FX外国為替情報のKlug(クルーク)
為替、海外投資でハイリターンを得るためのニュース、レポート、コラムを掲載

上昇傾向を強める原油価格はこれからどうなるのか

 現地5月4日の取引で大きく上昇する足取りを見せたNY原油は、その後も一時的に下押される場面が見られながらも買い戻す動きが続くなか、じりじりと値位置を切り上げています。
 
 中心限月の6月限は、5月9日以降は70ドルを上回る水準での推移が続いていますが、10日の取引では71.89ドルの高値を付けたほか、15日の取引でも71.92ドルに達する場面が見られるなど、値位置をさらに切り上げる可能性を窺わせる動きを演じています。

 NY原油の上昇傾向をもたらす主な原因となっているのが、中東情勢に対する懸念です。

 5月に入ってからの価格上昇を1か月遡る4月にも原油価格が上昇する場面が見られました。

 その時は、中心限月だった5月限が4月9日から13日にかけて5日続伸となった結果、13日の終値は続伸となる直前の7日時点の62.06ドルを5.33ドル上回る67.39ドルに達し、その当時の年初来の高値を更新しました。

 この時は、シリアの市民に対して化学兵器を使用したとしてトランプ大統領がアサド政権を批判したことでシリアへの軍事介入に対する懸念が強まったほか、米中間の貿易戦争に対する警戒感、ベネズエラからの供給縮小に対する警戒感が背景となっていました。

 5月に入ってからの価格上昇も同様に中東情勢に対する警戒感、そして経済危機が続くベネズエラの減産とこれに伴う産油量の減少が引き続き主な要因となっています。

 なお、中東情勢に関しては2015年のイランの核合意からの離脱を受けて米国がイランに対しての制裁を再開するのではないか、との懸念が強まっているほか、5月14日には米国がエルサレムで在イスラエル大使館を開設し、これに反対するパレスチナ人が抗議活動を行うなかで50人以上もの死者が発生しています。

 中東ではここの緊張が緩和すればあそこで緊張が高まる、というモグラたたきの状態が続いており、その混迷の深まりが、地政学リスクに対する懸念を根強いものしており、これが同地からの原油供給懸念深めて原油価格が上昇傾向を強める、というサイクルを描いているのです。

 中東での地政学リスクはトランプ政権の動きもあり、どのような動きが見られるのか、見通しに不透明感が強い状況にありますが、このような情勢下で原油価格は今後、どのように推移すると考えられるのでしょうか。

<シェールオイル供給はどうなるか>

 まず今後、価格に影響を与える要因として浮上してくると考えられるのが、価格の上昇を受けたシェールオイル生産量拡大の可能性です。

 米国は2015年12月に40年間続いた米国産原油の輸出禁止措置の解除を法案で合意し、2016年から輸出を再開しました。シェール革命によって米国の産油量は劇的に増加しており、米国はそれまでの原油輸入国から輸出国に転じています。

 米国エネルギー省(EIA)によると、シェール革命が起きる以前の米国の一日当たりの原油輸出量は1万バレル~2万バレル前後、2014年前半にかけて緩やかに増加しましたが、それでも2014年6月半ばまでは7万4000バレルにとどまっていまし
た。
 
 シェール革命によって産油量の増加が促され、1日当たりの産油量が900万バレルを超えるに伴い米国の原油輸出量は大幅に増加しています。今年2月以降は1日当たりの産油量は1000万バレルを超える状態が続いており、5月11日時点の産油量は1072万3000バレルに達しました。これに伴い輸出量も増加しており、5月11日までの1週間における1日当たりの平均輸出量は256万6000バレルまで膨らんでいます。

 このようにシェールオイルの生産量が増加した一因として、原油価格が上昇したことによる採算性の上昇が挙げられます。そのため、原油価格の上昇局面では、価格の上昇に伴いシェールオイル生産量が増加しこれが価格を抑制する要因になり得る、との見方がたびたび浮上しています。

 原油価格が2014年11月以来という70ドル突破を達成したことで、シェールオイル増産観測がますます強まると見られ、実際にシェールオイル増産の動きが見られるかもしれません。

