FX外国為替情報のKlug(クルーク)
為替、海外投資でハイリターンを得るためのニュース、レポート、コラムを掲載

米ロ間の緊張高まりで露呈した白金価格の上値の重さ

 NY市場では白金価格とパラジウムの価格が再び逆転しています。現地17日時点におけるそれぞれの中心限月の終値は白金7月限が940ドル、パラジウム6月限が1005.00ドルでした。パラジウム価格が白金価格を65ドル上回っていることになります。

 白金とパラジウム価格は、生産コストなどから従来は白金価格の方がパラジウム価格を上回るのが常態とされていましたが、 昨年9月28日の取引で白金とパラジウムの価格差が逆転し、白金の価格がパラジウムの価格を下回る状態が今年の3月末まで続いていました。

 パラジウムと白金の価格差が逆転に至った背景にはロシアの地上在庫が枯渇したとの見方に加え、排ガス規制強化に伴い需要の減少が見込まれるディーゼル車の触媒用としての白金需要の低迷が見込まれる一方、ガソリン車需要の増加を受けて触媒用としてのパラジウム需要の拡大が見込まれる、という状況がありました。

 需要の増加が見込まれるのに供給の伸びを見込むのが難しいという、需給ひっ迫見通しが強まるなか、長期に渡る需給引き締まり懸念が高まり、これがリースレートの上昇を促したのです。

 なお、リースレートとは貴金属を貸し借りする場合の金利であり、供給にひっ迫感が強いまたは需要が強いほどリースレートは上昇すると考えられます。そのため、リースレートの上昇はパラジウム価格が上方へと推移するための決定的な要因となりました。

 パラジウムのリースレートは2016年前半、0%前後だったにもかかわらず同年後半には上昇傾向を強め、2017年に入ってからは20%を超える急上昇場面を含め一桁台後半から二ケタ台という高水準で推移し続けていました。

 これに対し、金、銀のリースレートは一時的に上昇する場面が見られながらも、概ねマイナスでの推移となっているほか、、白金は0.1%程度での推移が続いています。

 他貴金属との乖離と、白金との価格差逆転を受けて、パラジウムのリースレートは落ち着きを見せ、白金との価格差も白金がパラジウムを上回るというこれまでの状態に戻りました。 

 パラジウムのリースレートは4.70%程度まで低下していたにもかかわらず、今月13日以降は急伸して再び8%台に乗せており、他の貴金属のリースレートとは再度、一線を画した動きになっています。

 昨年から今年にかけてのパラジウムのリースレートの上昇は前述のように需要面、供給面の双方が買い支援材料となって引き起こされました。これに対しここに来てパラジウムのリースレートが急伸する理由となっているのはロシアからの供給に対する警戒感の強まりです。

 パラジウムのリースレートおよび価格がロシアの動向に振り回されるのは、ロシアが世界最大のパラジウム供給国だからです。

 英国の製錬大手、ジョンソン・マッセイ社によると2017年における世界のパラジウム生産量のうちロシアは世界最大の生産国であり、ロシアの生産量が世界の生産量に占める割合はおよそ40%となっています。

 4月に入ってからパラジウム価格が急伸したのはそのロシアと米国との緊張の高まりが背景となっています。この緊張の高まりは4月6日に米財務省が2016年の米大統領選への介入を理由としてロシアの26個人と15団体を新たな経済制裁の対象にすると発表したことに端を発しています。

 また、これに続いてシリアの反体制派地域である東グータ地区で4月7日に化学兵器が使用された疑いに関してアサド政権を支援するロシアに対する追加制裁の可能性が示されたことも、ロシア経済とロシアにおけるエネルギーを含む天然資源の供給の不安定化懸念を強めたこともパラジウム価格を押し上げる一因となりました。

 ただ、注意したいのはロシアではパラジウムだけでなく白金も生産されているにも関わらず、この米ロ間の緊張の高まりに対する反応が白金とパラジウムの間で異なっており、これが価格差の逆転をもたらしているという点です。

 これはおそらく、排ガス規制の影響を受けて白金が主に触媒用として使用されるディーゼル車の需要は伸び悩みが見込まれるのに対し、パラジウムが主な触媒の材料とされるガソリン車の需要の増加が見込まれる、という基本的な需給が関係していると考えられます。

 また、ロシアの生産量が世界の生産量に占める割合がパラジウムの40%程度に対して白金は約11%前後であるうえ、白金の生産はそのおよそ73%が南アフリカで占められているというロシアへの依存度の低さも影響しているでしょう。

 ただ、懸念されるのは米ロ間の緊張の高まりは地政学リスクの高まりを意味し、白金には安全な投資先としての役割もあるとの認識が存在するにもかかわらず、価格面での反応が見られていない点です。

 つまり、供給の不安定さに対する警戒感、安全な投資先としての需要の高まりの双方が白金市場では見られなかったことになるわけです。

 トランプ大統領自身がロシアへの追加生産に乗り気ではなく追加制裁が見送られたことで逃避買い需要が後退したこともその一因になるでしょう。とはいえ、今回の米ロ間の緊張高まりで再度、パラジウムとの価格差逆転を許してしまうほどに白金への投資意欲が低いことが露呈してしまいました。

 これにより白金への投資意欲はさらに減退するという悪循環にはまることが予想さレ、しばらくの間は白金価格はパラジウム価格を下回る状態を強いられる可能性が高まったように思われます。

【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社みんかぶに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社みんかぶの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

メールマガジン

山岡和雅が毎日発行!
外国為替ディーラーの心の中

毎日の為替相場を、市場参加者の目を通して判り易く解説。為替ディーラーの本音は?【まぐまぐ殿堂入り】

バックナンバー

朝刊 ニューヨーク為替市場レポート
米国市場の動きを、朝一番に配信!! FX、外国為替、米国株、米国金利など、テレビやWEBサイトでは得られないニューヨーク金融市場情報のほか、アナリストの独自解説も配信します。

バックナンバー

powered byまぐまぐトップページへ