、鉱山生産量の減少分が概ね相殺される見通しとなっています。
 
 つまり、供給量には大幅な減少が見られない一方で需要に大幅な減少が見られることとなり、その結果として2018年度も前年度に続いて供給が需要を上回る、供給過剰な状態が続くと予想されているのです。

 懸念されるのは、この供給過剰状態がすぐに解消される可能性は低いという点です。というのも、今後も欧州では排ガス規制の強化が進み世界的にもこの流れに追随する動きが予想されるため、触媒用としての白金需要は低迷を強いられる可能性が高いと考えられるからです。

 現地23日の取引でNY白金は反落に転じており、910ドルを目先の抵抗として意識した足取りを演じています。需給の引き締まりが予想されない限り、白金価格が上昇基調を本格化させるのは困難と見られます。世界的な排気ガス規制とこれに伴う自動車用触媒としての白金需要の見通しを見る限り、白金の需要が回復に向かう期待は薄いなか価格は低迷を強いられることになりそうです。パラジウムとの価格差が以前のように白金がパラジウムを上回る状態に復帰するのも困難と予想されます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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