 しかし、シェールオイルの供給増加に上昇する原油価格の火消し役として期待をするのは難しいかもしれません。というのも、増産が実現しても輸送能力の限界という問題が浮上しているからです。

 同じくEIAによると、シェールオイルの主要産地であるパーミヤン地区を抱えるPADD3の原油在庫はシェールオイルの生産量の拡大に伴って増加しており、5月11日時点の在庫量は2億1、858万3000バレルに達しています。これは、全米の総在庫4億3235万4000バレルのうちの約50%に当たります。

 シェールオイルの増産が本格化する直前の2014年1月上旬時点では全米の総在庫のうちのPADD3の在庫が占める割合は概ね47%程度だったのに対し、2016年以降は50%を超える状態が常態となるばかりか、今年3月には54.9%に達しています。

 急激な増加ではないものの、シェールオイル増産の影響でPADD3の在庫が次第に増加している様子が窺われます。このことは、シェールオイルの増産によって供給量は増加しているにもかかわらず、その輸送量は限定されていることから、PADD3での在庫拡大が促されている、と考えられるのです。

 さらに、EIAはメキシコ湾岸地域で20万トン以上の輸送が可能な大型タンカー(VLCC)の収容能力に不足が生じていることを受けて輸出コストが上昇する可能性を指摘しています。

 つまり、米国ではシェールオイルが増産されたとしても、それを輸送するための手段に制限があることから、供給量は確保できてもその供給が滞る可能性があると考えられるのです。

<供給を上回る世界の需要>
 一方の世界の需給状況を見ても、国際エネルギー機関(IEA)は5月の月次報告で、2018年の世界の石油需要の伸びを前月予測の150万バレル増から140万バレル増に引き下げました。

 しかしながら、それでも2018年の平均需要は9920万バレル(1日あたり)が見込まれています。これは4月時点の世界の生産量、約9800万バレルを上回る量となります。生産量に関してはあくまでの4月時点のもので、今後、増加に向かう可能性はあります。

 とはいえ、IEAによると世界の石油需要は2017年第2四半期以降、世界の石油供給を上回る状態が続いており、これが主因となって世界の石油在庫は引き締まる傾向を見せています。

 供給が需要を上回るか、もしくは需要が減少しない限り在庫の回復は見込めないわけですが、供給量に関してはOPECおよび主要産油国は協調減産を遵守しており、増産の姿勢をみせていません。

 ちなみにIEAによると4月のOEPC産油量は、ベネズエラでの減産もあって前月の3183万バレルから3165万バレルに減少しています。

 OPECの産油量は2016年度は3280万バレルとなっていましたが、2017年度には3235万バレルに減少。その後も減少傾向を強め、今年に入ってからは1月は3215万バレル、2月は3203万バレル、そして3月にはとうとう3200万バレルを割り込みましたが、4月の産油量はこれをさらに下回っています。

 70ドル台という水準に原油価格が達したことで、シェールオイル、そしてOPEC加盟国の増産意欲が刺激されることになるかもしれません。

 しかしながら、シェールオイルに関しては増産はできても輸送量に制限がある、そしてOPECに関しては減産傾向を維持している、という状況にあります。

 現在の原油価格水準がOPEC加盟国の生産意欲を刺激するかどうか、注目されるところですが、イランに対する米国の制裁も猶予期限が与えられただけで今後、制裁が実行に移される可能性が残されていることも供給面での懸念材料となっているだけに、原油価格が鎮火するのは簡単なことではなく、高い水準での高下が続く可能性が高いと現時点では考えられるのではないでしょうか。

【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社みんかぶに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社みんかぶの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

メールマガジン

山岡和雅が毎日発行!
外国為替ディーラーの心の中

毎日の為替相場を、市場参加者の目を通して判り易く解説。為替ディーラーの本音は?【まぐまぐ殿堂入り】

バックナンバー

朝刊 ニューヨーク為替市場レポート
米国市場の動きを、朝一番に配信!! FX、外国為替、米国株、米国金利など、テレビやWEBサイトでは得られないニューヨーク金融市場情報のほか、アナリストの独自解説も配信します。

バックナンバー

powered byまぐまぐトップページへ